「堂島ロール」が勝訴、商標権侵害について

はじめに

関西の人気ロールケーキ「堂島ロール」の商標権を侵害したとして「堂島プレミアム」にロゴマークの使用差止と損害賠償を求めていた訴訟で17日、大阪地裁は請求を認める判決をだしていたことがわかりました。ロゴや商品とその価格の類似が認められたとのこと。今回は商標権侵害について見ていきます。

事案の概要

報道などによりますと、洋菓子などの製造販売を行う「モンシェール」(大阪市)は2007年に「堂島ロール」を商標登録しロールケーキの販売を展開しておりました。堂島ロールは卵風味の生地で生クリームを包んだロールケーキで1日1万本以上売れる人気商品とのことです。一方の「堂島プレミアム」(大阪市)は2012年に設立され「プレミアムロール」の名称で同様のロールケーキを販売しておりました。なお商標登録については堂島ロールとの誤認のおそれから却下されているとのことです。モンシェール側は堂島プレミアム側にロゴマークの差止と1億円の損害賠償を求め提訴しておりました。

商標と商標権

商標とは「人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの」で「業として」「使用するもの」とされております(商標法2条1項)。商品やサービスに付される目印と言えます。商標権は登録により発生し、登録の日から10年間存続します(19条1項)。この期間は更新することができます(同2項)。商標権者は自己の商標権を侵害され、または侵害されるおそれがある場合にはその差止や損害の賠償を求めることができます(36条)。その際賠償額について推定規定も置かれ、類似商品の販売数に侵害が無ければ得ていた利益を乗じた額を損害額とすることができます(38条)。

商標権侵害とその判断

商標権の侵害とは、指定商品または指定役務に類似する商品であって、その商品や包装に登録商標に類似する商標を付して使用するといった場合を言います(37条)。そして商標の類似性については、取引において対比されるそれぞれの商標が商品に使用された際、商品の出所混同を生じる程紛らわしい場合を言うとされております(最判昭和43年2月27日)。そしてその類否は基本的には商標の外観、呼称、観念の3つの要素を判断します。そして商品・役務が類似であることを前提に平均的な需要者を基準として取引の実情も考慮して判断していくことになります。

商標類否の裁判例

商標の類似性が認められた裁判例としては「橘正宗」と「橘焼酎」、「制糖」と「日糖協 制糖茶」、「SCIENCE DIET」と「SUNACE DIET」、「夢二」と「竹久夢二」などが挙げられます。また微妙な例として「大森林」と「大林森」があります。これはいずれも養毛剤ですが、一審二審は通常養毛剤を購入する男性はマークや商品名をよく確認するため混同しないとして否定しました。一方最高裁はいずれも「ふさふさと生い茂る樹木のイメージ」であり本人だけでなく家族が購入することも有りうるとして取引の実情を考慮し類似性を認めました(最判平成4年9月22日)。

コメント

本件で「堂島ロール」はロールケーキでその指定商品・役務は「洋菓子及びパン」となっております。堂島プレミアムが販売する「堂島プレミアムロール」も同じロールケーキで商品・役務は同一と言えます。大阪地裁は堂島プレミアムロールのロゴは堂島ロールの高品質版という印象を消費者に与え、混同を生じさせるものであり、消費者が混同することをもくろんでいたことさえうかがえるとして差止と販売利益分3426万円の支払いを命じました。商品・役務も同一で価格も同等であることから平均的な消費者は混同すると判断されたものと考えられます。このように商標の類似性は外観や呼称だけでなく取引の実情なども踏まえてかなり微妙な判断を要するものです。しかし基本的には消費者の立場から見て混同し得るかどうかにつきると言えます。自社製品のロゴや外観が他社製品と似ている場合には以上のことを踏まえて類似していると判断されるか否かを慎重に見極めることが重要と言えるでしょう。

関連業務タグ:
関連法律タグ:
 
[著者情報] mhayashi

詳細情報はありません。

※記事コンテンツを掲載したい方は、コチラ

このニュースに関連するセミナー

企業 法務ニュース 訴訟・行政 知財ライセンス 商標法
《東京開催》改正古物営業法と古物売買サイト・アプリの法律問題
2019年02月22日(金)
16:00 ~ 17:30
5,000円(1名様)
東京都渋谷区
講師情報
岡 伸夫
1992年 京都大学法学部卒業
1994年 大阪弁護士会 登録 梅ケ枝中央法律事務所 
2000年 ハーバードロースクール 修士課程(LL.M)卒業
Masuda Funai Eifert & Mitchell 法律事務所(シカゴ)
2002年 第一東京弁護士会 登録替 長島大野常松法律事務所
2004年 外立総合法律事務所
2012年 株式会社カービュー コーポレートリーガルアドバイザー    
2016年 法務室長
2018年 AYM法律事務所開設

