日立国際のTOBが成立、株式公開買付とは

はじめに

米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KRR)が日立国際電気に対して行っていたTOBが成立していたことがわかりました。過去2回にわたって買付価格を引き上げる異例のTOBがようやく終結となります。今回は金商法が規制する株式公開買付について見ていきます。

事案の概要

報道などによりますと、今年4月、KKRと日立製作所はKKR傘下の特別目的会社であるHKEホールディングス合同会社が日立製作所の子会社である日立国際電気に対しTOBを実施する旨発表しました。TOB成立後、日立製作所が保有する日立国際株51.67%は株式併合を経て日立国際が自己株式取得を行ない、最終的にHKEホールディングスが100%保有する予定であるとされます。HKEホールディングスは今年10月12日からTOBを開始しておりましたが、日立国際の市場株価はTOB発表後から一貫して買付価格を上回っており、2度に渡って買付価格を引き上げ、応募期限も延長されておりました。そして応募期限の12月8日までに成立要件とされていた23.58%を上回る26%の応募があり成立したとのことです。

株式公開買付とは

株式を取得する場合、証券取引所といった市場で買う場合と市場を通さず買う場合があります。市場を通さずに取得する場合は、他の株主には売却の機会が提供されず、また市場よりも有利な額で取得されたり、知らない間に支配権が移動しているといった株主間の平等が害される場合もあります。そこで一定の株式取得の場合に強制されるのが株式公開買付(TOB)です。基本的には会社の経営や株価に影響を及ぼす結果となる場合に強制され、買付の目的や数量、価格、期間などを公表し、希望する株主に等しく売却の機会を与えるというものです。

公開買付が強制される場合

市場外での取得でTOBが強制される場合として、まず買付後に株式保有割合が5%を超える場合が挙げられます(金商法27条の2第1項1号)。いわゆる5%ルールと呼ばれるもので、一般的に5%以上を保有する株主は会社や株価への影響が大きいことが理由とされております。しかし5%を超える場合でも、買付相手が10人以下である「著しく少数の者からの買付」に当たる場合は例外的にTOBを必要としません(施行令6条の2第1項4号、3項)。次に買付後に保有割合が3分の1を超えることになる場合にもTOBが必要となります(金商法27条の2第1項2号)。持ち分割合が3分の1を超えていると、その株主が株主総会で反対した場合、3分の2の賛成を要する特別決議ができなくなり、支配権に大きな影響を与えることになるからです。

公開買付の手続

TOBが必要となる場合、買付を行う者は①買付の目的、②買付価格、③買付予定株式数、④買付期間等を公告し、内閣総理大臣に届出書を提出します(27条の3第1項、2項)。買付期間は20日から60日の範囲で買付者が决定します。また買付価格などの買付の条件は公告後、買付価格の引き下げや買付予定数の減少、買付期間の短縮といった買付に応募する側に不利益になる変更はできません(27条の6)。また買付価格や条件は株主間で公平、均一なものでなければならず、公開買付期間中は買付を行う者はTOBによらずに別途株式を取得することも禁止されます(27条の5)。市場外での取引の不平等、不公正を防止する趣旨からこのように規制されているということです。

コメント

本件でKKR側は今年の4月の発表で1株2503円で公開買付を行う旨発表しておりました。その後10月に1株2900円、11月に3132円と2度に渡る買付価格の変更を行う異例のTOBとなっておりました。一般にTOBは市場価格よりもある程度高値で買取価格が設定されます(いわゆるTOBプレミアム)。しかし日立国際はTOB発表時から業績好調もあって株価は買取価格を上回っており、今回のような2度の変更を経てTOB成立となりました。今後日立国際は臨時株主総会を経てHKEの100%子会社となる予定です。以上のように有価証券報告書の提出義務がある上場企業等を市場外取引でM&Aを行なう際には、一定の場合にTOBが強制されることがあります。また以前にライブドアや村上ファンドによる市場取引と併用した買付でTOBを回避する手法がなされたため現行法では実質面を重視してTOB強制の要件を判断しております。市場外買付を行う際には金融庁のHPなどでTOBが必要な案件かを随時確認することが重要と言えるでしょう。

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平成18年 慶應義塾大学経済学部卒業
平成22年 あずさ監査法人退所
平成25年 中央大学法科大学院修了
平成26年 弁護士登録(東京弁護士会)
平成27年 中央大学法科大学院実務講師就任
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1992年 京都大学法学部卒業
1994年 大阪弁護士会 登録 梅ケ枝中央法律事務所 
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Masuda Funai Eifert & Mitchell 法律事務所(シカゴ)
2002年 第一東京弁護士会 登録替 長島大野常松法律事務所
2004年 外立総合法律事務所
2012年 株式会社カービュー コーポレートリーガルアドバイザー    
2016年 法務室長
2018年 AYM法律事務所開設

弁護士会活動(2018年2月現在)
日本弁護士連合会 ひまわりキャリアサポート 委員
第一東京弁護士会 業務改革委員会 委員 

企業法務を中心とした法律事務所に長年勤務した後、2012年からインターネット系企業の法務責任者としてプラットフォームを利用したメディア・コマースビジネスについてのさまざまな法律問題をサポート。
2018年にAYM法律事務所開設 代表弁護士

主な著書
「アメリカのP&A取引と連邦預金保険公社の保護 債権管理 No.96」金融財政事情研究会
「米国インターネット法 最新の判例と法律に見る論点」ジェトロ 共著
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