紅屋商事株式会社に勧告、消費税転嫁対策特別措置法違反について

1 はじめに

 平成30年6月20日、公正取引員会は紅屋商事株式会社(以下「紅屋商事」といいます)の消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(以下「消費税転嫁対策特別措置法」といいます)違反を認め、消費税転嫁対策特別措置法6条1項の規定に基づき、同社に対する勧告を行いました。平成26年4月1日及び平成31年10月1日に予定されている消費税率の引上げに際し、公正取引委員会は特別措置を設けていますが、中小事業者を中心に、消費税の価格への転嫁について懸念が示されています。そこで本稿では、消費税転嫁対策特別措置法の趣旨を確認し、今回の事例を今後の実務にどのように生かせるかを検討したいと思います。

2 消費税転嫁対策特別措置法とは

 消費税は製造・卸・小売りなどの各取引の段階で課税されます。消費税は価格に転嫁され、最終的には消費者が負担します。その一方で、各取引の段階で取引先との力関係等、様々な理由で消費税の転嫁ができないことがあります。納税義務者は事業者であるため、転嫁できなかった分は事業者の負担となり、経営に大きな影響を及ぼします。このような経緯があり、消費税の円滑かつ適正な転嫁ができるよう、消費税転嫁対策特別措置法が成立しました。
 消費税転嫁対策特別措置法は3条で、消費税の転嫁を拒むことを禁止しています。公取委が3条違反行為を認定した場合には勧告(6条1項)が行われるという仕組みになっており、勧告が行なわれた旨は公表(6条2項)されることになっています。
 3条の対象となるのは「特定供給事業者」から商品の供給を受ける「特定事業者」に限られます。特定事業者とは、一般消費者が日常使用する商品の小売業を行う者で、①または②に該当する者を言います。
①前事業年度における売上高(特定連鎖化事業を行う者にあっては、当該特定連鎖化事業に加盟する者の売上高を含む)が100億円以上である者
②次に掲げるいずれかの店舗を有する者
 a東京都の特別区の存する区域及び地方自治法第252条の19第1項の指定都市の区域内にあっては、店舗面積が3000平方メートル以上の店舗
 b前記aに掲げる市以外の市及び町村の区域内にあっては、店舗面積が1500平方メートル以上の店舗のいずれかに該当する法人(以上公正取引委員会規則第3号)
 特定供給事業者は、消費税転嫁対策特別措置法第2条第2項各号で規定される事業者であり、前記(1)の特定事業者に継続して商品又は役務を供給する事業者をいいます。

3 事案の概要

 紅屋商事は商品単価ごとに本体価格に消費税相当分を上乗せした額から1円未満の端数を切り捨て、取引数量を乗じた額を代金として支払っていました。本体価格123円の商品を1000個納入するとして、本来の納入価格は13万2840円となりますが、実際は13万2000円を支払っていたというイメージです。840円分は相手方事業者の負担となってしまうため、今回の勧告に至ったものと思われます。
 不足分を払うことに加え、消費税転嫁対策特別措置法の研修等、社内体制整備のために必要な措置を講じること、講じた措置について相手方事業者・公取委に報告することを勧告しました。

4 今後の実務に向けて

 消費税転嫁対策特別措置法は消費税の段階的な引き上げに対応するための一時的なものであり、民法・消費者契約法等のメジャーな法律ではないため、大企業の法務担当者であっても、勉強する機会が得にくいというところがあります。まずは今回の事例をきっかけとし、この法律について学んでみましょう。
 消費税は導入時の3%から段階的に引き上げられています。契約書のひな形が作成当時のままになっていることで、消費税を8%で支払っていないということも起こりえます。法改正等があった場合、それが自社の契約書にどのような影響を及ぼすか考えることは、法務担当者の仕事の1つであると思います。消費税転嫁対策特別措置法の対象となる特定事業者等にお勤めの法務担当者様におかれましては、自社の契約書を確認し、消費税が8%になっているか、今一度確認して頂くことが重要であると考えられます。
 契約書作成の局面では、表現方法も問題となります。例えば、〇〇円(税込み)などの表記にしている場合、消費税の引き上げが契約書に反映されているか、客観的にわかりづらいことがあります。金額の確認は契約書審査の中でも重要であるため、正確な理解が必要となります。この点については、①本体価格(税別)などの表現方法の工夫②法改正前後の契約書と比較③現在のフォーマットを作成した担当者に話を聞くなどの方法で、思い違いを無くすことができるでしょう。
 
