トヨタ自動車常務役員事件からみる違法性の認識

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刑法の規定と違法性の認識

 刑法は、38条3項本文により、「法律を知らなかったとしても、そのことによって罪を犯す意思がなかったとすることはできない。」としている。行為者が法律をしらない場合であっても、刑法の条文に違反する場合には、刑法が適用され、罪に問われることになる。
 法律の存在は知っていても、その法律に違反すると思っていなかった場合に刑法が適用されるか否かは条文に明記されていない。このような場合の判断材料としてあげられるのが違法性の認識である。
 違法性の認識とは、自己の行為が「法律上許されないことであるという認識」のことをいう。法律の存在は知っているが、自己の行為が法律上許されないことであるとの認識がない者について、刑法を適用して処罰することができるか否かを違法性の認識の必要性の有無を踏まえて考えることになる。

判例の考え

 判例は、判決を下すに際して違法性の認識は不要であるとしている。法の不知を弁明として認めていては、取締りの達成をすることができないと考えるからである。したがって、裁判においては、違法性の認識がない場合も有罪となる可能性が高い。

コメント

 トヨタ自動車の常務役員が密輸したとされるのは、「オキシコドン」という錠剤で、日本では麻薬に指定されているが、米国では医薬品として広く使用されているものである。それゆえ、常務役員は、麻薬を密輸した意識はないという。常務役員は違法性の認識に欠けると考えられるが、裁判において違法性の認識に欠ける点については斟酌されない可能性が高い。
 日本と外国においての違法性の有無につき、異なるケースは多々ある。このような双方の差異をきちんと認識して行動しなければ、今回の常務役員のように不測の事態を生じかねない。日本と外国で違法性の有無に差異が生じることが多い医薬品等を類型化したリストを作成し、従業員に周知徹底させるといった対策を行っていくことが必要であると考える。

企業法務ナビよりお知らせ
本記事は、約4年1ヶ月前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
 
[著者情報] N.K

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元ITエンジニア・ライター。

東証一部上場企業からシードステージのベンチャーまで、約60社の顧問弁護士等、イースター株式会社の代表取締役、株式会社KPIソリューションズの監査役、株式会社BearTailの最高法務責任者などを務める。JAPAN MENSA会員
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編著:『ライセンス契約のすべて 実務応用編』(編著、第一法規、2018年)、『ライセンス契約のすべて 基礎編』(編著、第一法規、2018年)、『ダウンロードできる 英文契約書の作成実務』(編著、中央経済社、2018年)など、著作・論文多数

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■上田潤一
アンダーソン・毛利・友常法律事務所/パートナー弁護士

01年東京大学法学部卒業
04年弁護士登録
12年米国Vanderbilt University卒業(LL.M.)
13年ニューヨーク州弁護士登録、英国University College London卒業(LL.M.)
労働法、社会保険・労働保険・年金に関連する法律、会社法、個人情報保護法等の法分野に関する業務を中心に、労働案件、一般企業法務の案件、紛争案件等を取り扱っている。
著作に『仕事でよく使う・すぐに応用できるビジネス契約書作成ガイド』(共著)(清文社、2017)、『実務Q&Aシリーズ 懲戒処分・解雇』(共著)(労務行政、2017)等がある。

■荻野聡之
アンダーソン・毛利・友常法律事務所/アソシエイト弁護士

03年東京大学法学部卒業
06年東京大学法科大学院卒業(法務博士(専門職))
08年弁護士登録
労働法、危機管理、事業再生等の法分野に関する業務を中心に取り扱っている。
著作に『企業のための労働実務ガイド1 Q&Aと書式 解雇・退職』(共著)(商事法務、2013)、『労使双方の視点で考える 27のケースから学ぶ労働事件解決の実務』(共著)(日本法令、2015)、『M&Aにおける労働法務DDのポイント』(共著)(商事法務、2017年)等がある。

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1987年 東京大学法学部卒業
1989年 弁護士登録
1995年 ロンドン大学UCL(LL.M.)卒業
2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。

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