自動車大手が無期雇用転換を回避へ、2018年問題について
2018/01/12 労務法務, 労働法全般

はじめに
今年4月に多くの有期労働者が無期雇用転換を迎えるに当って、ほとんどの大手自動車メーカーが無期転換を回避する雇用ルールを採用していることがわかりました。2018年は労務管理上、重要な年とされております。今回は2018年問題について見ていきます。
2018年問題とは
改正労働契約法では有期労働契約が繰り返し更新され、通算5年を超えた時に無期労働契約に転換する権利が与えられることになっております。施行されたのが2013年4月1日で、今年2018年4月1日に多くの有期労働者がこの転換権を取得します。そして改正労働者派遣法では派遣社員は同一企業の同一部署に3年を超えて働くことができなくなります。2015年9月末に施行されており、今年の10月に3年を迎える派遣社員が出て来ることになります。つまり今年の4月と10月に労務管理上重要なポイントを迎えるというわけです。これをいわゆる「2018年問題」と言います。
5年ルールについて
改正労働契約法18条1項によりますと、「同一の使用者の間で締結された二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が五年を超える労働者が…現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に…期間の定めのない労働契約の締結の申込をしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。」としています。更新が繰り返され、通算5年を超えることになる契約期間中に無期転換申込権が発生します。例えば1年契約の場合、5回目の更新の際に6回目以降を無期契約とする申込みが可能となります。3年契約の場合は1回目の更新、つまり2期目の途中から5年に達するので1回目も更新の時に申込権が発生することになります。これには例外があり、契約を締結していない期間(空白期間)が6ヶ月以上ある場合には、それ以前の契約期間は算入しないことになります(同2項)。つまり6ヶ月空けることによってリセットされます。なお無期転換申込みをしないことを条件とする特約は無効と解されております。
3年ルールについて
労働者派遣法30条1項によりますと、派遣労働者が派遣先企業で1年以上労働に従事する見込みがある場合に派遣元事業者は、①派遣先に直接雇用を求めること、②新たな派遣先の提供、③派遣元事業者による無期雇用、④その他雇用安定措置のいずれかを講じる努力義務が生じます。そして派遣労働者が同一派遣先で勤務年数が3年になった場合、①~④の措置が努力義務ではなく義務となります。つまり同一派遣先での勤務は3年が上限となり、それ以降は直接雇用してもらうか、他の派遣先を紹介するか派遣元が無期雇用するかのいずれかになります。
コメント
以上のように改正労働契約法では同じ会社で通算5年を超えて働いた場合に有期労働者は無期雇用への転換を申し込むことができ、会社側はこれを拒否することはできません。そこで6ヶ月の空白期間を空けることによってそれまでの労働期間がリセットされる規定を利用し、大手自動車メーカーなどは途中6ヶ月の空白ができるよう雇用ルールを改正して無期転換ができないよう運用していることが厚労省の実態調査で判明しました。厚労省ではこのような行ないは直ちに違法とはならないが、労働契約法の趣旨に反する脱法的なものとしており、厚労大臣はこの回避行動に対して、「必要であれば法を見直す」としています。また派遣における3年ルールについても、3年ルールを免れるために派遣元事業者が意図的に派遣期間を3年未満とすることは法の趣旨に反するとして行政指導の対象であり、改善が無い場合は派遣事業許可の更新を拒否する旨発表しております。5年ルール回避は現状違法とはされておりませんが、今後当局の通達や訴訟では違法と判断される可能性もあります。これらのことを踏まえて、今年4月、10月到来の前に労務管理の方針を决定していくことが重要と言えるでしょう。
関連コンテンツ
新着情報

- 業務効率化
- ContractS CLM公式資料ダウンロード

- 解説動画
岡 伸夫弁護士
- 【無料】監査等委員会設置会社への移行手続きの検討 (最近の法令・他社動向等を踏まえて)
- 終了
- 視聴時間57分

- 解説動画
浅田 一樹弁護士
- 【無料】国際契約における準拠法と紛争解決条項
- 終了
- 視聴時間1時間
- 弁護士
- 髙瀬 政徳弁護士
- オリンピア法律事務所
- 〒460-0002
愛知県名古屋市中区丸の内一丁目17番19号 キリックス丸の内ビル5階
- セミナー
茂木 翔 弁護士(弁護士法人GVA法律事務所/第一東京弁護士会所属)
- 【オンライン】暗号資産ファンドの最前線:制度改正と実務対応
- 終了
- 2025/05/29
- 12:00~13:00

- まとめ
- 今年秋施行予定、改正景品表示法の概要2024.4.25
- 昨年5月に成立した改正景表法が今年秋に施行される見通しです。確約手続きの導入や罰則規定の拡大...

- ニュース
- 不利益を受けても97%が申告せず、インボイスと独禁法2025.6.2
- インボイス制度を巡り、取引先から不利な契約を迫られる被害を受けたとする事業者の約97%が公取委...

- 業務効率化
- 法務の業務効率化
- 弁護士
- 水守 真由弁護士
- 弁護士法人かなめ
- 〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4丁目1−15 西天満内藤ビル 602号