ゴーン氏役員報酬25億円か、報酬規制違反について

はじめに

 日産前会長カルロス・ゴーン容疑者の昨年度の役員報酬は25億円であった可能性が報道されております。日産自動車の株主総会で決定された報酬総額は30億円とのこと。今回は会社法の役員報酬規制とその違反について見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、カルロス・ゴーン容疑者は現在、金融商品取引法の有価証券報告書虚偽記載の容疑で逮捕・勾留されております。2015年3月期までの5年間の役員報酬99億9800万円を49億8700万円として計上した有価証券報告書を関東財務局に提出していたとされております。過小計上した残りの50億円については退職後の顧問料などの名目で受け取る予定の先送り額ではないかとの報道もされており、昨年度の報酬は記載されていない分も含め約25億円であったのではないかとのことです。日産自動車の株主総会で決定されている全取締役の報酬総額は30億円とされます。

会社法上の報酬規制

 会社法361条1項によりますと、「取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益」については、その額や給付物の内容、算定方法等を定款か株主総会で決定しなくてはならないとしています。取締役が自らの報酬を決定していては過剰に取りすぎてしまい、会社や株主の利益を損なう可能性があるためです。いわゆるお手盛りの弊害と言われます。職務執行の対価としての性質があれば退職慰労金やストックオプションも「報酬」にあたるとされております(最判昭和39年12月11日)。

報酬規制に関する判例

 報酬の決定に関して判例は、報酬の総額の最高限度額を株主総会で定めれば、個々の取締役に対する具体的な支給額は取締役会が決定できるとしています(最判昭和60年3月26日)。一般的には代表取締役が決定している場合が多いと言えます。逆に定款や株主総会で報酬総額が決定されなければ、具体的な報酬請求権は発生せず、取締役は会社に請求できないとされます(最判平成15年2月21日)。また一度具体的な報酬額が決まれば、それは会社と取締役との契約となり双方を拘束し、会社が一方的に報酬額や退職慰労金の額を減額や排除することはできないとされます(最判平成4年12月18日)。

報酬規制に違反した場合の効力

 それでは株主総会で決定された報酬総額を超えて支給された場合、すなわち会社法361条に違反してなされた報酬の支給の効力はどうなるのでしょうか。この点について参考になる裁判例として、361条1項の趣旨はお手盛りを防止し、報酬額の決定を株主の判断に委ねるものとし、総株主が同意している場合など株主総会決議を経たと同視できる場合には趣旨に反せず有効としたものがあります(東京地裁平成25年8月5日)。つまり総会決議無く報酬が支払われていることを全株主が知りつつ異議を述べなかった等の事情があれば株主総会決議と同視できるということです。報酬総額の枠を超えた場合も同様に、その事実を株主が認識しつつ異議を述べなければ有効とされる可能性があると言えます。

コメント

 本件でゴーン氏の実際の役員報酬は約25億円であり、全役員に支払われた報酬総額は株主総会で決定された30億円を超えていると言われております。これが事実であった場合、報酬規制に違反した違法な報酬となり、事後的にも株主が同意するといった特別な事情が無い限り無効とされる可能性があります。無効な部分については不当利得として返還が必要になってくるものと考えられます。海外の有名自動車メーカーのCEO等が受け取っている役員報酬と比較すれば、ゴーン氏の報酬25億円は過剰な額とも言えないとも思われますが、日本では役員報酬についてはかなり厳格な法規制が置かれております。役員報酬の決定は会社法だけでなく金商法や各種税法等にも留意して行うことが重要と言えるでしょう。

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