【参考サイト】
・公正取引委員会HP-消費税の転嫁を阻害する行為等に関する消費税転嫁対策特別措置法、独占禁止法及び下請法上の考え方
・消費者庁HP-消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(消費税転嫁対策特別措置法)

関連業務タグ:
関連法律タグ:
 
[著者情報] arai

詳細情報はありません。

※記事コンテンツを掲載したい方は、コチラ

このニュースに関連するセミナー

法務ニュース 税務法務 税法
《東京開催》改正古物営業法と古物売買サイト・アプリの法律問題
2019年02月22日(金)
16:00 ~ 17:30
5,000円(1名様)
東京都渋谷区
講師情報
岡 伸夫
1992年 京都大学法学部卒業
1994年 大阪弁護士会 登録 梅ケ枝中央法律事務所 
2000年 ハーバードロースクール 修士課程(LL.M)卒業
Masuda Funai Eifert & Mitchell 法律事務所(シカゴ)
2002年 第一東京弁護士会 登録替 長島大野常松法律事務所
2004年 外立総合法律事務所
2012年 株式会社カービュー コーポレートリーガルアドバイザー    
2016年 法務室長
2018年 AYM法律事務所開設

弁護士会活動(2018年2月現在)
日本弁護士連合会 ひまわりキャリアサポート 委員
第一東京弁護士会 業務改革委員会 委員 

企業法務を中心とした法律事務所に長年勤務した後、2012年からインターネット系企業の法務責任者としてプラットフォームを利用したメディア・コマースビジネスについてのさまざまな法律問題をサポート。
2018年にAYM法律事務所開設 代表弁護士

主な著書
「アメリカのP&A取引と連邦預金保険公社の保護 債権管理 No.96」金融財政事情研究会
「米国インターネット法 最新の判例と法律に見る論点」ジェトロ 共著
「Q&A 災害をめぐる法律と税務」新日本法規 共著
2018年10月に古物営業法が改正施行されています。
これは、ヤフオク・メルカリ等のインターネットやスマートフォンを使った売買プラットフォームサービスが増えたことが要因となっております。
そこで今回は、主に古物を取り扱う売買プラットフォームサービスを開発リリースする際に注意すべき問題について、長年売買・輸出ビジネス関連サイトに携わった経験をもとにお話しします。
申込・詳細はコチラ
法務ニュース 税務法務 税法
《東京 2日開催》Patent Summit Tokyo 2019(パテントサミット東京)世界9か国 12の特許事務所が一同に会し、海外特許出願戦略を紹介
2019年02月18日(月)
09:20 ~ 17:00
2月18日のみのお申込み 3,800円(税別) 2月19日のみのお申込み 3,800円(税別) 2月18日と2月19日の2日間のお申込み 5,800円(税別) ※下記お申込みフォームの「特記事項欄」に2月18日 or 19日の1日のみお申込みか、18日と19日の2日間にお申込みかをご記入ください。
東京都新宿区
講師情報
講師一覧
■特許弁護士 デール・ラザール DLA Piper USA
DLA Piperは、日本を含め40カ国以上にオフィスを備える国際法律事務所です。
デール・ラザール氏は、ソフトウエア及びエレクトロニクスの特許出願業務において40年の経験を有します。
日本でも多数の講演を行っており、分かりやすさで高い評価を得ています。