弁護士会活動(2018年2月現在)
日本弁護士連合会 ひまわりキャリアサポート 委員
第一東京弁護士会 業務改革委員会 委員 

企業法務を中心とした法律事務所に長年勤務した後、2012年からインターネット系企業の法務責任者としてプラットフォームを利用したメディア・コマースビジネスについてのさまざまな法律問題をサポート。
2018年にAYM法律事務所開設 代表弁護士

主な著書
「アメリカのP&A取引と連邦預金保険公社の保護 債権管理 No.96」金融財政事情研究会
「米国インターネット法 最新の判例と法律に見る論点」ジェトロ 共著
「Q&A 災害をめぐる法律と税務」新日本法規 共著
2018年10月に古物営業法が改正施行されています。
これは、ヤフオク・メルカリ等のインターネットやスマートフォンを使った売買プラットフォームサービスが増えたことが要因となっております。
そこで今回は、主に古物を取り扱う売買プラットフォームサービスを開発リリースする際に注意すべき問題について、長年売買・輸出ビジネス関連サイトに携わった経験をもとにお話しします。
申込・詳細はコチラ
企業 法務ニュース 訴訟・行政 知財ライセンス 商標法
《東京 2日開催》Patent Summit Tokyo 2019(パテントサミット東京)世界9か国 12の特許事務所が一同に会し、海外特許出願戦略を紹介
2019年02月18日(月)
09:20 ~ 17:00
2月18日のみのお申込み 3,800円(税別) 2月19日のみのお申込み 3,800円(税別) 2月18日と2月19日の2日間のお申込み 5,800円(税別) ※下記お申込みフォームの「特記事項欄」に2月18日 or 19日の1日のみお申込みか、18日と19日の2日間にお申込みかをご記入ください。
東京都新宿区
講師情報
講師一覧
■特許弁護士 デール・ラザール DLA Piper USA
DLA Piperは、日本を含め40カ国以上にオフィスを備える国際法律事務所です。
デール・ラザール氏は、ソフトウエア及びエレクトロニクスの特許出願業務において40年の経験を有します。
日本でも多数の講演を行っており、分かりやすさで高い評価を得ています。

■特許弁護士 アンドリュー・シュワブ Greenberg Traurig USA
Greenberg Traurigは、日本を含む10カ国にオフィスを構える国際法律事務所です。
特に米国には29のオフィスがあります。
アンディ―・シュワブ氏は知的財産法について20年以上の経験を有し、エレクトロニクス及びソフトウエア関連の特許出願の他、顧客企業への戦略コンサルティングを得意とします。

■特許弁理士 チェ・セファン 第一特許法人 韓国
第一特許法人は、所員数200名を超える韓国の大手特許事務所です。
第一国際法律事務所との親密な協力関係により、特許侵害訴訟事件も数多く受任しています。
会長、代表を含め、多くの所員が日本語に極めて堪能です。
セファン氏は、精密機械・特殊加工・メカトロニクス・自動車・造船海洋を専門としており、一時は日本の特許事務所でも業務を行っていました。

■欧州特許弁理士 ベルナルド・ガナル PATRONUS IP ドイツ
ベルナルド・ガナル氏は、エレクトロニクス、ソフトウエア分野の特許出願、異議申立、特許訴訟において30年の経験を有します。
ソフトウエアの特許適格性においては、代理人として欧州審判部で重要な審決を築いており、堅実な仕事に定評があります。

■欧州特許弁理士 ロビン・コウレッツ OLBRICHT PATENTANWALTE ドイツ
OLBRICHT PATENTANWALTEは50年以上の歴史を持つドイツの特許法律事務所です。
ロビン・コウレッツ氏は、機械分野を中心とする権利化業務を専門としています。
多様な業務や無理難題にも柔軟に取り組んでくれる姿勢が、顧客から評価されています。

■欧州特許・商標弁理士 アッツ・カドール博士 KADOR & PARTNER ドイツ
アッツ・カドール博士は40年以上前にドイツにてKADOR & PARTNER 特許弁理士事務所を開設しました。
化学技術者としての背景を持ち、物理、製鋼業での特許および商標やライセンス契約も取り扱っています。
ライセンス協会(LES)ドイツ支社の秘書も務めました。

■カナダ弁護士 ロニ・ジョーンズ Oyen Wiggs カナダ
Oyen Wiggsは技術部門の実務経験を持つ弁理士を多く抱えるカナダの知財事務所です。
ロニ・ジョーンズ氏は機械工学およびコンピュータ関連分野の特許を得意とし、医療機器やファイナンス関連ソフトウェアなど多岐にわたり専門的なアドバイスを顧客へ提供しています。

■カナダ弁護士 ステファニー・メルニチャック Oyen Wiggs カナダ
ステファニー・メルニチャック氏は化学、クリーンテクノロジー、バイオテクノロジーや製薬関連を強みとし、ベンチャー企業や大学など幅広い顧客層から支持されています。

