M&A届出4%減、企業結合規制について

はじめに

公正取引委員会は6日、2017年度の企業結合届出の審査状況を公表しました。届出数は306件で前年比4%減とのことです。一定の規模を有する企業の結合には独禁法上、公正取引委員会への届出を要します。今回は企業結合規制を見ていきます。

事案の概要

公取委の発表によりますと、昨年度の企業結合届出数は合計で306件、そのうち299件は一次審査で終了しており、一次審査終了前に取り下げられた件数が6件、二次審査まで移行したのは1件のみとなっております。この299件は問題がないとして排除措置は行わないと通知された件数です。昨年度全体の38%を占めた垂直型企業結合が今年は121件と全体の40%となり垂直型が増加傾向にあるようです。

企業結合規制とは

独禁法4章では合併や会社分割、株式取得等について「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる」場合には、これら企業結合を禁止しております。「一定の取引分野」とはすなわち市場であり、商品の範囲と、取引の地理的範囲を基本的には需要者にとっての代替性から判断されます。「競争を実質的に制限」する場合とは「価格、品質、数量、その他各般の条件を左右することによって、市場を支配することができる状態をもたらすこと」とされます(東京高裁昭和28年12月7日)。

届出を要する場合

(1)株式取得
他社の株式を取得する場合、その会社の国内売上高が200億円超であり、取得しようとしている株式の発行会社とその子会社の国内売上高が50億円超であって、議決権保有割合が20%または50%を超える場合に届出が必要となります(10条)。

(2)会社分割
新設分割の場合は当時会社の国内売上高が200億円超と50億円超の会社が新設分割設立会社に事業の全部を承継させる場合に届出が必要となります。吸収分割の場合は売上高200億円超の会社が50億円超の会社に事業の全部を承継させる場合に必要となります(15条の2)。

(3)事業譲受け
国内売上高200億円超の会社が30億円超の会社から事業の全部または重要な一部を譲受ける場合に譲受け会社が届出を要することになります(16条)。

(4)合併・株式移転
 国内売上高200億円超の会社と50億円超の会社が合併または株式移転をする場合に届出が必要となります(15条、15条の3)。

企業結合審査

以上の要件に該当する場合には公取委に企業結合計画を届け出ることになります。届出から30日間は結合を進めることができません。この期間の審査を第一次審査と言います。問題がなければここで終了し、さらに審査を要する場合は公取委から必要な報告などが要請され第二次審査に移行します。原則90日以内で審査され、問題がなければ終了し、そうでなければ意見聴取を経て排除措置命令となります。

コメント

以上のように一定の国内売上高を持つ企業同士が結合する場合には公取委に届出を行い審査を受ける必要があります。公取委のガイドラインでは一定の場合には企業結合規制違反とはならない基準、いわゆるセーフハーバー基準が定められており、基本的にはHHI値が1500以下であれば適法とされております。また1500~2500で増分が250以下の場合、2500を超えていても増分が150以下の場合も適法とされます。HHI値とは結合する企業のシェアを2乗し合計した数値です。近年株式保有による100%子会社とする企業結合が増加しております。M&Aや企業再編、組織再編の際には会社法上の規制だけでなく独禁法上の規制にも注意が必要です。規制に該当する場合でも届出や審査手続きだけでなくセーフハーバー基準を満たしているか等にも注意することが重要と言えるでしょう。

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岡 伸夫
1992年 京都大学法学部卒業
1994年 大阪弁護士会 登録 梅ケ枝中央法律事務所 
2000年 ハーバードロースクール 修士課程(LL.M)卒業
Masuda Funai Eifert & Mitchell 法律事務所(シカゴ)
2002年 第一東京弁護士会 登録替 長島大野常松法律事務所
2004年 外立総合法律事務所
2012年 株式会社カービュー コーポレートリーガルアドバイザー    
2016年 法務室長
2018年 AYM法律事務所開設

弁護士会活動(2018年2月現在)
日本弁護士連合会 ひまわりキャリアサポート 委員
第一東京弁護士会 業務改革委員会 委員 

企業法務を中心とした法律事務所に長年勤務した後、2012年からインターネット系企業の法務責任者としてプラットフォームを利用したメディア・コマースビジネスについてのさまざまな法律問題をサポート。
2018年にAYM法律事務所開設 代表弁護士

主な著書
「アメリカのP&A取引と連邦預金保険公社の保護 債権管理 No.96」金融財政事情研究会
「米国インターネット法 最新の判例と法律に見る論点」ジェトロ 共著
「Q&A 災害をめぐる法律と税務」新日本法規 共著
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