下請法違反(不当減額や返品)のコストコに勧告 ー公正取引委員会
2024/03/15   コンプライアンス, 行政対応, 下請法, 小売

下請法違反でコストコに勧告


アメリカ発祥の会員制倉庫型店「コストコ」の日本法人が下請け法違反で公正取引委員会から再発防止などを求める勧告を出されていたことがわかりました。

 

コストコが行った下請法違反の内容


公正取引委員会は3月12日、コストコホールセールジャパン株式会社において、下請代金支払遅延等防止法の第4条第1項第3号(減額の禁止)及び第4号(返品の禁止)の規定に違反する行為が認められたとして、下請法第7条第2項の規定に基づき勧告を行ったと発表しました。

コストコホールセールジャパン株式会社に対する勧告について(公正取引委員会)

コストコは、販売する総菜やケーキなどの製造を下請事業者に委託していますが、それらの商品を店舗で値引きして販売する際、値引き分の一部を下請事業者に負担させるなどしていたということです。

負担を強いられていたのは、20の下請事業者で、減額した支払代金は約3350万円にのぼるといいます。こうした違反行為は、およそ2年間にわたり続けられたということです。

このほかにも、新規店舗を出店するにあたってのプロモーションとして行われた試食や値引き販売についても負担を下請事業者に要請しており、中には、初回発注分を全額負担した企業もあったといいます。

加えて、下請事業者から商品の納品を受けた際、品質検査を行っていないにもかかわらず、「品質に問題がある」として、11の下請事業者に対し商品の引き取りを命じており、返品した商品の下請代金相当額は総額199万8476円にのぼったといいます。

なお、コストコは、2月16日に下請事業者に対し、減額分や返品分の代金を支払い済とのことです。

勧告を受け、コストコホールセールジャパンは「この度の勧告を真摯に受け止め、下請法の要件を完全に遵守するため、公正取引委員会の勧告に従い業務の改善に努めてまいります」とコメントを発表しています。

重要なお知らせ(コストコホールセールジャパン株式会社)

 

下請法が規定する「減額の禁止」


下請法第1項第3号では、下請事業者に責任がないのに発注時に定められた金額から一定額を減じて支払うことを全面的に禁止しています。
仮に、下請事業者との合意がある場合でも、値引き・協賛金などの減額の名目や方法、金額の多少に関わらず下請法違反となります。
具体的には、以下の内容の場合に減額の禁止に該当すると定められています。

① 単価の引下げ要求に応じない下請事業者に対して、あらかじめ定められた下請代金から一定の割合又は一定額を減額すること
 
② 「製品を安値で受注した」又は「販売拡大のために協力して欲しい」などの理由であらかじめ定められた下請代金から一定の割合又はー定額を減額すること
 
③ 販売拡大と新規販売ルートの獲得を目的としたキャンペーンの実施に際し、下請事業者に対して、下請代金の総額はそのままにして、現品を添付させて納入数量を増加させることにより下請代金を減額すること
 
④ 下請事業者との間に単価の引下げについて合意が成立し単価改定されたが、その合意前に既に発注されているものにまで新単価を遡及して適用すること
 
⑤ 手形払を下請事業者の希望により一時的に現金払にした場合に、その事務手数料として,下請代金の額から自社の短期調達金利相当額を超える額を減ずること
 
⑥ 下請事業者と合意することなく、下請代金を銀行口座へ振り込む際の手数料を下請事業者に負担させ下請代金の額から差し引くこと
 
⑦ 消費税・地方消費税額相当分を支払わないこと
 


下請代金支払遅延等防止法ガイドブック ポイント解説 下請法(公正取引委員会・中小企業庁)

 

下請法が規定する「返品の禁止」


下請法第4条第1項第4号では、下請事業者に責任がないのに発注した物品等を受け取った後に返品することを禁止しています。コストコのケースのように、受入検査を実施せずに不良品が見つかったとして返品したり、受領から6か月を超えて返品することは問題となるということです。
そのため、納品を受けた企業は、注文した商品が届いているのか、汚れていないか、破損していないか、個数に問題がないかなどをなるべく早期に確認する必要があります。

 

コメント


続発する下請法違反の摘発。近年、公正取引委員会は積極的に法曹資格者を採用する等して調査体制を強化しているといわれています。また、下請法違反事案では、契約書をはじめ、取引内容を示す書面上に下請法違反の存在を立証できる記載が残されているケースも多く、他の違反事例と比べて調査が効率的に進むケースも少なくないといいます。
そのため、書面調査を中心に、今後も公正取引委員会による取り締まりが強化されていく見通しです。

こうした摘発の増加は、下請法違反が慣習として一部まかり通っていたこれまでの日本の商慣習に大きな変化を加えると期待されています。

法務としては「自社の現場で、昔ながらの違法な慣習が存在していないか」、一度、現場に対し丁寧なヒアリングを行う必要がありそうです。

 

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