特定商取引法違反で3人を逮捕、連鎖販売取引(マルチ商法)とは

法務担当者が“法務”を語る新しいWEBメディアはコチラ

はじめに

 兵庫県警は5日、東京都の会社「Brest(ブレスト)」(港区)社長の男(63)ら3人を特定商取引法違反の疑いで逮捕していたことがわかりました。マルチ商法で全国の会員から約161億円を集めていたとのことです。今回は特定商取引法が規制する連鎖販売取引を見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、ブレスト社長ら3人は共謀し2013年から3年間にマレーシアの会員制交流サイト(SNS)「エムフェイス」の広告枠への投資を持ちかけ、全国約3万2千人から約161億円を集めていた疑いが持たれております。口コミやセミナーなどで出資者を募り、出資した人にさらに別の出資者を勧誘させ、出資額や勧誘実績に応じて配当金が得られると説明したいたとされます。その際、代表者の指名や住所などが記載された書類などを交付せず、また契約を解消できる旨を故意に伝えなかったことなどの疑いが出ております。今年3月には警視庁が同様の手口で投資を募っていた別グループのメンバーを逮捕していたとのことです。

連鎖販売取引とは

 個人を販売員として勧誘し、さらにその個人に別の販売員を勧誘させ連鎖的に商品または役務の販売を拡大していく商法を連鎖販売取引と言います。一般にマルチ商法とも呼ばれます。特定商取引法の連鎖販売取引に該当する場合には一定事項の明示や表示義務などが課され、またいくつかの禁止行為が規定されております。また違反した場合は業務改善命令(38条)、業務停止命令(39条)、業務禁止命令(39条の2)などの行政処分がなされるほか、罰則として3年以下の懲役、300万円以下の罰金またはこれらの併科となる可能性があります(70条1号)。

連鎖販売取引の要件

 特定商取引法33条によりますと、①物品または役務の販売事業で、②再販売、受託販売、受託販売のあっせん、同種役務の提供、同種役務の提供のあっせんをする者を、③特定利益が得られると勧誘し、④特定負担を伴う取引を行うことを連鎖販売取引というとしています。少々わかりにくい規定ですが、つまり「他の人を誘って入会してもらうと何割の配当がもらえます」などと勧誘し金銭を負担させる取引を言います。この再勧誘の際の配当や紹介料を「特定利益」、入会する際の負担金を「特定負担」と言います。

連鎖販売取引を行う際の規制

(1)氏名等の明示
 連鎖販売取引を行う場合には勧誘に先立って消費者に対し、①統括者、勧誘者、一般連鎖販売業者の氏名または名称、②特定負担を伴う取引についての契約の勧誘目的である旨、③商品または役務の種類を明示しなくてはならないとしています(33条の2)。

(2)禁止行為
 連鎖販売取引の勧誘の際に契約解除を妨げる目的で商品の品質や性能、特定利益、特定負担、解除条件など重要事項を告げずまた虚偽の内容を告げること、解除を妨げる目的で相手を威迫すること、勧誘目的を告げずに誘引し、公衆の出入りする場所以外で勧誘を行うことが禁止されます(34条)。また著しく事実に相違する表示や実際のものより著しく優良・有利であると誤認させるような表示による誇大広告も禁止されます(36条)。

(3)書面の交付
 また契約の際には①統括者の氏名、住所、電話番号、②商品の種類、性質、品質などに関する事項、③商品名、④価格、⑤特定利益、⑥特定負担の内容、⑦契約解除の条件その他禁止事項などを記載した書面を交付する必要があります(37条)。

コメント

 本件でブレスト社の社長ら3人は出資を持ちかけた際、代表者の氏名や住所などが記載されていない書類を交付し、また契約が解除できる旨を故意に伝えなかった疑いが持たれております。これらが事実であった場合には特定商取引法の書面交付義務違反や禁止事項に抵触することとなります。以上のように連鎖販売取引にはかなり厳格な規制が置かれており罰則も設けられております。なお似たような商法に「ネズミ講」と呼ばれるものがあります。これは連鎖販売取引と違い物品や役務の販売を目的とせず金品の受け渡しのみを目的とし、2人以上の会員を勧誘させるというものです。こちらは連鎖販売取引と異なり無限連鎖講防止法によって無条件で違法となります。消費者に会員の勧誘を募る商法を行う際には以上の点を踏まえてこれらの法令に抵触しないよう留意することが重要と言えるでしょう。

関連業務タグ:
関連法律タグ:
 
[著者情報] mhayashi

詳細情報はありません。

日々の契約法務を自動化したい方はコチラ

このニュースに関連するセミナー

コンプライアンス
《大阪会場》第125回MSサロン(企業法務研究会)「弁護士との付き合い方:顧問弁護士編」
2020年02月25日(火)
19:00 ~ 21:00
2,000円
大阪府大阪市北区
講師情報
溝上 絢子
大阪教育大学附属高等学校池田校舎卒業
大阪大学法学部卒業
大阪大学大学院法学研究科修士課程修了

2003(平成15)年04月
司法研修所入所(57期)
2004(平成16)年10月
大阪弁護士会に弁護士登録 当事務所入所
2008(平成20)年04月 - 2010(平成22)年9月
大阪大学高等司法研究科(ロースクール)非常勤講師
2011(平成23)年04月 - 2012(平成24)年03月
大阪弁護士会 常議員
2017(平成29)年07月 - 現在
吹田市立男女共同参画センター運営審議会委員
大阪弁護士会 高齢者・障害者総合支援センター運営委員会委員
大阪弁護士会 男女共同参画推進本部委員
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
セミナー部分では法務担当者のための意見交換会を行いたく考えています。
今回のテーマは「弁護士との付き合い方:顧問弁護士編」です。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
コンプライアンス
《東京会場》2020年の注目すべき法改正と法務トピック
2020年02月25日(火)
13:30 ~ 16:30
22,000円(税込)
東京都港区
講師情報
淵邊 善彦
ベンチャーラボ法律事務所 代表弁護士

1987年 東京大学法学部卒業
1989年 弁護士登録
1995年 ロンドン大学UCL(LL.M.)卒業
2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。
2020年は改正民法、改正独禁法、働き方改革関連法など重要な法改正が施行され、個人情報保護法などの改正も予定されています。

本セミナーは、これらの法改正の概要とそれがビジネスにどのような影響を与えるかを具体的に解説します。

重要な法改正の動きを俯瞰的に把握するとともに、各法改正が実務に与えるインパクトを理解することにより、社内においてメリハリがついた対応策を検討したり、社内研修を行ったりするための参考にしていただきたいと思います。

また、今年特に話題になりそうな法務トピックを取り上げ、その最新の状況をご紹介し、自社の法務部門の今後を考えるきっかけとしてもご活用いただける内容になっています。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
※セミナー広告を掲載したい方は、コチラ