公取委が意見募集、独禁法の5%ルールについて

はじめに

 公正取引委員会は7日、独禁法11条の規定による認可についてのガイドラインの改定案を公表し意見募集を開始しました。これにより事業再生の際の公取委による認可要件が緩和される見通しです。今回は独禁法が規定する5%ルールについて見ていきます。

独禁法による規制

 独禁法11条によりますと、銀行または保険会社が他の国内の会社の株式を5%(保険会社では10%)を超えて保有することは禁止されております。銀行や保険会社に事業支配力が過度に集中し、企業融資などの面で公正さが阻害されることを防止するといった趣旨です。これに違反した場合には排除措置命令が出される他、罰則として1年以下の懲役または200万円以下の罰金が規定されております。なお他の国内の会社には銀行や保険会社、信託会社、証券会社などは含まれておりません。このいわゆる5%ルールにはいくつかの例外が設けられております。以下具体的に見ていきます。

5%ルールの例外

(1)規定上の例外
 独禁法11条1項1号~6号では5%ルールに次のような例外規定を置いております。
①担保権の行使、代物弁済によって株式を取得した場合。
②他の国内の会社が自己株式を取得したことにより保有割合が増加した場合。
③信託として株式を取得した場合。
④投資事業有限責任組合の組合財産として議決権を保有する場合。
⑤投資事業を目的とする組合の財産として保有する場合。
⑥債権の株式化(デット・エクイティ・スワップ)として保有する場合。
 これらの場合(④と⑤を除く)でも1年を超えて保有する場合は公取委の認可が必要です(同2項)。

(2)公取委の認可
 上記以外でも公取委の認可を受けた場合には5%を超えて保有することができます。公取委のガイドラインによりますと、その会社の業績が不振でその会社の信用を維持するために必要な場合、5%を超える株式を売却するにしても超過分が大きく売却に相当の期間を要する場合、株式が上場されておらず売却に相当の期間を要する場合に認可されるとされております。またこれら以外の場合でも保有の必要性、事業支配力増大のおそれとその程度、市場への影響などを考慮して認可されることもあります。

ガイドラインの改定案

 ガイドラインでは事業再生会社の議決権を5%を超えて保有することとなる場合、裁判所の関与がある場合には原則として3年間認可するとしています。また債権の株式化による場合も裁判所の関与があれば原則として2年間認可するとしています。改定案では裁判所の関与がなくとも、合理的な経営改善計画が作成され、銀行以外の第三者が関与していれば同じように原則として認可するとしています。

コメント

 以上のように独禁法では原則として銀行や保険会社などが他の会社の株式を5%(10%)を超えて保有することを禁止しておりますが、一定の例外と公取委の認可があれば許容されております。銀行や保険会社が5%を超えて保有することとなる場合には、遅くともその1ヶ月前までに公取委に認可申請をする必要があります。また注意が必要な場合として単独では5%に満たない場合でも、他の銀行と合併して5%を超えることとなる場合にもやはり認可が必要となってきます。今回のガイドラインの改定案が実現すれば経営再建を目的とした株式保有の認可基準がが緩和され、裁判所が関与しない私的整理などでも公取委の認可が受けやすくなるものと思われます。経営の安定化や信用強化といった点で銀行などの金融機関が株式を保有することは有用と言えますが独禁法や金商法上で一定の制限が存在します。経営再建の際にはこのような5%ルールにも留意して再建案を策定していくことが重要と言えるでしょう。

関連業務タグ:
関連法律タグ:
 
[著者情報] mhayashi

詳細情報はありません。

※記事コンテンツを掲載したい方は、コチラ

このニュースに関連するセミナー

法務コラム 法務ニュース コンプライアンス 独占禁止法
《名古屋会場》ITビジネス法務勉強会第4回 アプリ開発における法律問題の基礎
2019年09月11日(水)
15:00 ~ 17:00
3,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
田代 洋介
略歴:
愛知県名古屋市出身
2010年 静岡大学人文学部法学科卒業
2013年 南山大学法科大学院法務研究科修了
2014年 弁護士登録(67期 愛知県弁護士会)
川上・原法律事務所入所
2017年 オリンピア法律事務所 アソシエイト
ITに関する法律を学び、ビジネスに活かしていただくためのITビジネス法務セミナーです。第4回目のテーマはアプリ開発における法律問題の基礎 アプリ開発に関わる法律及び契約の解説です。
申込・詳細はコチラ
法務コラム 法務ニュース コンプライアンス 独占禁止法
《名古屋会場》国際取引・海外展開の即戦力になるセミナー第4回 国際М&Aの基礎
2019年08月29日(木)
14:00 ~ 17:00
12,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
大久保 裕史
弁護士・NY州弁護士

