KOFガチャ返金訴訟和解、特商法に基づく表記について

はじめに

スマートフォン用ゲーム「THE KING OF FIGHTERS `98 ULTIMATE MATCH Online(KOF)」のガチャ不当表示を巡り、ユーザーが返金を求めていた訴訟で和解が成立していたことがわかりました。原告男性が訴えていた被告会社は運営元ではなかったとのことです。今回は特定商取引法に基づく表記について見ていきます。

事案の概要

スマホ用ゲームKOFで展開されていた一種のクジにあたる「ガチャ」で昨年当たりの出現確率が表示と異なるという問題が発生しておりました。表示では「出現確率3%」となっていたところ実際には0.333%だったとのことです。この点については今年1月既に消費者庁から有利誤認に当たるとして景表法に基づき措置命令が出されております。同ゲームの男性ユーザーは昨年、公式サイトに記載されていた事業者「OURPALM株式会社」に対し返金を求め提訴しておりました。しかし公式サイトでは昨年3月に表記に間違いたあったとし運営元は中国に所在する「Ourpalm Co.,Ltd.」である旨発表しました。被告であるOURPALM株式会社も運営には関与していないとしています。

特定商取引法に基づく表記

特定商取引法11条によりますと、販売業者または役務提供事業者は通信販売を商品、特定権利の販売条件、役務の提供条件について広告をするときは事業者の名称や氏名、商品等の価格などについて表記することを義務付けております。通信販売やインターネット販売など互いに顔の見えない隔地者間での取引はトラブルが生じやすく消費者保護の必要性が高いことから通販事業者やインターネット事業者にこのような表記を求めているとされます。これにより問題が生じた際には消費者は相手事業者と連絡を取ったり法的措置が取れるということです。

表記内容

特商法に言うところの「通信販売」とは郵便、電話、ファックス、インターネットなどにより商品の販売や役務の提供行うものを言います。電話勧誘販売を除くすべての商品・役務が対象となっているとされます(2条2項)。そして通信販売を行う事業者は以下の表示を行うことが義務付けられております(11条、施行規則8条)。
①販売価格、役務の対価
②代金、対価の支払い時期と方法
③商品、役務の引き渡し時期
④契約の撤回、解除に関する事項
⑤事業者の氏名、名称、住所、電話番号
⑥事業者が法人でありインターネットを利用する場合は代表者または責任者の氏名
⑦申込みに有効期限があるときはその期限
⑧代金以外に購入者が負担すべき金銭がある場合はその内容と額
⑨商品に隠れた瑕疵がある場合の責任について
⑩ソフトウェアの提供を行う場合にはその動作環境
⑪商品の販売数量の制限や条件などがある場合はその内容
⑫消費者の請求により書面を交付する際に有料である場合はその額
⑬メール広告をする場合は事業者のメールアドレス

違反した場合

これらの表示義務に違反した場合には主務大臣は措置命令や業務停止命令等を出すことができます(14条、15条等)。また場合によっては罰則として1年以下の懲役、200万円以下の罰金またはこれらの併科となるとされております(72条2項)。

コメント

本件で原告男性は公式サイトに表示されていた事業者である「OURPALM株式会社」を相手取り提訴しました。しかし被告側企業であるOURPALM株式会社によりますと一切運営には関わっていないとのことです。実際に運営していた中国所在の「Ourpalm」と被告企業は個人的な繋がりがあり、将来合弁事業を行うことを想定して似た商号にしていただけであり、運営元の中国企業がとりあえず記載していただけであろうとしています。本件で原告と被告は本題であるゲームでの有利誤認については踏み込まず和解となりました。このような事態から消費者を保護するための11条表示がうまく機能しなかった例と言えます。虚偽の記載や表示がある場合には消費者庁により調査や検査が行われ、場合によっては上記のように措置命令や罰則が適用されます。インターネットを使用して商品を販売したりゲームやアプリを提供する場合はこのような規制にも注意を払うことが重要と言えるでしょう。

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[著者情報] mhayashi

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石川 智也
西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士

2005年東京大学法学部第一類卒業
2006年弁護士登録(第一東京弁護士会)
2015年バージニア大学ロースクール卒業(LL.M.)
2016年Max Planck Institute for Innovation and Competitionにある
ミュンヘン知的財産法センター修了(LL.M.)、同年Noerr法律事務所ミュンヘンオフィス勤務
2017年米国ニューヨーク州弁護士登録

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野呂悠登
TMI総合法律事務所 弁護士

東北大学法学部卒業、東京大学法科大学院修了

平成27年改正個人情報保護法の全面施行前後に、
個人情報保護委員会事務局において、
法令関係とデータの利活用関係を担当

近時の著書等には『個人情報管理ハンドブック[第4版]』(商事法務、2018)、
「AIによる個人情報の取扱いの留意点」(Business Law Journal、2018年6月号)、
「ビッグデータ・個人情報の利活用と先端ビジネス」(Business Law Journal、2018年8月号付録〔LAWYERS GUIDE〕)等がある。

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AIを活用する場合、従来人間の脳が行っていた知的な作業をコンピュータに行ってもらうことになるため、従来想定されなかった様々な法的問題点が生じることが想定されます。
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パートナー 日本及びカリフォルニア州弁護士

東京大学法学部卒
1999年弁護士登録(第二東京弁護士会)
カリフォルニア大学デービス校ロースクール修士課程卒(LL.M.)
国内外の販売店契約に関する取扱い案件多数
著作に「販売店契約の実務」(中央経済社・共著・編集担当)

主催
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販売店契約(ディストリビューション契約)は、サプライヤーの商品を、販売店(ディストリビューター)の販売チャネルを通じて販売するための契約です。
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①実際の事例の紹介を多く行います。よく見かける契約書の条項の一言一句の大切さは、実際に問題が起こってから初めて思い知らされることが多いものです。
実際に起こった問題に触れながら、これまで見過ごしていたかもしれない各条項の重要性について見ていきます。

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