日産自動車が121万台回収へ、リコール制度について

はじめに

日産自動車は2日、国内工場での不適切な検査不備問題により最大で121万台をリコールし再点検を行うと発表しました。これによる費用は約250億円に上る見通しとのことです。今回は道路運送車両法によって定められるリコール制度について見ていきます。

事案の概要

報道などによりますと、国土交通省は先月18日から29日にかけて日産自動車の工場に立入検査を実施しました。そのうち追浜、栃木など6工場で未認定の社員が完成車検査を行っていたことがわかりました。国土交通省の指針では各メーカーは社内研修を経て認定された社員が同検査を実施することになっております。同社は「リーフ」「ノート」などの21車種約6万台の引き渡しを一時停止し検査をやり直すとのことです。国土交通省は10月末をめどに経緯の詳細と再発防止策について報告を求めておりました。これを受け同社は2日、横浜市内の本社でリコールを実施し、約121万台の回収・再点検行うと発表しました。

リコール制度とは

リコール制度とは、設計や製造過程に問題があった場合にメーカーが自らの判断で国土交通大臣に事前届出を行った上で回収・修理を行う制度を言います。運輸省通達や運輸省令による運用を1994年に制度化し道路運送車両法に明文化したものです。これにより設計・製造に起因した事故や故障を防止し、排出ガスや騒音を未然に防ぐことを目的としています。メーカーや国交省が自動車の不具合に関する情報を得た場合、メーカーが調査・検討し国交省に報告します。そして設計、製作過程に起因する安全基準不適合であった場合、リコール実施決定をし、国交大臣に事前届出の上リコール実施となります。国交省はこの旨公表を行ない、メーカーは以後回収進捗について定期報告することになります。

道路運送車両法による規制

(1)改善措置の勧告
道路運送車両法63条の2によりますと、国交大臣は自動車の設計、製作過程に起因する保安基準を満たさない不備が存在するおそれがあるときには、メーカーにたいして当該基準不適合自動車を保安基準に適合させるために必要な改善措置をするよう勧告することができるとしています。これはリコールが必要であるにもかかわらずメーカーが行わない場合に適切に行うよう勧告することができるということです。これに従わない場合はその旨公表することができるとなってり(同4項)、公表後もなお「正当な理由」なく行わない場合には実施するよう命令することができます(同5項)。

(2)事前届出
メーカーがリコールを実施する際には、保安基準に適合しなくなるおそれがあること、または適合していない状態、構造、性能、その原因とそれに対する改善処置内容、ユーザーへの周知のための措置などを国交大臣に予め届け出ることになります(63条の3第1項)。これに対し国交大臣はその内容が不適切である場合には変更を指示することができます(同3項)。その後はリコールの実施状況について定期的に報告することになります(同4項)。

(3)立入検査等
国交大臣はこれらの措置に必要な限度でメーカーに対し、業務報告をさせ、または事務所、事業場に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査したり質問することができます(63条の4第1項)。またこれに際して技術的な検証を要する場合には研究所に必要な調査を実施させることもできます(64条)。

(4)罰則規定
国交大臣からリコール命令が出されたにもかかわらず行わなかった場合には1年以下の懲役、300万円以下の罰金またはこれらの併科となっております(106条の4)。リコールの事前届出を行わなかったり、虚偽の届出をした場合や、業務報告を行わなかった場合、虚偽報告の場合、また立入検査を拒んだ場合なども同様です。同時に法人に対しても2億円以下の罰金となります(111条)。

コメント

国交省の発表によりますと、日産自動車は同省の立入検査を受け、認定を受けていない者が完成検査を行っていた旨、販売登録を一時停止した旨、対象車ユーザーに対応が決まり次第連絡する旨、そして外部専門家を入れて調査を行う旨報告したとされます。そして2日、不適切検査によって販売された自動車121万台についてリコールを決定しました。国交省は業務改善、検査不備による事故がなかったか、他の車種でも問題は無かったかなど報告を求めていたことから、リコール決定を行わなかった場合には国交大臣によりリコール勧告がなされていた可能性もあります。リコールを行うとメーカーにとっては相当のコストを負担することになり、また社会的な信頼も低下するおそれがあります。それ故にしばしば不具合が発覚しても国交省に報告せず秘密裏に改修がなされることもあるといわれております(いわゆる闇改修)。しかしこれが発覚した場合には国交省からのリコール勧告や上記罰則が適用されるだけでなく、ユーザーからの信頼はより失墜することになると言えます。さらには株主からの責任追及に及ぶことも予想されます。製造業には不具合や問題は付き物と言えます。その際には法令に従って適切に処理を行うことが最善手と言えるでしょう。

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[著者情報] mhayashi

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