消費者庁がダイユーエイトに措置命令、原産国等の表示規制について
2025/11/10   コンプライアンス, 広告法務, 景品表示法, 小売

はじめに

消費者庁は5日、インターネット通販サイト「ダイユーエイト.com」を運営する「ダイユーエイト」(福島市)に対し景表法違反に当たるとして措置命令を出していたことがわかりました。
原産国の不当表示とのことです。今回は原産国等に関する表示規制について見直していきます。

 

事案の概要

報道などによりますと、不当表示があったのはネット総合ショッピングモール「Qoo10(キューンテン)」に開設されたダイユーエイトの通販サイトで、2024年10月29日~今年5月13日の間にペット用品や日用品、衛生用品など計113点についてとされます。

これらは実際には中国やタイ、フィリピンなどで生産されていたものの表示は「国内」となっており、同社が商品を仕入れる際にメーカーなどから原産国情報を得ていたが出品時に確認が不足していたとのことです。

ちなみに、消費者庁は生活用品大手「アイリスオーヤマ」のグループ会社「アイリスプラザ(仙台市)」に対しても同様の不当表示があったとして再発防止を求める措置命令を出しています。

 

景表法における原産国表示規制

景品表示法5条では、「事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない」として不当表示を禁止しています。

その1号では一般消費者に対して実際のものよりも著しく優良であると示し、自主的かつ合理的な選択を阻害する表示(優良誤認表示)を禁止し、2号では商品または役務の価格その他の取引条件について、実際のものまたは他社のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示(有利誤認表示)を禁止しています。

3号ではこれら以外に一般消費者に誤認されるおそれがある表示として内閣総理大臣が指定するものも不当表示として規制しています。

違反した場合には消費者庁から再発防止などを命じる措置命令(7条)や課徴金納付命令(8条)が出されることがあります。

なお、課徴金については3号違反については対象となっていません(8条1項カッコ書き)。以下3号の告示について見ていきます。

 

原産国に関する不当表示

景表法5条3号に基づく告示「商品の原産国に関する不当表示」(昭和48年公正取引委員会告示第34号)によりますと、商品の原産国について原則として次のような不当表示規制を置いています。

まず、国内で生産された商品について、(1)外国の国名、地名、国旗、紋章その他これらに類するもの、(2)外国の事業者またはデザイナーの氏名、名称または商標の表示、(3)文字による表示の全部または主要部分が外国の文字で示されている表示があるもので、国内で生産されたことを一般消費者が判別することが困難なものが不当表示となります。

次に、外国で生産された商品について、(1)その商品の原産国以外の国名、地名、国旗、紋章その他これらに類するもの、(2)その商品の原産国以外の国の事業者またはデザイナーの氏名、名称または商標の表示、(3)文字による表示の全部または主要部分が和文で示されている表示があるもので、その原産国で生産されたものであることを一般消費者が判別することが困難なものも同様に不当表示となります。

つまり、外国産の製品に日本の国名や国旗、地名、日本の事業者の商標などを表示して一般消費者が外国産であると判別することが困難となる場合に違法となるということです。

 

不正競争防止法による規制

不正競争防止法にも上記景表法と同様に原産地に関する誤認惹起行為が不正競争行為として規定されています。

不正競争防止法2条1項20号では「商品若しくは役務もしくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為」を禁止しています。

こちらは景表法と異なり一般消費者だけを対象とはしておらず、違反によって営業上の利益を侵害され、またはされるおそれがある者は差止請求や損害賠償請求ができるとされます(3条1項、4条1項)。

また刑事罰として5年以下の拘禁刑、500万円以下の罰金またはこれらの併科が規定されています(21条2項1号)。さらに法人に対しても3億円以下の罰金が両罰規定として規定されています(22条1項3号)。

 

コメント

本件でダイユーエイトは113の商品について、アイリスプラザは101の商品について、原産地に係る表示として「国内」と表示することにより日本が原産国であるかのように表示していたとされています。消費者庁は商品の原産国に関する不当な表示2項に該当するとして措置命令を出しました。

以上のように景表法では優良誤認表示、有利誤認表示と並んで告示で指定されている原産国に関する不当表示も規制の対象としています。
過去には、外国産の「カットわかめ」について「瀬戸内海産」と表示していた例で原産国に関する不当表示ではなく5条1号の優良誤認表示に該当するとした例もあります。

これらを踏まえ自社製品の表示について原産国の表示に不備や間違いはないかを確認し、社内で周知しておくことが重要と言えるでしょう。

 

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