クラウドサービスを利用した電子契約の有効性 ~ 法務省Q&Aを踏まえて ~
2020/07/22   契約法務, 民事訴訟法

GBL研究所理事 浅井敏雄[1]

 【目 次】

はじめに

法務省Q&Aを踏まえた結論

上記結論の理由・詳細

電子契約への移行上の留意点

クラウドサービスを利用した国際電子契約

 

■ はじめに

新型コロナウィルス感染が収束しない中、企業においては益々在宅勤務(テレワーク)への流れが拡大しています。そこで、従来、オフィスで行われてきた紙の契約書への押印業務もクラウドサービスを利用した電子契約に置き換える企業も増えています。しかし、日本企業では、長年紙の契約書に社長印・役職印など(以下「社印」と総称)を押印するという慣行が定着しており、クラウドサービスを利用した電子契約への移行に不安を感じまたは経営陣などへの説明に苦労する例もあるかと思われます。

このような中、法務省は、6月19日、「テレワークの推進の障害となっていると指摘されている,民間における押印慣行について,その見直しに向けた自律的な取組が進むよう」『押印についてのQ&A』(「法務省Q&A」)を公表しました。

本稿では、法務省Q&Aを踏まえ、クラウドサービスを利用した電子契約の法的有効性と実務上の留意点について解説します。

 

■ 法務省Q&Aを踏まえた結論

最初に、法務省Q&Aを踏まえた結論を以下に記します。その理由および詳細は後述しますが、長文なので、必要に応じ適宜参照して下さい。

(1) 契約書に社印がない場合でも、契約当事者が合意によりその契約書を作成したこと(「真正な成立」または「成立の真正」)は、社印の有無のみで判断されるものではなく、契約書の成立経緯を裏付ける資料など、証拠全般に照らし裁判所が判断する。社印以外の方法によっても契約書の真正な成立を立証することは可能であり、社印がなければ立証できないものではない。

(2) 電子契約締結用のクラウドサービスで、PDF形式などの契約書について、①その改ざんの防止・検出・記録機能がありかつ②契約当事者の署名名義人(社長・本部長・部長など)が署名したことを同人の社用メールアドレスなどにより証明できるものに関しては、それらの事実により電子契約の真正な成立を立証することが十分可能である。また、契約の真正な成立の立証において、このような電子契約は、社印のある契約書に劣ることはない。

(3) 但し、クラウドサービスを利用した電子契約に移行する場合には、社印の存在とその物理的管理を前提とした契約締結管理はできない。会社の役員・従業員が会社の規定に違反し無断で他社と電子契約を締結してしまうリスクを予防・軽減するための措置が必要となる。

(4) なお、電子契約の有効性に関し詳しく論じられることが多い民訴法および電子署名法上の真正な成立の推定は、一般の企業間契約では適用できるケースが限定され、また、上記の結論を左右しないので、これをクラウドサービスを利用した電子契約への移行の可否判断の際に考慮する必要はない。

 

■ 上記結論の理由・詳細

以下、法務省Q&Aの「問」の順にその回答を適宜抜粋引用(『 』内)しつつ、上記結論の理由・詳細を説明します。

 問1.契約書に押印をしなくても、法律違反にならないか。

『契約は当事者の意思の合致により、成立するものであり、書面の作成及びその書面への押印は、[保証契約など[2]]特段の定めがある場合を除き、必要な要件とはされていない。特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印をしなくても、契約の効力に影響は生じない。

問2.押印に関する民事訴訟法のルール[裁判での証拠としてのルール]は、どのようなものか。

『民事裁判において、[民間企業などが作成した]私文書が作成者の認識[意思]等を示したものとして証拠(書証)になるためには、その文書の作成者とされている人(作成名義人)が真実の作成者であると相手方が認めるか、そのことが立証されることが必要であり、これが認められる文書は、「真正に成立した」ものとして取り扱われる。』

民事訴訟法(「民訴法」)第228条第4項は、『裁判所は、ある人が自分の押印をした文書は、特に疑わしい事情がない限り、真正に成立したものとして、証拠に使ってよい[その成立の真正を推定してよい]という意味である。そのため、文書の真正が裁判上争いとなった場合でも、本人による押印があれば、証明の負担が軽減されることになる』。

