無資格者による自動車完成検査について

1.はじめに

 9月26日夜、スズキは、新車の出荷前に行う完成検査について、新たな不正があったことを記者会見にて発表しました。不正があったとされるのは燃費や排ガスを100台に1台の割合で調べる抜き取り検査という工程であり、検査条件を逸脱したデータを有効とし、さらには測定結果の不正な書き換えを行っていたというものです。
 検査結果の書き換えやデータの操作などは、どの企業でも起こり得るものであり、この事実が発覚したのも、スバルや日産自動車の不正事案を受け、国土交通省が調査を行ったことから発覚したものです。今回は、この事件を通じて、どのようにして従業員による不正を未然に防ぐか、考えていきたいと思います。

2.完成検査とは

 完成検査とは、自動車の製造ラインでの組み立てが終了した後、安全性や性能について検査することです。具体的には、自動車の外見に異物や傷がないかという外観検査をはじめとして、テストコースでの試走や水漏れ試験など、数百にも及ぶ検査項目を一つひとつクリアしていく必要があります。完成検査は、各自動車メーカーが持つ認定基準を満たした有資格者のみが「検査員」として行うことが許され、この検査に合格した自動車でなければ、市場に出荷することはできません。
 

3.不正の原因について

 測定データの書き換えについて、検査員が基準を下回った項目について、意図的に基準に適合するように書き換えたものと、分析器のエラーによる異常であった場合に、手入力で数値を書き換えるなど、検査員が不正な書き換えとの認識がないままに書き換えたものがありました。後者の原因としては、検査員の教育が徹底されておらず、正しい検査方法を検査員に周知していなかったことも原因のひとつと考えられます。
 また、スズキから国土交通省への報告概要の中で、完成検査員から、業務量過多の証言があったことが報告されており、過剰な業務量から検査をノルマととらえ、数値に異常があっても不正な書き換えをしてでも市場への流通を確保するという事情があったのではないかと考えられます。業務量に対して適正な人員数を確保することができなかったことも、今回の不正の一員と考えられます。

4.法務としての対応について

 日本公認会計協会では、不正リスク要因という用語を「不正を行おうとする動機やプレッシャーの存在を示す,又は不正を実行する機会を与える事象や状況をいう」と定義づけています。このことから、従業員による不正は、①不正を行おうとする動機、②不正を実行する機会、③不正を許す状況のいずれかがあるために発生すると考えられています。
 従業員による不正を未然に防ぐために、法務としては、不正リスク要因を無くすことが必要だと考えます。労務管理を徹底するなど、不正を行おうとする動機を無くすこと、不正についての通報窓口を設置するなど、不正実行の機会を無くすこと、従業員への教育などにより、不正を許す状況を無くすことといった、対策を講じることが求められます。

 
[著者情報] sawada

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2004年 外立総合法律事務所
2012年 株式会社カービュー コーポレートリーガルアドバイザー    
2016年 法務室長
2018年 AYM法律事務所開設

弁護士会活動(2018年2月現在)
日本弁護士連合会 ひまわりキャリアサポート 委員
第一東京弁護士会 業務改革委員会 委員 

企業法務を中心とした法律事務所に長年勤務した後、2012年からインターネット系企業の法務責任者としてプラットフォームを利用したメディア・コマースビジネスについてのさまざまな法律問題をサポート。
2018年にAYM法律事務所開設 代表弁護士

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講師情報
森川 順、河端 直
■森川 順
大阪府立四條畷高等学校卒業
一橋大学社会学部卒業
立命館大学法科大学院修了

2009(平成21)年12月
大阪弁護士会に弁護士登録(新62期)なにわ共同法律事務所入所
2010(平成22)年10月 - 2012(平成24)年3月
立命館大学エクステンションセンター講師

■河端 直
私立桃山学院高校卒業
同志社大学法学部法律学科卒業
大阪大学大学院高等司法研究科修了

2013(平成25)年11月
司法研修所入所(67期)
2014(平成26)年12月
大阪弁護士会に弁護士登録 なにわ共同法律事務所入所
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