安愚楽牧場 民事再生を断念 破産手続き開始へ
2011/11/10 事業再生・倒産, 倒産法, 破産法, その他
概要
和牛オーナー制度が行き詰まって経営破綻した安愚楽牧場(栃木県)について、東京地裁(鹿子木康裁判長)は8日、民事再生手続きを廃止する決定をした。1カ月の異議申立期間を経て、破産手続きに移行する。安愚楽牧場は、牛をただちに売却するのが難しいとして、当面事業を存続できる民事再生手続きを進め、最終的に会社を清算する方針だった。ところが、地裁から4日に再生管財人に選任された渡辺顕弁護士らが同社の財産状況を調査した結果、牛の餌代などで資金繰りが逼迫ひっぱくしていることが判明した。資金不足で財産保全はおろか、牛が餓死する可能性もあるとして、8日付で民事再生手続きの廃止を求める上申書を地裁に提出していたのである。
和牛オーナー制度とは、繁殖用の牛に投資を募り、子牛を買い取って配当する仕組みである。同社は自社牧場や預託先牧場を全国展開し、会員は全国7万3千人超とされる。
同社の破産手続きが始まる見通しになったことについて、同制度への出資者からは8日、「手続きを進め、早く解決してほしい」「今後どうなるのか」など、いら立ちや不安の声が上がった。
雑感
今回の民事再生手続きの断念は、全国安愚楽牧場被害対策弁護団の申立てがきっかけだった。弁護団は、旧経営陣による経営の続行や、資産・経営状況の不透明さなどから、安愚楽牧場主導による民事再生を問題視し、債権者5,027人から依頼を受け、管財人が主導する管理命令の申立てをしていたのである。
このように、5,000人を超える被害者が管理命令の申立てを行なったことが大きな要因となり、これまで同牧場の民事再生手続きを認めていた東京地裁が、弁護団の主張を受け入れて方針転換をするに至った。
この点、今回の件については、旧経営陣が主導する民事再生手続よりも管財人が主導する破産手続きの方が、公平性・透明性・迅速性の点で、よりふさわしいといえる。
また、安愚楽牧場は今年8月の民事再生申請時点で、北海道や栃木、宮崎県などに計40カ所の直営牧場を持つほか、全国346戸の預託農家がある。預託料の支払いが一部滞っている農家もあり、今回の破産手続き開始がこのような預託農家にとっても救済となることが望まれる。
さらに、消費者庁は景品表示法違反の疑いで同牧場を調査中であるが、景表法違反となると、役員らが刑事罰を受ける可能性も高い。このような結果も被害者にとっての救済につながることが望ましい。
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