問3.本人による押印がなければ、民訴法第228条第4項が適用されないため、文書が真正に成立したことを証明できないことになるのか。

前提として『そもそも、文書の真正な成立は、相手方がこれを争わない場合には、基本的に問題とならない。

法務省Q&Aの別の箇所(問5)で『3Dプリンター等の技術の進歩で、印章の模倣がより容易であるとの指摘もある』と述べられているように、押印ある契約書も偽造が容易になってきています。一方、電子契約のクラウドサービスで、PDF形式などの契約書について、①その改ざんの防止・検出・記録機能がありかつ②契約当事者の署名名義人(社長・本部長・部長など)が署名したことを同人の社用メールアドレスなどにより証明できるものに関しては、押印ある契約書に比較しても、そもそも「真正な成立」が争われる可能性は少ないと思われます。

『相手方がこれ[文書の真正な成立]を争い、押印による民訴法第228条第4項の推定が及ばない場合でも、文書の成立の真正は、本人による押印の有無のみで判断されるものではなく、文書の成立経緯を裏付ける資料など、証拠全般に照らし、裁判所の自由心証により判断される。他の方法によっても文書の真正な成立を立証することは可能であり(問6参照)、本人による押印がなければ立証できないものではない。本人による押印がされたと認められることによって文書の成立の真正が推定され、そのことにより証明の負担は軽減されるものの、相手方による反証が可能なものであって、その効果は限定的である(問4、5参照)。このように、形式的証拠力を確保するという面からは、本人による押印があったとしても万全というわけではない。そのため、テレワーク推進の観点からは、必ずしも本人による押印を得ることにこだわらず、不要な押印を省略したり、「重要な文書だから社印が必要」と考える場合であっても押印以外の手段で代替したりすることが有意義であると考えられる。』

電子契約については、押印がないので民訴法第228条第4項の推定が及ばないが、①それを改ざんすることは技術的に困難でありかつ改ざんの記録もないこと、および、②契約当事者の署名名義人(社長・本部長・部長など)が署名したことを同人の社用メールアドレスなどにより証明できることを主張・立証することにより、その真正な成立を立証することは十分可能と思われます。

問4.文書の成立の真正が裁判上争われた場合において、文書に押印がありさえすれば、民訴法第228条第4項が適用され、証明の負担は軽減されることになるのか。

『成立の真正に争いのある文書について、印影と作成名義人の印章が一致することが立証されれば、その印影は作成名義人の意思に基づき押印されたことが推定され、更に、民訴法第228条第4項によりその印影に係る私文書は作成名義人の意思に基づき作成されたことが推定されるとする判例(最判昭 39・5・12 民集 18 巻4号 597 頁)がある。これを「二段の推定」と呼ぶ。

この[押印ある文書について民訴法第228条第4項の]二段の推定により証明の負担が軽減される程度は、次に述べるとおり、限定的である。

① 推定である以上、印章の盗用や冒用などにより他人がその印章を利用した可能性があるなどの反証が相手方からなされた場合には、その推定は破られ得る。

② 印影と作成名義人の印章が一致することの立証は、実印である場合には印鑑証明書を得ることにより一定程度容易であるが、いわゆる認印の場合には事実上困難が生じ得ると考えられる(問5参照)。』

企業同士の契約で考えた場合、相手方の押印が代表取締役印でありかつそれについての印鑑証明書を取り付けている場合には容易に「印影と作成名義人の印章が一致することが立証」でき二段の推定を受けられますが、その印鑑が無断使用されたまたは3Dプリンターで偽造された可能性を示す証拠が相手方から提出された場合は二段の推定は破られ得ます。更に、一般的には、相手方の代表取締役印の印鑑証明書を取り付けていない場合または押印が本部長印・部長印などである場合の方が多く容易には二段の推定を受けることはできません(次の問5の問題)。

 電子契約について「二段の推定」と同等の推定を受けるには、「電子署名及び認証業務に関する法律」(「電子署名法」)に従い、以下の全ての条件を満たさなければなりません。[3]

① その電子契約の内容に改変が行われていないかどうかを確認できること(2条1項二号)。

② その電子契約の署名名義人(社長・本部長・部長など)による「電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)」が行われていること(3条/2条1項一号)。

電子契約のクラウドサービスで、PDF形式などの契約書について、その改ざんの防止・検出・記録機能があるものについては、①の条件は問題ありません。しかし、②の条件については以下のような問題があります。

(a) 括弧内の「物件」を、その文言上、電子署名法成立当時(2000年)想定されていたと思われるICカードとICリーダーに限定されると解する[4]と、現在普及している多くのクラウドサービスではICカードとICリーダーを使用しないので、この条件をそもそも満たすことができません。

