障害を持った従業員に適切な対応を

はじめに

 平成28年7月27日、厚生労働省が、平成27年度「使用者による障害者虐待の状況等」を公表しました。公表された調査結果のポイントと、障害をもった労働者を雇用する使用者として気をつけるべき点を検討していきたいと思います。

厚生労働省ウェブページ
平成27年度「使用者による障害者虐待の状況等」の結果を公表します

平成27年度 使用者による障害者虐待の状況

・虐待が認められた障害者は970人(前年度より100.8%増加)
・虐待種別は、身体的虐待73人、性的虐待10人、心理的虐待75人、放置等による虐待15人、経済的虐待855人。
・虐待を行った使用者は519人。
 使用者の内訳は、事業主450人、所属の上司48人、所属以外の上司2人、その他19人
・業種別では、製造業が最多で192件(37.9%)、次いで医療・福祉業が106件(20.9%)。
・事業所の規模別では、5~29人規模の事業所に被虐待者が522人(53.8%)と最も多く、続いて30~49人の規模の事業所の169人(17.4%)が多い。
 50人未満の規模の事業所に780人(80.4%)と多くの被虐待者が見られる。

注)
※ 「放置等による虐待」とは、障害者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、当該事業所に使用される他の労働者による前三号に掲げる行為(身体的虐待、心理的虐待、性的虐待)と同様の行為の放置その他これらに準ずる行為を行うこと。
※ 「経済的虐待」とは、障害者の財産を不当に処分することその他障害者から不当に財産上の利益を得ること。賃金不払いも含まれます。
※ 平成26年度までは、賃金不払事案の労働者の中に、障害者と障害者以外の労働者が含まれている場合は、障害者に対する賃金不払いを経済的虐待として計上していませんでしたが、平成27年度からは、賃金不払事案の労働者の中に、障害者と障害者以外の労働者が含まれている事案についても、障害者に対する賃金不払いを経済的虐待として計上するようにしたため、上記のとおり経済的虐待が昨年度の2倍に大きく増加する結果となっています。

注意すべき虐待の具体例

■心理的虐待の例
障害種別:知的障害
上司から「お前、何回言わせるんだ」、「はい、はい、はい」と耳元でせかすように大声で言われる等の叱責を受けた。工場長へ相談すると、自分への叱責は無くなったが、他の障害者に対して同様の叱責をしていることがわかった。

■身体的虐待と心理的虐待が認められた例
障害種別:発達障害
職場の上司を含む同僚から、「ボケ!」、「お前がいなくなれば楽になる」と暴言を吐かれる。頭を拳やヘラで叩かれる。挨拶の仕方が悪いといって就業時間後に長時間残され叱責された。

■放置等による虐待の例
障害種別:知的障害
職場の同僚から暴言を受けたり、乱暴な口調ですごまれたりしたが、所長に相談しても対応してもらえなかった。
労働局が県庁や市役所とも連携の上、合同で訪問調査を実施したところ、所長は、障害者からの相談を受けた後、業務多忙を理由に、具体的な対策を講じていなかったため、通報内容について改善が見られないことを認めた。

■経済的虐待の例
障害種別:知的障害
障害者の約定賃金(時間額)が、地域最低賃金を約300円下回っていた。
労働局が臨検監督を実施し、賃金台帳を確認したところ、過去数年にわたり、最低賃金未満の賃金を支払っていたことがわかり、指導を行った。
虐待の理由は、法の不知から、障害者であれば最低賃金を支払う必要はないと考えていたことである。

コメント

 上記の調査結果では、従業員50人未満の小規模事業所での経済的虐待が多い結果となりました。障害者に対する虐待の5類型のうち、労務において特に注意すべきなのが、経済的虐待であるといえます。故意に限らず勘違いにより賃金の未払いが生じ、それが経済的虐待と判断される場合もあります。したがって、小規模事業所を抱えている企業においては、事業所長をはじめ、労務担当者への情報提供、労働契約の見直しなどが必要となるでしょう。
 
 また、虐待の具体例で挙げたとおり、仕事上の注意であっても、荒々しく執拗な態様による叱責は、障害者自身が虐待と感じたり労働局により心理的虐待と判断されることがあるため、注意すべきといえます。上司や同僚など障害のない労働者への意識喚起や対応の徹底を行い、快適な労働環境を維持、改善するべきであるといえるでしょう。
 
 さらに、虐待の相談を受けた際に十分な対応をしないこと自体も、放置等による虐待と判断され得ます。所長等事業所の代表者への注意喚起をすること、さらに障害者に限らず社内ハラスメントの相談窓口を充実させ、迅速な対応ができるような体制を取ることが今後必要になると考えられます。

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