違反件数5980件で過去最多、下請法違反について

はじめに

公正取引委員会は1日、2015年度の下請法違反による指導件数が5980件で過去最多となったことを発表しました。厳しい経済状況が続く下請け業者ですが、下請法によってどのように保護されているのか見ていきたいと思います。

下請法とは

下請法とは、正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」といい、下請代金の支払い遅延等を防止し、立場の弱い下請業者の正当な利益・権利を保護することを目的とする法律です。下請法が適用される場合、親事業者には下請業者に対し書面の交付、下請代金の支払期日の明示、遅延利息の支払い等が義務付けられ、買い叩き、返品等が禁止されます。一定の規模の企業が製造委託、修理委託、役務提供委託等をする場合に適用されることになります。

下請法が適用される場合

下請法が適用される親事業者・下請業者はそれぞれの資本金の額によって決まります。下請法2条7項、8項各号によりますと、製造・修理委託の場合①委託側の企業の資本金が3億円を超え、請け負う側の企業の資本金が3億円以下、②委託側の企業の資本金が1千万円を超え3億円以下、請け負う側の企業の資本金が1千万円以下の場合にそれぞれが親事業者、下請業者の関係となり下請法が適用されます。それ以外にも情報成果物委託、役務提供委託の場合の適用資本金関係が規定されております。

親事業者の義務

(1)発注書面の交付義務
 親事業者は委託契約後直ちに下請業者に対して、給付の内容、下請代金、支払期日等を記載した書面を交付しなければなりません。この書面は下請業者の承諾があれば、公正取引委員会規則で定める方式の電磁書面により提供することもできます(3条1項、2項)。

(2)支払期日を定める義務
 親事業者は下請代金の支払期日について、下請業者から給付や役務の提供を受けた日から60日以内であり、できるだけ短い期間内で定める必要があります(2条の2、1項)。定められた期日がこの規定に違反する場合には受領日から60日経過する日の前日が支払日とみなされます。また期日が定められなかった場合は受領日が支払日となります(同2項)。

(3)遅延利息の支払義務
 親事業者が上記支払期日までに下請代金を支払わなかった場合、下請業者から給付等を受領した日の60日後から支払完了まで年率14.6%を日数に乗じた金額を遅延利息として支払わなければなりません(4条の2)。

親事業者の禁止事項

4条各号には親事業者が下請業者に対して行ってはならない事項が列挙されております。具体的には①下請業者に責任がないのに受領を拒むこと②下請代金不払い③下請業者に責任がないのに代金を減額すること④一旦受領した物を返品すること⑤通常に比べて著しく低い下請代金を定めること⑥正当な理由なく親事業者の製品等を下請業者に買い取らせること⑦下請法違反を通報したことを理由に報復として取引の停止等を行うこと⑧金融機関で割引が困難な手形を交付すること⑨親事業者のために金銭その他の役務の供給を強いること等が挙げられております。

違反した場合

これら下請法の規定に違反した場合には公正取引委員会により禁止行為の取止め、原状回復、再発防止といった措置を求める勧告がなされることになります(7条)。この勧告は行政指導ではなく法令に基いた一定の拘束力を持ち、従わなかった場合には独禁法の規定に従い排除措置命令や課徴金納付命令が課される場合があります。また勧告を受けると企業名、違反内容等が公表されます。書面交付義務に違反した場合には50万円以下の罰金も規定されております(10条)。

コメント

委託契約において何らかの問題が生じた場合、下請法による救済が受けられないかを検討する必要があります。まず自社と相手企業の資本金の額から下請法が適用されるかどうかを調べ、上記の規定に抵触する疑いがある場合には中小企業庁や公取委に問い合わせることが第一歩だと言えます。アベノミクスにより大企業が最高益を記録するなか、それを支える中小企業への下請法違反もまた過去最高を記録しています。下請業者である中小企業の経済状況は今なお改善していないということだと言えます。親事業者からの取引を切られた場合、たちまち経営が成り立たなくなる下請業者にとってある程度の不合理は飲まざるをえないのが現状なのかもしれませんが、今一度契約内容や履行状況を見直し見ることが重要と言えるでしょう。

関連業務タグ:
関連法律タグ:
 
[著者情報] mhayashi

詳細情報はありません。

このニュースに関連するセミナー

契約法務 法務ニュース コンプライアンス
第81回MSサロン(名古屋会場)
2017年04月20日(木)
18:00 ~ 20:00
2,000円
名古屋市中区丸の内
講師情報
和田圭介 田代洋介
弁護士・ニューヨーク州弁護士 和田圭介
略歴:
愛知県春日井市出身
京都大学法学部・アメリカDuke大学LLM卒業。
世界最大規模の国際法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所の東京オフィスでの勤務を経て、現在は、主に中部圏の企業の国際取引・海外進出をサポートしている。
契約実務・コンプライアンス対応等の企業法務を専門とし、国内企業による国際取引・海外進出、英文契約に精通している。
また、M&Aや上場支援の分野にも力をいれている。
大手総合商社・外資系企業の法務部への出向経験があるため、企業法務の現場の問題意識にも通じている。
講師のプロフィールの詳細は、以下をご参照下さい。
http://www.olympia-law.com/attoney/Keisuke_Wada.html