(b) 「物件」はICカードとICリーダーに限定されない(例えば「符号」以外の情報も含まれる)と解した場合、電子署名法第4条以下に定める認定認証業者により発行された署名名義人の電子証明書付き電子契約であれば②の条件も満たすと思われます。しかし、この電子証明書は、取得に費用と時間がかかること、署名名義人となる社長・本部長・部長などが取得しなければならないことなどから一般の企業ではあまり利用されていないと思われます。このような理由もあり、クラウドサービスの中にはそのサービス提供者が顧客である契約当事者間の電子契約に電子署名するいわゆる「立会人型」のサービスもあります。しかし、これは契約当事者の署名名義人による電子署名ではないので②の要件充足を否定される可能性があります[5]

結局、電子契約の成立の真正については電子署名法上の推定を受けることもなかなか困難と言えます。

問5.認印や企業の角印についても、実印と同様、「二段の推定」により、文書の成立の真正について証明の負担が軽減されるのか。

『「二段の推定」は、印鑑登録されている実印のみではなく認印にも適用され得る(最判昭和 50・6・12 裁判集民 115 号 95 頁)。』 『押印されたものが実印でない(いわゆる認印である)場合には、印影と作成名義人の印章の一致を相手方が争ったときに、その一致を証明する手段が確保されていないと、成立の真正について「二段の推定」が及ぶことは難しいと思われる。そのため、そのような押印が果たして本当に必要なのかを考えてみることが有意義であると考えられる。なお、3Dプリンター等の技術の進歩で、印章の模倣がより容易であるとの指摘もある。』

一般企業同士の契約では、相手方の押印が代表取締役印であってもその印鑑証明書を取り付けていない場合または押印が本部長印・部長印などである場合が多いと思われます。これらの場合には過去に同じ印鑑での契約締結例があるときはその印影との同一性を証明することなどが必要となります(但しその時でも印鑑偽造を主張される可能性はある)。相手方と初めての契約の場合は、契約書上の「印影と作成名義人[相手方の本部長・部長など]の印章[役職印]の一致」の立証に関し事実上困難が生じ得ると考えられます。

 問6.文書の成立の真正を証明する手段を確保するために、どのようなものが考えられるか。

『次のような様々な立証手段を確保しておき、それを利用することが考えられる。

① 継続的な取引関係がある場合

取引先とのメールのメールアドレス・本文及び日時等、送受信記録の保存(請求書、納品書、検収書、領収書、確認書等は、このような方法の保存のみでも、文書の成立の真正が認められる重要な一事情になり得ると考えられる。)

② 新規に取引関係に入る場合

契約締結前段階での本人確認情報(氏名・住所等及びその根拠資料としての運転免許証など)の記録・保存

本人確認情報の入手過程(郵送受付やメールでの PDF 送付) の記録・保存

文書や契約の成立過程(メールや SNS 上のやり取り)の保存

③ 電子署名や電子認証サービスの活用(利用時のログインID・日時や認証結果などを記録・保存できるサービスを含む。)

上記①、②については、文書の成立の真正が争われた場合であっても、例えば下記の方法により、その立証が更に容易になり得ると考えられる。また、こういった方法は技術進歩により更に多様化していくことが想定される。

(a) メールにより契約を締結することを事前に合意した場合の当該合意の保存

(b) PDFにパスワードを設定

(c) (b)のPDF をメールで送付する際、パスワードを携帯電話等の別経路で伝達

(d) 複数者宛のメール送信(担当者に加え、法務担当部長や取締役等の決裁権者を宛先に含める等)

(e) PDFを含む送信メール及びその送受信記録の長期保存 』

 上記の例からも、クラウドサービスを利用した電子契約では、その電子契約の改ざんがなされていないことの立証に加え、相手方の署名名義人(社長・本部長・部長など)が署名したことの立証手段があることが必要なことが分かります。

 この観点からは、例えば、以下のような条件を満たすクラウドサービスが適切と思われます。

①契約当事者により署名された電子契約ファイル(PDF等)について、その改ざんの防止・検出・記録機能が提供されており、裁判における証拠提出時に改ざんがないことを立証できること

②電子契約のファイル(PDFなど)をクラウドサービス提供事業者のサーバにアップロードした後最終的に両当事者の署名名義人による署名が完了するまでのルート・関与者がその関与者の社用メールアドレスなどにより設定できること。

(ルート・関与者の例) (1) 自社内の契約締結稟議申請者(例:ビジネス部門担当者)によるアップロード・承認申請⇒中間承認者(例:ビジネス部門部長、法務部担当者)による承認⇒自社署名名義人(例:ビジネス部門本部長)による署名⇒(2) 相手方担当者⇒相手方中間承認者⇒相手方署名者(内容は自社での手続と同様)。

