STARTO社、ガバナンスの徹底で信用回復目指す
2025/03/04 契約法務, コンプライアンス, 会社設立, 会社法, エンターテイメント

はじめに
2024年4月に始動した株式会社STARTO ENTERTAINMENT(旧ジャニーズ)。創業以来、コーポレート・ガバナンスやコンプライアンス体制を整備し、強化してきました。
一時はテレビ局などから所属タレントの出演を拒否されたほか、会社オフィスの賃借や、金融機関からの融資も難しい状態となっていたといいます。
STARTO社として、再び性加害を引き起こさないためにガバナンスなどをどのように強化しているのか、本稿でひも解いてみます。
性加害報道後、CMクライアント数が半減
旧ジャニーズ事務所の創業者ジャニー喜多川氏による性加害問題が2023年に発覚し、元ジャニーズジュニアメンバーを中心に、約1千人が被害を申告するなどの事態となりました。
その後、ジャニーズ事務所は解体へ向かい、被害を訴えた方々などへの補償を行うため、同年10月に株式会社SMILE-UP.と社名を変更し被害者補償に専念しています。SMILE-UP.社はマネジメントや育成業務から完全に撤退し、被害者補償が終わり次第、廃業することになっています。
そんな旧ジャニーズ事務所に代わり、タレントのマネジメントを行う会社として発足したのがSTARTO社です。タレント個人や各グループと専属マネジメント契約を締結したり、タレント個人や各グループが設立する会社とエージェント契約を結ぶなどして、タレント活動をサポートしています。
しかし、世界的に報じられた性被害の実態により、会社の信用が大きく失墜したことは言うまでもありません。CMのクライアント数は半減し、NHKやテレビ東京などのテレビ局は、同社のタレントの起用を見合わせたといいます。
STARTO社が定めたガバナンス体制などについて
STARTO社はクライアント企業からの信頼を取り戻すため、組織のあり方、働き方を抜本的に見直しました。
特に力を入れたのがコーポレート・ガバナンス、コンプライアンス体制の強化です。具体的には、以下のような内容を据えています。
○コーポレート・ガバナンス体制の整備・強化
内部通報制度の整備・利用促進
・社員向け社内窓口及び社外窓口(外部法律事務所)を設置
・タレント及びジュニア向け社外窓口(外部法律事務所)を設置
ともに通報の秘密保証と不利益取り扱いの禁止を周知。
○コンプライアンス体制の整備・強化
(1) CCO(Chief Compliance Officer)の設置・業務範囲
社内規程整備、内部通報制度運用、コンプライアンス委員会設置・開催等を推進
(2)コンプライアンス委員会の設置・定期開催
CCOらが出席し、毎月第4水曜日に開催
(3)研修体制の整備・実施
社員、タレント、ジュニアそれぞれに対する研修のほか、役員及び管理職向けマネジメント研修を実施。
また、「人権尊重のための取組」の中では、性加害の被害者が多かったジュニア部門での安全対策が盛り込まれました。
・育成施設内外の防犯対策強化
・契約関係明確化と説明会実施
・保護者によるレッスン見学会の定期開催
・複数の相談・通報窓口の整備
・ジュニア向け研修の実施
・育成体制に係る人員を増強し、複数人体制を徹底
STARTO社では、2025年2月現在、ジュニアの新規加入を見合わせています。もっとも、研修施設の確保や整備が進み、子どもたちが安心して過ごせる環境が整ったとして、近く再開する見込みだということです。
このほかにも、社員の働き方改革にも取り組んでいます。まず、新卒採用などを行い、従業員数を約3割増員しています。
マネージャー業務の見直しも行われ、長時間労働を避けるためにシフト制が導入されたほか、SNS投稿の業務など一部が外部に委託される形になりました。
コメント
上述したガバナンスなどをSTARTO社が公表する1ヶ月前の2024年10月、一時タレントの起用を見合わせていた日本放送協会(NHK)や株式会社テレビ東京ホールディングスが、STARTO社所属のタレントに対して、出演を認める方針を示しました。
テレビ東京は起用再開を決定した理由として、被害者への補償金の支払いが進んでいることや、旧ジャニーズ事務所の元社長が関連会社の取締役を離れたことなどを挙げています。経営分離を適切に行っていると、テレビ東京が認識できた形です。
今後、同じ過ちを繰り返さないために会社はガバナンスなどの整備・強化を継続しています。これらの取り組みは少しずつクライアント企業からも評価され始めているようです。
STARTO社は小さな取り組みをコツコツ積み上げ、今後も信頼回復に向けていくということです。
【参考】コーポレート・ガバナンス、コンプライアンスの取組状況について(株式会社 STARTO ENTERTAINMENT)
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