覚書の作り方と注意点

はじめに

業務提携などでよく覚書を締結したというのを目にすることがあります。
そこで今回は覚書の注意事項について見てみましょう。

覚書とは

覚書とは、契約書を作成する前の段階で、当事者双方の合意事項を書面にしたものや、既にある契約書を補足・変更した文書のことを言います。覚書は契約書の補助的書類ではあるものの、一般的な法的な書類と同等に、法的な効力も持つ書類なのです。
覚書を作成する場合としては➀契約締結の意思を確認するために作成する場合、②契約書に代えて作成する場合(標題が「覚書」となっているだけで実質的には契約書)、③契約書の補完・補足のために作成する場合、④契約書を変更する場合にその合意内容を文書化・書面化するために作成する場合、⑤事実関係の確認のために作成する場合が主にあります。
覚書(覚え書き)の見本・サンプル(出典 テンプレートの無料ダウンロード)
業務提携での覚書の書き方文例(出典 ポート株式会社)

覚書と契約書等との違い

契約書、協定書、協議書、覚書、念書、などの表題は、慣例によって決めているようですが、それ自体から法的な効力が生じるものではありません。契約書という表題になっていなくても、記載内容が当事者間の契約内容を定めたものであれば、それは全て契約書としての実態を備えていることになります。また、文書の表題によってその重要性が決まるものではありません。
印紙税法では、契約証書、協定書、約定書その他名称のいかんを問わず、契約の成立等を証すべき文書であればそれは契約書であり、念書、請書なども含むものとされています。
契約交渉で契約書の内容の修正をお願いしてもひな形は修正できませんということを言われる場合があります。その際に覚書で対応させてくださいという方法があるようです。契約書はひな形そのままでも覚書で契約内容が変更されることになりますのでご注意ください。

覚書で契約書の内容を変更・修正するには

契約書の内容を変更する際の覚書の書き方は、当事者と何月何日付の契約のどの部分の契約内容を変更するかを記載します。

(例1)
 売主 と買主 とは、平成 年 月 日締結の不動産売買契約(以下「原契約」という。)の 内容の一部につき、下記のとおり変更することに合意した。
 第●条の「△△」を「××」に変更すること。

 

さらに覚書の内容を変更するときに重要なのは、そこに書かれている内容が効力を発揮する日付です。覚書の中に日付がない場合には署名・捺印をした時点から効力を持ちますが、それでは問題があるときは、いつまでの契約はこちらの覚書に従い、いつ以降については、変更後の内容に従うか、それを明記しておくことが重要です。

 

(例2)
 平成Ο年1月1日より、第1条の賃料に改定する。 よって、平成Ο年12月末日を期限ととする1月分賃料支払いから上記金額が適用される。
 

「覚書(賃料改定)文例と書き方(出典 Proportal consultant)」

 

また、覚書で変更しないことについてはその旨についても記載しておくことが重要です。

(例3)
 甲及び乙は本覚書に記載のない事項については原契約の規定に従う。
 

「売買代金の変更に関する覚書の書き方(出典 文例書式ドットコム)」

 

(例4)
 ・・・(以下、甲と呼ぶ。)と・・・(以下乙と呼ぶ。)は、平成・・年・・月・・日締結の・・契約書の第・条について、双方同意の上、下記の件についてのみ例外を認めることとし、覚書を作成する。
 

「覚書の文例(出典 覚書書式 書き方 雛形 サンプル)」

 

そして、少しでも契約内容などに変更があった場合は、必要に応じて覚書を作成し、保管しておきましょう。書類の作成、双方の署名捺印をもらうという手続きは手間がかかりますが、これをしないと証拠として残らない場合もあります。

最後に

契約書が硬いイメージがあり、署名を求められる側が身構える文書とされるのに比較して、相手方と書面で約束を交わしやすくする方法として、「覚書」等のやわらかいタイトルを使用した書面が作られることも多いようですが、法的にはどちらも同じですので、誤解のないようにしたいところです。

企業法務ナビよりお知らせ
本記事は、約2年9ヶ月前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
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[著者情報] ntakahashi

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1987年 東京大学法学部卒業
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2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。

■アーロン・ペイシェンス
シモンズ&シモンズ外国法事務弁護士事務所代表 パートナー 外国法事務弁護士(英国法・ニュージーランド法)

10年以上日本に滞在、日本語が堪能で、TMT、ヘルスケア・ライフサイエンスを含む幅広い分野の、売却、買収、提携など、クロスボーダーM&Aを数多く手がけ、株式譲渡、事業譲渡、株主間契約、業務提携など、販売契約及びIPライセンスに関する契約書作成においても多数の案件実績を有する。
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