東京地裁、KLMの雇い止め無効、無期転換ルールについて

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はじめに

 KLMオランダ航空の契約社員であった客室乗務員の女性3名が無期転換を拒否し、雇い止めを行ったのは無効として職場復帰を求めていた労働審判で、東京地裁は雇い止めを無効としていたことがわかりました。無期転換ルールに関し雇い止めを無効としたのは初とのことです。今回は労働契約法の無期転換ルールを見直します。

事案の概要

 報道などによりますと、3名は2014年3月から約2ヶ月の訓練契約で訓練を受け、同年5月から2年の有期契約で客室乗務員として勤務についていました。その後3年契約で更新していた3名は今年2019年1月に無期転換を申し入れたところKLM側に拒否され雇い止めされたとのことです。KLM側は訓練契約は労働契約には当たらず契約期間は5年を超えていないと主張していたとされます。3名は雇い止めは無効であるとして未払い賃金と職場復帰を求めておりました。

無期転換ルールとは

 有期労働契約が5年を超えて更新されてきた従業員は使用者に対し無期労働契約に転換するよう申し込むことができます(労働契約法18条)。この申込がなされた場合、当該契約期間満了の翌日から無期労働契約となります。これを無期転換ルールと言います。不安定な地位にある有期労働契約者を保護することを目的としています。この無期転換ルールは2013年4月1日に施行された改正労働契約法に規定されており、その5年後である2018年に多くの有期労働契約者が要件を満たすようになることから「2018年問題」と称されました。やはり多くの事業場で問題が生じたとされます。

無期転換の要件

 労働契約法18条によりますと、無期転換ルールが適用される要件は①有期労働契約が通算5年を超えていること、②更新回数が1回以上あること、③それらが同一の使用者との契約であることとされております。厚労省のパンフレットによりますと、5年というのは実際の労働期間ではなく契約期間を指します。つまり3年契約であれば1回目の更新時で通算6年となり、その時点で申し込みが可能ということです。なおこの期間内に6ヶ月以上のブランクがある場合にはそれ以前の期間は参入されません(同2項 クーリング期間)。そして同一の使用者とは同一の法人に雇われていることを意味します。つまり事業場が変わっても会社が同じであれば適用されます。またこのルールを潜脱するために雇用形態を変更しても要件は満たすものと判断されると言われております。

雇い止めの法理

 昨年のいわゆる2018年問題で多くの事業場で雇い止めがなされたと言われております。契約社員の契約期間が終了し、契約を更新しないことを雇い止めと言います。雇い止めは解雇とは異なりますが自由に行えるというわけではありません。労働契約法19条では①これまで更新が反復されており雇い止めが社会通念上無期契約社員を解雇するのと同視できる場合、または②更新されると期待することに合理的な理由がある場合は、客観的に合理的で社会通念上相当な場合でなければ雇い止めができません。業務内容が正社員とほぼ同一であったり、これまで基本的に更新されており更新手続きも厳格に行われていなかったといった場合には認められない可能性が高いと言えます(大阪高裁平成3年1月16日等)。

コメント

 本件で東京地裁は3名の有期契約期間は5年を超えており無期転換ルールの要件を満たすと判断しました。3名は2014年5月から2年契約で有期契約を締結しその後3年契約で更新しております。これだけでは契約期間は5年で5年を超えるという無期転換ルールを満たさないように見えますが、東京地裁はその前の2ヶ月分の訓練契約も有期労働契約に含まれるとしました。以上のように無期転換ルールは労働期間ではなく契約期間の合計で判断されます。また今回の東京地裁の判断のように契約の名目に関わらず有期労働に当たるかを判断される可能性が高いと言えます。このように労働者がいまだ3年しか労働していなかったとしても、更新の時点で契約期間が5年を超える場合には適用されることとなります。有期労働者と契約している場合には以上を踏まえて労務管理を見直しておくことが重要と言えるでしょう。

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[著者情報] mhayashi

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2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。
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