「つくば市」対「早大」風力発電訴訟の結末は!?

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最高裁

「つくば市」対「早大」風力発電訴訟の結末は!?

最高裁は6月9日、茨城県つくば市が風力発電機を設置するにあたり、誤った予測発電量を算定した早稲田大に対し、約8958万円を支払うよう命じた二審判決を支持し、双方の上告を棄却する決定を下した。

訴訟の経過

【事実の概要】
茨城県つくば市は、2004年、市内の小中学校に風車を設置して、環境教育に生かしながら、これにより発電した電力を電力会社に売電する事業を計画。その際、予測発電量の調査を早大に依頼した。

つくば市は、早大の算定した予測発電量に基づき、当該事業は、採算が合うとの結論を下し、約3億円をかけて、市内19校に23基を設置した。しかし、ほとんどの風車が回らず、発電量は予測の約4分の1となったことから、事業を凍結。早稲田大学に工事代金約3億円の賠償を求めて出訴した。

【下級審の判断】
1審の東京地裁は早大の過失を7割、市の過失を3割と認定し、早大に対し、約2億900万円の賠償を命じる判決を下した。

これに対し、東京高裁は「市は電力会社などから風力不足を指摘されたのに、計画を再検討しなかった」として市の過失を7割、早大の過失を3割とする判決を下した。

雑感

連日話題の原発事業含め、何らかの事業を行う際には、専門家から提供されたデータに基づく分析が不可欠である。一方で、その専門家から提供されたデータが不正確なものであった場合、経済的損害、健康面での損害等が発生するおそれがある。

今回の裁判では、つくば市が、早大以外(電力会社等)からもデータの提供を受けていた事実を重視して、つくば市・早大、それぞれの過失割合を当初の3:7から7:3に逆転させたが、もし仮に、つくば市にデータを提供したのが早大のみであった場合には、早大側の過失割合がより大きく評価された可能性が高い(つくば市の方でも、一か所からしかデータの提供を受けずに大規模事業を進行させたという過失が認められる可能性はあるが…)。

このように、近年、裁判所は、専門的知見からデータを提供する立場の者(いわゆる専門家)の責任を重く見る傾向がある。研究データを提供する立場にある者は、実は大きなリスクを背負っているのである。

このようなリスクの分散のために、専門家達は、「念のため、自分以外の専門家の意見も聞くように」と、クライアントに対して提案する方がよいかもしれない。いやはや、自信を持って意見を述べることが難しい世の中である。

企業法務ナビよりお知らせ
本記事は、約8年11ヶ月前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
 
[著者情報] mo.saito

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