原子力損害賠償支援機構法を考える。

明かり

原子力賠償支援機構法が成立

東京電力福島第1原子力発電所事故の賠償を進めるための原子力損害賠償支援機構法が、3日成立した。
同法は5日にも施行され、巨額の賠償金を抱える東電の資金繰りを支えるための原子力損害賠償支援機構が今月中にも設立される見通しだ。
同法では、第1義的な賠償責任を負う東電を破綻させないよう、新設される機構を通じて資本注入や資金援助を行い、被害者への賠償金を支払う仕組みを整える。

賠償の仕組み

原子力損害賠償支援機構には、東電や原発を持つ他の電力会社などが負担金を拠出する。また、政府は、同機構に必要に応じて換金できる最大2兆円分の国債を交付して、同機構に必要な資金を調達させる。その他、金融機関は追加融資を行う。
機構は、これらの資金を基に、優先株の配当と引き換えに東京電力へ資本を注入する。
東京電力は、注入された資本・東京電力内でのリストラ等の自助努力・毎年の利益から被害者への賠償金を捻出し、賠償に充てる。なお、東京電力が同機構から受け取った資金は、最終的には全て返済することになっている。

現状

東京電力はこれまで、約16万人を対象に生活費や営業被害など総額690億円の仮払いを実施してきた。事故収束の見通しは依然不透明さを拭えず、また、最近では原発周辺地域のみならずかなりの広範囲にわたり、農業・漁業・牧畜業をはじめとして影響が拡大していることから、今後も最終的な賠償額決定までには長い年月を要するとみられる。
東京電力では、リストラ、約6000億円規模の資産売却を進める方針で、保有株式の売却なども検討中だが、買い叩きへの懸念もあり、慎重に進める構えだ。
機構らによる資本注入が行われた場合でも、東京電力の経営難に変わりはない。事故収束への費用も収益を圧迫するため、料金値上げも検討する。

評価

成立した法案に対する評価は様々であるが、全部あるいは一部について批判的見解を持つ人が少なくないように思われる。今回の事故は、“想定外”の“特殊”な事故であるため、対応も“想定外”で“特殊”なものになることは致し方なかろう。すなわち、本来的には、株式会社たる東京電力は、保有資産を売却する等して負担する莫大な賠償金支払いを行い、それが不可能となれば倒産、株主が有限責任を負い、東京電力の債権者が債権放棄するというプロセスを踏むはずであるが、その影響が大きすぎるため、機構の設立による東京電力存続を選ばざるをえないということであろう。
ただし、電力事業そのものが他の事業と比べて本来的に特殊性を持っている訳ではなく、電力事業の在り方・電力供給の方法が、電力事業を特殊ならしめてきたことに鑑みれば、例外的措置に飛びつく前に、もう一度原則論に立ち戻り、なぜ電力事業に原則論が適用できなくなってしまったのかを考える必要があるように思われる。

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本記事は、約5年6ヶ月前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
 
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慶應義塾大学経済学部卒業 
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第一東京弁護士会労働法制委員会外国法部会副部会長
経営法曹会議会員
経営者側労働法専門弁護士。労働審判・仮処分・労働訴訟の係争案件対応、団体交渉(組合・労働委員会対応)、労災対応(行政・被災者対応)を得意分野とする。企業内セミナー、経営者向けセミナー、社会保険労務士向けセミナーを多数開催。
安西法律事務所所属。第一東京弁護士会労働法制委員会外国法部会副部会長。慶応義塾大学経済学部卒。使用者側の労働紛争を専門とする。

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