③上記②のルートにより両当事者の署名が完了した後、クラウドサービス提供事業者から上記ルート(履歴)に関する報告書が、署名済み電子契約ファイルに紐づいた電子ファイルで発行されること。その報告書には、上記ルート(履歴)が、両当事者の署名名義人を含む全関与者の社用メールアドレス、日時(タイムスタンプ)・IPアドレスなどとともに表示されていること

④上記の署名済み電子契約ファイルおよび報告書ファイルが、クラウドサービス提供事業者のサーバ上に保存され、将来相手方との間で訴訟などが発生しその電子契約の成立の真正を立証する必要が生じた時点で再取得でき、両ファイルとこの保存・再取得の事実を、電子契約の成立の真正の証拠として提出できること。従って、ある程度長期間(例:契約上の債権債務の消滅時効到来まで)、そのクラウドサービスが継続される見込みがあること。

⑤ 自社の役員・従業員が無断で電子契約を締結することを防止する機能[6]が提供されていること(例:会社が設定したルートを経由することなく相手方に電子契約の署名リクエストを送信できない機能、自社ドメインを含むメールアドレスを用いてそのクラウドサービスに利用登録できない機能など)。(*)

⑥ 監査部門などが役員・従業員によるクラウドサービスの利用状況を監視し社内規程に違反した電子契約の無断締結を発見できる機能が提供されていること。(*)

 

■ 電子契約への移行上の留意点

電子契約への移行に当たっては、適切なクラウドサービスを選定することは当然ですが、他に以下のような事項にも留意する必要があります。

(1) 電子契約無断締結の防止

企業における従来の紙の契約書への社印押印については、通常、その企業で契約書の押印に用いることができる社印に関し、「印章管理規程」、「捺印規程」などで、各社印の押印対象文書、社印の保管方法(金庫での保管など)、決裁権限とリンクした捺印手続などが定められています。また、社印は物理的な存在であり、通常、金庫などに施錠の上保管され、また、その実際の管理および捺印作業は、契約書の押印欄に契約締結名義人として記載される代表取締役、本部長、部長などではなく秘書その他の従業員であることが多いと言えます。従って、これら契約締結名義人であっても社印を簡単には不正使用できないようになっています。

しかし、クラウドサービスを利用した電子契約に移行した場合には、仮に、会社の役員・従業員が会社の規定に違反し無断で他社と電子契約を締結したとしても外部からは発見が困難で不正に会社の契約が締結されるリスクが高まる可能性があります。

従って、従来と同等レベルの不正防止を図ろうとすれば、例えば、以下のような措置が必要と思われます。

(考えられる防止措置の例)

① 上記(*)のような、自社の役員・従業員が無断で電子契約を締結することを防止・監視できる機能が提供されているクラウドサービスを選択すること。

クラウドサービスを利用した電子契約向けに従来の「印章管理規程」、「捺印規程」に相当する社内規程を制定し、利用するクラウドサービスの指定および限定、適用対象契約の範囲、クラウドサービスを利用するためのID、パスワードなどの管理、決裁権限とリンクした署名手続、規程違反に対する懲戒などを定めること。

③クラウドサービスを利用して電子契約を締結する場合には、事前に、契約の相手方に対し、利用するクラウドサービス、自社側におけるルートなどを通知し、それ以外の契約署名リクエストには応じないことを含め、電子契約による契約締結に同意を得ること。

④クラウドサービスを利用した電子契約を適用する契約の範囲については、比較的低リスクの契約(例:秘密保持契約)から適用を開始し、運用状況を見ながらよりリスクの高い契約に対象を広げること。

なお、クラウドサービスを利用した電子契約に使用する社用メールアドレスとしては、通常業務に使用している社用メールアドレスとは別に、クラウドサービスを利用した電子契約専用の社用メールアドレスを割り当てることも考えられます。これによる利点は次の通りです。

(a) 例えば、一定規模以上の会社であれば、社長印の捺印作業は社長自身が行うことはなく、通常は総務部などが行う。クラウドサービスを利用した電子契約でこれと同等のことを実現しようとすれば、会社が電子契約専用の社長名義メールアドレスを総務部に割り当てることが考えられる。

(b) クラウドサービスを利用した電子契約には会社が割り当てる専用のメールアドレスのみを使うことにすれば、他の業務のメールと混在することはなく、監査部などが監査するのに適する。

