ロックアウトによる解雇の適法性

はじめに

近年、従業員に対し、突然解雇を告げると同時に、即座の会社からの退去・締め出しを命じる「ロックアウト解雇」が増加しています。今回は、3月28日付で東京地裁が出した日本IBM解雇無効判決を題材に、会社からの強制的な締め出しを伴う「ロックアウト」という解雇手法の適法性について見て行きたいと思います。

日本IBM 解雇無効判決

日本IBMで働いていた男女5人の従業員(43歳~59歳)が、それぞれ、業績不良という抽象的な説明のみを理由に突然解雇を通知され、その適法性を争っていた事案です。
5人の原告は解雇通知を受けた翌日から、入館証が使用不可となり、会社に立ち入ることも許されない、いわゆる、ロックアウト解雇をされていたため、解雇の効力と共に、この締め出しを伴う非倫理的な解雇手法自体の適法性についても争っていました。これに対し、東京地裁は3月28日、従来からの解雇法理(労働契約法第16条)を適用して、権利濫用を理由に5人全員の解雇を無効とし、雇用の継続と解雇後の賃金支払いを命じる判決を下しました。しかし、その一方で、ロックアウト行為自体については、「会社と対立し機密情報を漏らす恐れ」を理由に違法ではないと判断しています。見方によっては、「権利濫用とは言えない正当な解雇事由があれば、解雇対象の社員を即日会社から締め出しても違法性はない」ともとれる判決となっています。

ロックアウト解雇と自宅待機命令

ロックアウト解雇という手法と少し通じるところがあるのが、企業が従業員に対して行う「自宅待機命令」です。自宅待機命令は、解雇を前提に雇用契約の終了日までの期間、会社への出社を禁じる場合や、謹慎名目などで会社への出社を禁じる場合などに行われるものですが、昭和60年3月23日の静岡地裁判決によりますと、業務上の必要性があり、合理的な範囲で行われる限りは、雇用契約上の労務指揮権に基づく業務命令として自宅待機命令は許されるとしています。つまり、業務上の必要性がある場合には、雇用期間中の社員を、即座に会社から締め出し、翌日から出社できなくすること自体は違法ではないということになります。

【昭和60年3月23日 静岡地裁判決】
営業の男性社員が仕事上の立場を利用してデモンストレーターの女性と不倫を行ったことを理由に、2年間の自宅待機命令を会社側が出した事案です。男性社員には、自宅待機中、給与も賞与も支払われていました。静岡地裁は、男性社員が会社の対外的信用を大きく失墜し、所長らが取引先へのお詫びに奔走させられるなどした事実を重く見て、男性社員にそのままセールス活動を続けさせることは業務上適当ではなく、会社側が自宅待機を命じたことには、相当の理由があると判示しました。

コメント

在籍社員に対する自宅待機命令の適法性を認めた静岡地裁の判決に沿って考える限り、今回、東京地裁がロックアウトという手法自体の違法性を否定したことに特に驚きはないと言えるかもしれません。しかし、締め出し行為自体が認められるからといって、ロックアウトという手法を安易に用いて解雇を行った場合、解雇対象となった社員の反感を増幅するのは必至で、労務紛争に繋がるリスクが格段に高まることが予想されます。またその他にも、他の社員の会社に対するロイヤリティの低下、会社の社会的イメージの悪化による顧客離れなど、その影響は多岐にわたり、甚大なものとなることが想定されます。その一方で、解雇対象となった社員を会社に出社させ続けるリスクとしては、機密情報の漏えい、システムの破壊、経営層等に対する誹謗・中傷を流布されることによる社内風紀の悪化などが考えられますが、ロックアウトを行っても行わなくても社内風紀の悪化は免れられないこと、機密情報・システムについては、解雇対象社員がタッチできないような措置をとることも可能であること等を考えますと、諸々のリスクを背負ってまでロックアウトを行うメリットはないように感じます。これを機会に、自社での退職勧奨・解雇通知の運用を今一度、再チェックしてみてはいかがでしょうか。

企業法務ナビよりお知らせ
本記事は、約2年8ヶ月前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
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[著者情報] Tomishima-Takeru

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