■特許弁護士 アンドリュー・シュワブ Greenberg Traurig USA
Greenberg Traurigは、日本を含む10カ国にオフィスを構える国際法律事務所です。
特に米国には29のオフィスがあります。
アンディ―・シュワブ氏は知的財産法について20年以上の経験を有し、エレクトロニクス及びソフトウエア関連の特許出願の他、顧客企業への戦略コンサルティングを得意とします。

■特許弁理士 チェ・セファン 第一特許法人 韓国
第一特許法人は、所員数200名を超える韓国の大手特許事務所です。
第一国際法律事務所との親密な協力関係により、特許侵害訴訟事件も数多く受任しています。
会長、代表を含め、多くの所員が日本語に極めて堪能です。
セファン氏は、精密機械・特殊加工・メカトロニクス・自動車・造船海洋を専門としており、一時は日本の特許事務所でも業務を行っていました。

■欧州特許弁理士 ベルナルド・ガナル PATRONUS IP ドイツ
ベルナルド・ガナル氏は、エレクトロニクス、ソフトウエア分野の特許出願、異議申立、特許訴訟において30年の経験を有します。
ソフトウエアの特許適格性においては、代理人として欧州審判部で重要な審決を築いており、堅実な仕事に定評があります。

■欧州特許弁理士 ロビン・コウレッツ OLBRICHT PATENTANWALTE ドイツ
OLBRICHT PATENTANWALTEは50年以上の歴史を持つドイツの特許法律事務所です。
ロビン・コウレッツ氏は、機械分野を中心とする権利化業務を専門としています。
多様な業務や無理難題にも柔軟に取り組んでくれる姿勢が、顧客から評価されています。

■欧州特許・商標弁理士 アッツ・カドール博士 KADOR & PARTNER ドイツ
アッツ・カドール博士は40年以上前にドイツにてKADOR & PARTNER 特許弁理士事務所を開設しました。
化学技術者としての背景を持ち、物理、製鋼業での特許および商標やライセンス契約も取り扱っています。
ライセンス協会(LES)ドイツ支社の秘書も務めました。

■カナダ弁護士 ロニ・ジョーンズ Oyen Wiggs カナダ
Oyen Wiggsは技術部門の実務経験を持つ弁理士を多く抱えるカナダの知財事務所です。
ロニ・ジョーンズ氏は機械工学およびコンピュータ関連分野の特許を得意とし、医療機器やファイナンス関連ソフトウェアなど多岐にわたり専門的なアドバイスを顧客へ提供しています。

■カナダ弁護士 ステファニー・メルニチャック Oyen Wiggs カナダ
ステファニー・メルニチャック氏は化学、クリーンテクノロジー、バイオテクノロジーや製薬関連を強みとし、ベンチャー企業や大学など幅広い顧客層から支持されています。

■米国弁理士・台湾弁理士・中国特許代理人 童 啓哲(Chi-Che Tung) 寰瀛法律事務所 台湾
寰瀛法律事務所(フォルモサンブラザーズ法律事務所)は国際資格を保有する弁理士・弁護士が多数在籍している台湾の法律事務所です。
童氏は機械工学、ソフトウェア、通信技術、電子工学、建築構造などに関する技術分野を得意とし、米国や台湾、中国、日本などを舞台に国際的に活躍しています。

■タイ弁護士・特許弁理士 マヌーン・チャンチュムニ ROUSE タイ
ROUSEはアジアを中心に欧州、アフリカなどを含め世界中で15か所以上の拠点を持つ国際知財事務所です。

■欧州特許・商標弁理士 アダム・ボグシュ VJP シンガポール
Viering, Jentschura & Partner(VJP)は23名のパートナー、170名以上の従業員を抱え、ドイツを拠点に各地に支店を持つ国際法律事務所です。
ボグシュ氏は電子工学、自動制御や医用技術分野を得意としています。
VJPシンガポール支店を開設し、講義やセミナーを多数開催しています。