弁護士 田代洋介
略歴:
愛知県名古屋市出身
静岡大学人文学部法学科卒業・南山大学法科大学院修了
出身地である名古屋市で弁護士登録をして以来、情報管理体制(個人情報・営業秘密)の構築に関するアドバイスや、情報流出時の対応など、企業に生ずる法的な問題の解決に尽力している。その他、労働紛争や債権回収に関する交渉・訴訟対応や、著作権法など知的財産権分野にも注力している。
講師のプロフィールの詳細は、以下をご参照下さい。
http://www.olympia-law.com/attoney/Yousuke_Tashiro.html
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、 「改正個人情報保護法の実務対応」です。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
契約法務 法務ニュース コンプライアンス 下請法
第82回MSサロン(東京会場)
2017年05月24日(水)
19:00 ~ 21:00
2,000円
東京都新宿区
講師情報
伊藤 雅浩
1996年名古屋大学大学院工学研究科情報工学専攻修了
アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)等にて,SAP R/3その他ERPパッケージソフトの導入,基幹系情報システムの企画,開発のプロジェクトマネジメントに従事。
2007年一橋大学法科大学院卒業
2008年弁護士登録,弁護士法人内田・鮫島法律事務所入所
2013年弁護士法人内田・鮫島法律事務所パートナーに就任
主にソフトウェア,ネット,システム開発に関する契約,紛争処理に従事している。
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、 「施行直前!知っておくべき改正個人情報保護法」です。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
契約法務 法務ニュース コンプライアンス 下請法
【国際法務入門】売買契約・共同開発契約の審査と作成
2017年04月19日(水)
19:00 ~ 22:00
25,000円(税込) ※平成29年2月15日開催のLBS体験講座に参加された方は10,000円減算した金額とさせていただきます。 なお、単回申込みを複数回される場合は、上記減算は初回分のみ適用となりますのでご了承ください。
東京都新宿区
講師情報
登島 和弘
インヴェンティヴ・ヘルス・ジャパン合同会社 アジア太平洋地域法務責任者
1961年神戸市生まれ
中央大学法学部法律学科卒
立命館大学法務研究科修了
スタンレー電気㈱総務部庶務課法務担当を皮切りに、
日本AT&T㈱(米系)契約課長、松下冷機株式会社法務室主事、
セジデム株式会社(仏系)コーポレートサービス部統括部長・法務部長兼任等、
を歴任し、現職。
*企業名は当時のまま。
※日本企業・外資系企業両方での国際法務経験が有り、両者の観点から国際法務
について指導を行います。
国際法務入門者向けの契約法務習得セミナーになります。
当日は、下記の流れで、こちらで用意したビジネスシチュエーションを題材に、
国際法務経験豊富な講師との双方向でのコミュニケーションを行い、
ときに、少人数のグループでのディスカッションを織り交ぜながら、
参加者が思考しアウトプットするプログラムとなっております。

売買契約・共同開発契約の審査や作成に必要な「知識」を習得するのはもちろんのこと、
一方的に話を聞くセミナーとは異なり、各契約を検討する上での「思考法・仕事術」などの
実践的な能力を習得出来るのが特徴です。

【講師からケースの説明】→【グループディスカッション】→【各グループの発表】→【講師レビュー】

★「体験講座」(2月15日開催)の参加者の声★
・書籍等では実務に近い情報が無い為、講座で具体的なケースを想定し仕事の進め方を理解出来てる内容がとてもよかったです。
・少人数で法務業務を担当している為、自分自身の経験、知識、感覚で仕事をしてしまう事が多く、
法務業務をする上で大事な思考のフレームワークを学べて良かったです。
・講義内容はもちろんですが、他社の法務担当の意見を聞く事が出来て、とても参考になりました。

★今回のテーマ★
「売買取引・共同開発」
※ こちらで事前課題を用意し、受講前にケース理解を深めていただきます。
※ 本講座は「リーガルビジネススクール 国際法務担当者育成コース(全六回)」の第二回講座を兼ねております。そのため、そちらの申込者と一緒に本講座を受講いただく形となります。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
法務ニュース コンプライアンス
第80回MSサロン(大阪会場)
2017年04月19日(水)
19:00 ~ 21:00
2,000円
大阪府大阪市北区
講師情報
濵田雄久
1995(平成7)年4月 大阪弁護士会に弁護士登録、なにわ共同法律事務所入所
2004(平成16)年8月 アメリカ合衆国Duke University School of Lawに留学
(翌年法学修士号取得)
2005(平成17)年8月 シンガポール共和国 Rajah & Tann 法律事務所において研
修開始
2006(平成18)年3月 ニューヨーク州弁護士登録
2006(平成18)年8月 なにわ共同法律事務所復帰
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、 「消費者契約法・特定商取引法の改正」です。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)

あわせて抑えておきたい関連記事

「ビッグデータ活用へ -個人情報保護法改正案」... Suica事例  ビッグデータについては、「総務省 情報通信技術の進展により、生成・収拾・蓄積等が可能・容易になる多種多量のデータ」として平成24年政策白書でも取り上げられている。このビッグデータの活用例として有名になったのは、Suica(スイカ)に記録されたデータの利用である。  JR東日本は、...
違法マンションに市が是正命令、建築基準法による規制... はじめに 建築確認の段階では7階建てとされていたマンションが、完成時には9階建てになっているとして大阪府池田市は8日、所有者に是正命令を発しマンション玄関付近に広告書を掲示していたことがわかりました。違法建築物にはどのような措置が講じられることになるのか。建築基準法の規制について見ていきます。...
トヨタが仕事と子育ての両立を支援 事案の概要   トヨタ自動車は9月から、生産現場で働く育児中の従業員を対象に夜間勤務を免除し、勤務時間を早朝から夕方までの日中の勤務に限定する新たな制度を導入することとなった。  この制度では就学前の子供を持ち、他に世話をする家族がいないことを条件として、生産現場で働く従業員の夜間勤務を免除するも...