■米国弁理士・台湾弁理士・中国特許代理人 童 啓哲(Chi-Che Tung) 寰瀛法律事務所 台湾
寰瀛法律事務所(フォルモサンブラザーズ法律事務所)は国際資格を保有する弁理士・弁護士が多数在籍している台湾の法律事務所です。
童氏は機械工学、ソフトウェア、通信技術、電子工学、建築構造などに関する技術分野を得意とし、米国や台湾、中国、日本などを舞台に国際的に活躍しています。

■タイ弁護士・特許弁理士 マヌーン・チャンチュムニ ROUSE タイ
ROUSEはアジアを中心に欧州、アフリカなどを含め世界中で15か所以上の拠点を持つ国際知財事務所です。

■欧州特許・商標弁理士 アダム・ボグシュ VJP シンガポール
Viering, Jentschura & Partner(VJP)は23名のパートナー、170名以上の従業員を抱え、ドイツを拠点に各地に支店を持つ国際法律事務所です。
ボグシュ氏は電子工学、自動制御や医用技術分野を得意としています。
VJPシンガポール支店を開設し、講義やセミナーを多数開催しています。

■弁理士 劉 新宇 Linda Liu & Partners 中国

■特許弁理士 孫 徳崇 Linda Liu & Partners 中国

■米国弁護士、日本弁理士 龍華 明裕 RYUKA国際特許事務所 日本
RYUKA国際特許事務所は39名の弁理士、3名の米国弁護士を含み、約100名の従業員を抱える日本の国際特許事務所です。
龍華氏は電気通信分野を得意とし、日本及び米国の法律事務所勤務の経験をもとに、権利化業務、ライセンシング、訴訟、鑑定などで20年の経験を有しています。

主催:RYUKA国際特許事務所
協力:レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
世界9か国、12の特許事務所が一堂に集まり、海外への特許出願戦略をご紹介いたします。
国際(PCT)出願時には、世界各国の要件を考慮する必要があります。
例えば米国に最適なPCT明細書は、EPOには好ましくなく、逆も同じです。
このため国際出願時には、各国の要件を比較考慮して、「最適な明細書」を記載する必要があります。
中国や東南アジアで、方式的な拒絶理由を受けないための対応も重要です。
複数国間の最適な審査の進め方や審査順序を考慮するためにも、各国の要件を考慮する必要があります。

Patent Summit Tokyoでは、一つの国の要件のみでなく、主要国の要件全体を考慮したうえでの、PCT明細書の作成方法や、審査の進め方をご提案いたします。
非常に実践的なセミナーなので、現場で実務を担当されている方に役立つことを願っています。

※各講演は日本語または英語で行われます。英語の講演は日本語での逐次通訳があります。
※英語での講演時のスクリーン投影資料ならびに配布資料は英語表記です。日本語訳はありません。

申込・詳細はコチラ
企業 法務ニュース 訴訟・行政 知財ライセンス 商標法
《大阪会場》第108回MSサロン
2019年02月20日(水)
19:00 ~ 21:00
2,000円
大阪府大阪市北区
講師情報
森川 順、河端 直
■森川 順
大阪府立四條畷高等学校卒業
一橋大学社会学部卒業
立命館大学法科大学院修了

2009(平成21)年12月
大阪弁護士会に弁護士登録(新62期)なにわ共同法律事務所入所
2010(平成22)年10月 - 2012(平成24)年3月
立命館大学エクステンションセンター講師

■河端 直
私立桃山学院高校卒業
同志社大学法学部法律学科卒業
大阪大学大学院高等司法研究科修了

2013(平成25)年11月
司法研修所入所(67期)
2014(平成26)年12月
大阪弁護士会に弁護士登録 なにわ共同法律事務所入所
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、「最高裁判決から読み取る同一労働同一賃金の論点」です。
申込・詳細はコチラ
※セミナー広告を掲載したい方は、コチラ

あわせて抑えておきたい関連記事

ストレスチェックの義務化に伴い、企業に求められる対応... 2014年に成立した、改正労働安全衛生法に基づいて、本年12月から従業員50人以上の事業者に対して、従業員へのストレスチェックが義務化される。 ストレスチェック制度の概要 ①ストレスチェックの実施 従業員数50人以上の事業者に義務付けられる。(従業員数50人未満の事業者に対しては、当面の間は努力...
相次ぐ是正勧告、裁量労働制の濫用について... はじめに 医療機器の米大手「メドトロニック」の日本法人が導入していた裁量労働制に関し、三田労働基準監督署から2度にわたって是正勧告を受けていた旨、BuzzFeedNewsが28日付けで報じています。法の要件を満たさない裁量労働制を不正適用し、残業代支払いを回避している例が後を絶たないとのことで...
ブラック法案によろしく? 【内容】 「残業代ゼロ法案」としてマスコミによる大々的な報道がされているのは、「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設」(労働基準法等の一部を改正する法律案要綱の六 参照)という項目であり、その内容は下記のようなものになります。 職務の範囲が明確で一定の年収(少なくと...