(2) 電子契約での契約締結を許容する条項の追加

電子契約は従来の押印ある契約書に比較しまだ一般化しているとは言えません。従って、将来、相手方から、例えば、クラウドサービスからの電子契約署名リクエストは単に交渉中の契約案確認のため送信されたものと信じその確認行為は確かにしたが、最終的には押印ある契約書で契約を締結することが予定されていたのであり、電子契約は無効であるなどと主張される可能性が皆無とは言えません。

そこで、このような電子契約での契約締結の合意を否定する主張を封ずるためには、米国のクラウドサービス提供事業者などが推奨している条項[7]などを参考にその契約自体に下記例のような条項を追加することが考えられます

両当事者は以下の事項に同意する。

(1) 本契約が電子的形態により電子的に署名され得ること。

(2) 上記(1)により両当事者が署名した電子的形態の本契約は、法的に有効であり、かつ、裁判において本契約が両当事者の合意により成立したことの証拠として有効であること。

(3) 相手方署名者の署名権限

押印ある契約書と同様、クラウドサービスを利用した電子契約においても相手方の署名名義人に相手方企業のために契約を締結する権限があることが必要です。従って、押印ある契約書と同様、必要に応じその権限の有無を確認する必要があります。

 

■ クラウドサービスを利用した国際電子契約

この点については、以下を参照して下さい。

浅井敏雄「Q&Aで学ぶ英文契約書の基礎 第27回 - クラウド上での国際契約締結」 2020年6月15日, リーガル・ビジネススクールONLINE, More-Selections

 

【注】

―――――――――――

[1] 一般社団法人GBL研究所理事/UniLaw 企業法務研究所代表

[2] 【日本法上書面(公正証書を含む)が必要な契約】 民法(465条の6:個人根保証契約) 借地借家法関係(22, 23(3),38(1),39)、割賦販売法関係(4)、宅地建物取引業法関係(34の2, 37(1))、任意後見契約に関する法律関係(3)等。なお、民法(466:保証契約)、建設業法(19:建設工事請負契約)は電子契約でも可能。下請代金支払遅延等防止法(3:書面交付義務)も一定条件下で電子化可能(3(2))。税法上保存すべき国税関係書類としての契約書については一定条件下で電子契約を保存すれば足りる(「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」(電子帳簿保存法4(3))。(参考)国税庁「電子帳簿保存法関係」。なお、首相官邸「裁判手続等のIT化検討会」では電子契約の取扱いも議論されているようである。

[3] 【電子署名法上の推定】 (参考)宮川賢司、望月亮佑「電子契約・電子署名の活用に関する諸問題-テレワーク・在宅勤務における利用拡大に備えて」 2020年6月 AMT Newsletter, アンダーソン・毛利・友常法律事務所

[4] 【「物件」を、ICカードとICリーダーに限定されると解する説】 (参照)日本組織内弁護士協会「電子署名法(2000年)改正提言」 2020年5月12日, 内閣府第10回 成長戦略ワーキング・グループ議事次第,資料1-1-1)

[5] 【立会人型クラウドサービスと電子署名法第3条の推定】 例えば、クラウドサインを運営する弁護士ドットコム(株)の「クラウドサインによる電子契約の締結等に関する説明書」によれば、クラウドサインでは、同社による電子署名がユーザ企業と相手方の間の電子契約になされる。従って、同社は、保守的に解釈すれば、この電子契約の成立の真正について電子署名法第3条による推定は受けないとする。しかし、同社は、仮にこの推定を受けないとしても、クラウドサインにおいては、電子契約に対して同社がその締結フローの各段階において電子署名を付与することにより、契約成立の事実および改ざんのないことが証明されるとする。

[6] 【無断で電子契約を締結することを防止する機能】 (参考)『電子契約のフレキシビリティとリスクマネジメントを両立—「ビジネスプラン」のご提案』 2019/02/28, クラウドサイン, 弁護士ドットコム株式会社

[7] 【電子契約を利用する合意の条項例】 次の資料より引用:Adobe “Electronic signatures in the United States - Legal considerations and best practice” (原文条項例)"The Parties agree that this Agreement may be in electronic form and electronically signed. The Parties agree that the electronic signatures appearing on this Agreement in electronic form are the same as handwritten signatures on a paper agreement for the purposes of legal validity, enforceability and admissibility."(訳:両当事者は、電子的形態の本契約上の電子署名が、法的有効性、法的強制力および証拠としての許容性に関し、紙の契約上の手書き署名と同じであることに同意する。)

 

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