■弁理士 劉 新宇 Linda Liu & Partners 中国

■特許弁理士 孫 徳崇 Linda Liu & Partners 中国

■米国弁護士、日本弁理士 龍華 明裕 RYUKA国際特許事務所 日本
RYUKA国際特許事務所は39名の弁理士、3名の米国弁護士を含み、約100名の従業員を抱える日本の国際特許事務所です。
龍華氏は電気通信分野を得意とし、日本及び米国の法律事務所勤務の経験をもとに、権利化業務、ライセンシング、訴訟、鑑定などで20年の経験を有しています。

主催:RYUKA国際特許事務所
協力:レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
世界9か国、12の特許事務所が一堂に集まり、海外への特許出願戦略をご紹介いたします。
国際(PCT)出願時には、世界各国の要件を考慮する必要があります。
例えば米国に最適なPCT明細書は、EPOには好ましくなく、逆も同じです。
このため国際出願時には、各国の要件を比較考慮して、「最適な明細書」を記載する必要があります。
中国や東南アジアで、方式的な拒絶理由を受けないための対応も重要です。
複数国間の最適な審査の進め方や審査順序を考慮するためにも、各国の要件を考慮する必要があります。

Patent Summit Tokyoでは、一つの国の要件のみでなく、主要国の要件全体を考慮したうえでの、PCT明細書の作成方法や、審査の進め方をご提案いたします。
非常に実践的なセミナーなので、現場で実務を担当されている方に役立つことを願っています。

※各講演は日本語または英語で行われます。英語の講演は日本語での逐次通訳があります。
※英語での講演時のスクリーン投影資料ならびに配布資料は英語表記です。日本語訳はありません。

申込・詳細はコチラ
法務ニュース 税務法務 税法
《大阪会場》第108回MSサロン
2019年02月20日(水)
19:00 ~ 21:00
2,000円
大阪府大阪市北区
講師情報
森川 順、河端 直
■森川 順
大阪府立四條畷高等学校卒業
一橋大学社会学部卒業
立命館大学法科大学院修了

2009(平成21)年12月
大阪弁護士会に弁護士登録(新62期)なにわ共同法律事務所入所
2010(平成22)年10月 - 2012(平成24)年3月
立命館大学エクステンションセンター講師

■河端 直
私立桃山学院高校卒業
同志社大学法学部法律学科卒業
大阪大学大学院高等司法研究科修了

2013(平成25)年11月
司法研修所入所(67期)
2014(平成26)年12月
大阪弁護士会に弁護士登録 なにわ共同法律事務所入所
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、「最高裁判決から読み取る同一労働同一賃金の論点」です。
申込・詳細はコチラ
※セミナー広告を掲載したい方は、コチラ

あわせて抑えておきたい関連記事

不当表示の摘発について 1 はじめに  商品や役務を取引する際、企業は広告に当該商品や役務に関する情報を載せます。一般消費者の合理的な選択の妨げとならないよう、表示は適切に行う必要があります。景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)は、広告の不当表示を禁止しています。  近年、消費者庁は不当表示の摘発を加...
彼氏追跡アプリ「カレログ」とは? 1.事件の概要 8月30日にサービス提供が始まった「カレログ」。 そのサービス内容から、その名は瞬く間に知れ渡り、総務省が問題点を検討する旨を言及するにまで至っている。 本サービスは、恋人のスマートフォンに「カレログ」をインストールすると、その恋人の現在位置・通話記録・バッテリー残量などを把握でき...
奈良の医師宅放火殺人 -調書漏えい  医師の有罪確定へ-... 概要 奈良県田原本町の医師宅放火殺人事件をめぐり、中等少年院送致された医師の長男の供述調書などをフリージャーナリストの草薙厚子さんに見せたとして、秘密漏示罪に問われた精神科医崎浜盛三被告(54)の上告審で、最高裁第2小法廷(古田佑紀裁判長)は13日付で、被告側上告を棄却する決定をした。懲役4...