グローバルに展開する大規模法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所において、国際的な企業法務を取り扱い、国内外の企業に法的助言を行う。その間に、国内大手商社法務部への出向やワシントンD.C.での勤務も経験。現在は、オリンピア法律事務所のパートナーとして、主に中部圏の企業の国際取引・海外進出をサポートしている。

略歴:
早稲田大学法学部・法科大学院卒業、
コロンビア大学ロースクール(LLM)卒業
2009年12月 弁護士登録
2010年1月~2018年4月
クリフォードチャンス法律事務所 外国法共同事業
2012年6月~2014年2月 三井物産株式会社 法務部(出向)
2015年9月~2016年7月
クリフォードチャンス・ワシントンD.C.オフィス(出向)
2016年5月 ニューヨーク州弁護士登録
2018年5月~ オリンピア法律事務所 パートナー
英文契約をこれから担当・現在担当している法務担当者の方などを対象としたセミナーです。第4回目のセミナー内容は国際М&Aの基礎(国際М&Aの手法及び海外関連会社の管理に関する注意点)です。
申込・詳細はコチラ
法務コラム 法務ニュース コンプライアンス 独占禁止法
《東京会場》第117回MSサロン
2019年09月03日(火)
15:30 ~ 18:00
2,000円
東京都新宿区
講師情報
河瀬 季
弁護士
東京大学大学院 法学政治学研究科 法曹養成専攻修了

モノリス法律事務所(東京)の代表弁護士としてIT企業の顧問弁護などを行う一方、自らもイースター株式会社の代表取締役を務める。
企業経営者やベンチャー執行役員の経験から企業法務、元ITエンジニアの経験からIT/ネット関連の事件に専門性を持っている。
元ITエンジニア・ライター。

東証一部上場企業からシードステージのベンチャーまで、約60社の顧問弁護士等、イースター株式会社の代表取締役、株式会社KPIソリューションズの監査役、株式会社BearTailの最高法務責任者などを務める。JAPAN MENSA会員
「デジタル・タトゥー」執筆、NHK土曜ドラマ「デジタル・タトゥー」原案。
セミナー(90分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、「デジタルタトゥー/インターネット誹謗中傷・風評被害事件-事例から学ぶネットでの誹謗中傷等への企業の対応方法」です。
申込・詳細はコチラ
法務コラム 法務ニュース コンプライアンス 独占禁止法
《大阪会場》今さら聞けない英文契約書(講師著書付き)
2019年08月29日(木)
10:00 ~ 16:00
(午前)か(午後)のいずれか1つに参加の方:各回13,000円+税(書籍代を含む)※書籍ご持参の方:各回11,000円+税 (午前)と(午後)の両方に参加される方:22,000円+税(書籍代を含む)※書籍ご持参の方:20,000円+税
大阪府大阪市北区
講師情報
吉川 達夫
ニューヨーク州弁護士/外資系企業 VP, General Counsel

外資系法務本部長、駒澤大学法科大学院、国士舘大学21世紀アジア学部非常勤講師
元Apple Japan法務本部長、元伊藤忠商事法務部、元Temple Law School日本校客員教授。上智大学法学部、Georgetown Univ. Law Center卒

編著:『ライセンス契約のすべて 実務応用編』(編著、第一法規、2018年)、『ライセンス契約のすべて 基礎編』(編著、第一法規、2018年)、『ダウンロードできる 英文契約書の作成実務』(編著、中央経済社、2018年)など、著作・論文多数

主催・協力
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
ニューヨーク州弁護士、外資系会社VP, General Counselの吉川達夫氏を講師にお招きし、過去数年間にわたり毎年多くの方からご参加を頂いております「今さら聞けない英文契約書セミナー」を、初心者向けの午前の部(基礎編)と、中級者向け午後の部(英文契約書交渉とドラフティング編)として開催いたします。

(基礎編)は、英文契約書を読んでみたい方、国際法務にこれから携わる方や弁護士の方、携わっているが改めて基礎を確認されたい方など、この機会に是非ご参加ください(英文契約書の読み方を中心に解説)。

(交渉編)は、国際法務の実務を担当されている方、多少の基礎知識はあるが自己流で勉強された方や弁護士の方、発展的な学習をされたい方は奮ってご参加ください。

※当日は国際ビジネス法務(第2版)(第一法規株式会社/2018年3月発売 /2,800円+税)を教科書として使用します。
申込・詳細はコチラ
法務コラム 法務ニュース コンプライアンス 独占禁止法
《東京会場》ハラスメントが疑われる事案が発覚した場合の対応策 ~2019年改正法によるパワハラ防止対策の義務化を踏まえて~
2019年08月27日(火)
13:30 ~ 16:30
20,000円(税別)
東京都港区
講師情報
上田 潤一 荻野 聡之
■上田潤一
アンダーソン・毛利・友常法律事務所/パートナー弁護士

