貧困ビジネスを食い止めろ!!-さいたま市条例制定へ-
2013/08/02 法務相談一般, 民法・商法, その他
事案の概要
さいたま市で先月5日、貧困ビジネスを規制する「被保護者等住居・生活・金銭管理サービス事業の業務の適正化等に関する条例」(以下、条例)が市議会で可決、成立した。
この条例をもって、事業者が生活保護受給者を劣悪な住宅に集めて、不当に高い料金を受け取ることを防止する。
社会福祉法の規定では、入居者5名以上の事業者には県や政令市への届出が必要とされているところ、さいたま市の条例では入居者2人以上から届出が必要と、規制範囲を拡大している。契約期間を1年以上とし、事業者には住居や食事などを提供するサービスを記した契約書の写しの提出を求める。
さらに、事業者が利用者から金銭や預貯金通帳を預かる「金銭管理サービス」を規制対象としたことは、県による条例にはなく、注目すべき事項である。
違反があった場合、自治体による立ち入り調査や氏名公表のほか、懲役や罰金も定められている。
解説
「貧困ビジネス」とは、ホームレスや派遣、請負労働者、生活保護受給者等のいわゆる「社会的弱者」を顧客とするビジネスを指し、NPO法人「もやい」の湯浅誠事務局長が提唱した言葉である。弱者の味方を装いつつも、実態は彼らを食い物にするものである。
今回条例にて規制対象となったのは、貧困ビジネスの1つである無料低額宿泊所に関するものである。無料低額宿泊所は、社会福祉法に定められた生活困窮者のための宿泊施設をいう。宿泊所は、都道府県に対する届出によって開設できるため、どんな法人格でも開設可能である。すなわち、民間の参入が容易であり、支援サービスの優劣は設置主体によって大きく異なる。そして、中には劣悪な住環境や食事を与えて、生活保護費のほとんどを天引きするといった営利目的で行われているケースも多く存在する。
条例では、「金銭管理サービス」を規制対象としている。これは、事業者が生活保護受給者の預金通帳やキャッシュカードを抑えることで、受給者の講座から「施設使用料」名目で、生活保護を搾取することを防止するためである。
コメント
生活保護受給者を食い物にして、利益をあげる貧困ビジネスを規制する方向で自治体が動いていることは喜ばしいことではある。しかし、現在は自治体への届出のみによって、誰でも施設を開設出来てしまう。そこで施設運営のガイドラインや新規参入者に関するより厳格な規定を、法規化することが望まれる。
また生活保護受給者の多くが高齢者である。そして今後、単身かつ高齢の生活保護受給者が益々増えていくことが予想される。しかし、このような方々ほどアパートなどの賃貸物件が借りにくく、貧困ビジネスが蔓延する原因の1つとなっている。単身高齢者でも入居しやすい公営住宅を整備する等、貧困ビジネスのつけいる隙を無くす方法を今後考える必要がある。
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