希少木材の密輸未遂で三木楽器の取締役を逮捕(関税法違反)
2024/07/02 コンプライアンス, 通商法関連業務, 海事・物流・貿易に関する法務, 国際商取引法, メーカー, 小売

はじめに
ワシントン条約で国際取引が規制されている希少木材を密輸しようとしたとして、楽器販売会社「三木楽器株式会社」の取締役の男が関税法違反(虚偽申告輸入未遂など)の疑いで逮捕されていたことがわかりました。
会社が購入費負担で法人も書類送検
三木楽器は、2025年に創業200周年を迎える音楽業界では知る人ぞ知る老舗企業です。大阪、関西を中心に楽器販売、音楽教室を展開しているほか、音楽イベントの企画・制作など音楽関連事業を幅広く手掛けています。
報道などによりますと、三木楽器の取締役は2024年1月30日、ワシントン条約で輸入が規制されている「ツルサイカチ属」の木材を南米・パラグアイから空輸。関西空港に2月6日に到着させた際に税関にて、“条約で規制されていない木材”と偽って輸入しようとした関税法違反(虚偽申告輸入未遂など)の疑いがもたれています。男は段ボールに木材50枚を入れて輸入を試みていましたが大阪の税関職員が検査で気がつき、発覚しました。
男は警察の調べに対し「ギターの材料として使用し販売したかった」と動機を話したほか、これまでに20~30回不正に輸入したと供述しているということです。
大阪府警は、三木楽器がこれらの木材の購入費を負担していたことから、両罰規定を適用し、法人としての三木楽器も書類送検したと報じられています。
ワシントン条約による取引規制
「絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」は1973年にワシントンで採択されたことから、通称「ワシントン条約」と呼ばれています。
この条約は、国際取引で生存を脅かされている、または絶滅のおそれがある野生動物や植物を保護する目的で制定されました。加盟国は約170カ国にのぼり、日本は1980年に批准しました。
ワシントン条約では、絶滅の恐れがある動植物の種が附属書ⅠからⅢまでに分類され、それぞれに対し、国際取引における規制が設けられています。日本では輸出貿易管理令と輸入貿易管理令が制定され、経済産業省と農林水産省の所管となっています。
ワシントン条約をめぐっては、海外からの動物を密輸したなどとして、過去にも度々ニュースとなっています。
■サル21匹密輸疑い
希少なサル21匹をタイから密輸したとして、元ペットショップ経営者が2022年10月に逮捕されました。輸入したサルたちは段ボールやスーツケースに入れられていて、鳴き声で発覚したといいます。
一部の動物に関しては、ワシントン条約だけでなく、エボラ出血熱などの感染症の病原体を媒介する恐れがあるとして感染症法でも輸入が禁止されています。
■カワウソ許可なく国外持ち出そうとした女子大生がタイ警察に拘束
2017年には、生きたカワウソ10匹を許可なく国外に持ち出そうとした疑いで、タイ警察が日本の女子大生を拘束した事案もありました。
女子大生は、カワウソを許可なく国外へ持ち出すことについて違法性の認識がなかったと話していたということです。
経済産業省によると、2019年4月から2024年3月までの5年間で、ワシントン条約を含む輸出関連での違反傾向として最も多かったのは、「法令知識の欠如(該非判定の未実施)」で、全体の28%に上ったということです。
「法令知識の欠如(該非判定の未実施)」で違反となった事例では、
(1)通関手続きを依頼した通関業者等から特段の指示や指摘がなかったことで、追加の手続きは不要と思いこみ、自社で法令確認・該非判定を行わず輸出したケース
(2)従来と異なる種類の製品を輸出する際、製品の中に条約で規制されている成分が含まれているにも関わらず、成分等を確認することなく、輸出承認なしで輸出したケース
などがあったといいます。ちょっとした思い込みなどから、期せずして条約違反を行ってしまうリスクがあるため、注意が必要です。
コメント
ワシントン条約では、動植物の個体に加えて、それらの一部分や派生物(皮・毛皮・牙、これらの加工装飾品、漢方薬・香料・化粧品)なども対象となるため、動植物に限らず製品の輸出入時には、感染症法なども含め、関連法令の丁寧な確認が必要になります。
自社の製品にどのような成分が含まれていて、それらにどのような規制が加えられているのか、事前に把握しておくことが重要です。
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