01年東京大学法学部卒業
04年弁護士登録
12年米国Vanderbilt University卒業(LL.M.)
13年ニューヨーク州弁護士登録、英国University College London卒業(LL.M.)
労働法、社会保険・労働保険・年金に関連する法律、会社法、個人情報保護法等の法分野に関する業務を中心に、労働案件、一般企業法務の案件、紛争案件等を取り扱っている。
著作に『仕事でよく使う・すぐに応用できるビジネス契約書作成ガイド』(共著)(清文社、2017)、『実務Q&Aシリーズ 懲戒処分・解雇』(共著)(労務行政、2017)等がある。

■荻野聡之
アンダーソン・毛利・友常法律事務所/アソシエイト弁護士

03年東京大学法学部卒業
06年東京大学法科大学院卒業(法務博士(専門職))
08年弁護士登録
労働法、危機管理、事業再生等の法分野に関する業務を中心に取り扱っている。
著作に『企業のための労働実務ガイド1 Q&Aと書式 解雇・退職』(共著)(商事法務、2013)、『労使双方の視点で考える 27のケースから学ぶ労働事件解決の実務』(共著)(日本法令、2015)、『M&Aにおける労働法務DDのポイント』(共著)(商事法務、2017年)等がある。

主催・協力
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
2019年5月29日、労働施策総合推進法の改正法が成立し、パワハラ防止対策が法制化されました。同法では、パワハラ防止のための雇用管理上の措置義務等に違反し勧告に従わない場合には企業名が公表されるなどのサンクションも定められおり、企業として、ハラスメントの防止対策を適切に講じる必要性も高まっています。

本セミナーでは、企業側弁護士としてハラスメント案件の対応経験が豊富な講師が、2019年の法改正を踏まえ、実務上のノウハウを交えて、企業側で具体的にどのように対応すればよいかの手順を時系列に沿って、わかりやすく解説致します。
申込・詳細はコチラ
法務コラム 法務ニュース コンプライアンス 独占禁止法
《東京会場》スタートアップ企業・ベンチャー企業との間のアライアンス ~大企業がアライアンスを成功させるための契約交渉~
2019年08月28日(水)
13:30 ~ 16:30
20,000円(税別)
東京都港区
講師情報
淵邊 善彦
ベンチャーラボ法律事務所 代表弁護士

1987年 東京大学法学部卒業
1989年 弁護士登録
1995年 ロンドン大学UCL(LL.M.)卒業
2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。

主催・協力
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
近年大企業が、スタートアップ企業・ベンチャー企業の技術力や成長力を取り込むため、アライアンス(資本業務提携)を行うケースが増えています。
大企業同士のアライアンスと違って、これらの企業を相手方とする場合には特有の留意点があり、それらを契約書に反映していく必要があります。

本セミナーでは、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』の編著者である講師が、契約書の条項例に基づいて交渉のポイントを解説するとともに、過去の成功事例や失敗事例を参考にして、大企業がこれらの企業とのアライアンスを成功させるための留意点を検討します。
申込・詳細はコチラ
※セミナー広告を掲載したい方は、コチラ

あわせて抑えておきたい関連記事

動画違法配信への対抗技術、実用化へ... 事案の概要 KDDI研究所・三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社は、ユーザー毎に異なる電子透かしを埋め込んだ動画コンテンツの高速生成技術を共同で開発した。 この技術は、10分の電子透かし入り動画を約2秒(ビットレート7Mbps、サイズ約500MB)で生成するものであり、動画配信サービス...
各社で見直しが進む「執行役員制度」、その概要について... はじめに 日経新聞電子版は3日、上場大手各社が執行役員のあり方について見直す動きが見られる点について報じました。昨年コーポレート・ガバナンスコードが適用され、企業経営陣の監督強化が求められる中、法律に規定されない執行役員の実効性を模索する機運が高まっているようです。今回は多くの企業で採用される...
消費者庁が内部通報の指針改正 1 はじめに  内部通報制度は、組織内外の関係者から法令違反や不正行為の申告を受け付け、調査・対応するための制度です。コンプライアンス徹底につなげている企業もありますが、中小企業では内部通報制度が浸透しておらず、制度構築が十分になされていないことが多いようです。従業員も通報しても改善される可能...