労基署が月100時間以上残業の「ニチカレ」を書類送検
2025/02/13 労務法務, コンプライアンス, 労働法全般, メーカー

はじめに
滋賀県の労働基準監督署が10日、ガラス製品製造請負の「ニチカレ」を労働基準法違反の疑いで書類送検していたことがわかりました。従業員に月100時間以上残業をさせていたとのことです。今回は労基法の時間外労働規制を見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、ニチカレは2023年3~5月、40代と60代の従業員2人に1ヶ月100時間以上、2ヶ月で平均80時間を超える時間外労働や休日労働をさせた疑いがあるとされます。東近江労働基準監督署によりますと、同社は過去にも監督指導を受けていたものの、それに従わなかったとのことです。労基署は同社と同社代表取締役の男性(53)を労働基準法違反の疑いで書類送検しました。
法定労働時間と時間外労働
労働基準法では、労働者の労働時間は原則として1日8時間、週40時間が上限となっております(32条1項、2項)。これを超えて時間外労働をさせるためには労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者と書面により協定を締結し、労基署に届け出る必用があります(36条1項)。これを一般にサブロク協定と言います。また使用者は、1日の労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を労働時間の途中に与える必用があり(34条1項)、この休憩は原則として一斉に与えなければなりません(同2項)。さらに使用者は労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日も与える必用があります(35条1項)。
時間外労働の上限
これまでも取り上げてきたように、働き方改革による法改正で時間外労働には上限が設けられました。大企業では2019年4月から、中小企業では2020年4月から施行されております。まず原則として時間外労働は1月で45時間、1年で360時間が上限となります(36条4項)。これは1日の残業にすると2時間程度となります。この上限時間は従来大臣告示によって定められていたもので、違反しても行政指導の対象となるにすぎないものでした。それが法改正によって労基法に正式に規定されたということです。そして臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)にはさらにこれを超えて時間外労働をさせることができます。その場合でも、年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満、時間外労働と休日労働の合計が2ヶ月平均、3ヶ月平均、4ヶ月平均、5ヶ月平均、6ヶ月平均の全てで月当たり80時間以内、そして時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6ヶ月までとなっております。
厚労省のガイドライン
働き方改革に伴う法改正でサブロク協定に関するガイドラインも策定されております。それによりますと、サブロク協定の範囲内であっても使用者は労働者に対し安全配慮義務を負い、時間外労働・休日労働については業務の区分を細分化し、業務の範囲を明確化することを求めております。また臨時的な特別の事情がなければ月45時間、年360時間の限度を超えることができず、限度時間を超えて労働させる必用がある場合はできる限り具体的に定めることを要し、この場合でも限度時間にできる限り近づけるよう求められます。そして休日労働の日数および時間数をできる限り少なくするよう努め、限度時間を超えて労働させる労働者の健康・福祉を確保することも求められております。
コメント
本件でニチカレは従業員2人に1ヶ月100時間、2ヶ月平均で80時間を超えて時間外労働や休日労働をさせていた疑いがあるとされます。これが事実であった場合、臨時的な特別の事情がある場合でも超えることができない上限を超えていることとなり労基法違反となります。以上のように現在では労基法で明確に時間外労働の上限が規定されており、違反した場合は罰則の適用もありえます。特に月の合計100時間や複数月平均の合計80時間は時間外労働と休日労働の合計となっている点に注意が必用です。たとえば月の時間外労働が44時間でも、休日に56時間以上労働していた場合は上限を超えてしまうこととなります。今一度自社の従業員の労働時間や勤怠状況を見直しておくことが重要と言えるでしょう。
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