脱毛サロン大手「銀座カラー」が破産及び全店営業停止、被害者10万人超か
2023/12/21 契約法務, 事業再生・倒産, 破産法
はじめに
12月15日、女性向け脱毛サロンで知られる「銀座カラー」の運営会社が破産手続きを開始しました。これを受け、東京都や神奈川県などの首都圏を中心に全国展開する全店舗の営業が停止しています。施術待ちだった被害者は10万人を超えるという見方も出ています。
債務額58億、債権者は10万人か
「銀座カラー」の運営会社、株式会社エム・シーネットワークスジャパンの発表によると、同社は12月15日付で東京地方裁判所に対し破産手続開始を申し立て、同日付で裁判所から破産手続き開始決定を受け、管財人を指定されたといいます。
会社は事業の全てを停止。運営する「銀座カラー」の全店舗(23年3月時点で47店舗)が閉店となりました。その後、店の会員にはメールで営業停止の通知が行われたといいます。
この全店営業停止により、代金支払い済みの会員に対しても脱毛サービスを提供することが一切できなくなったということです。
会員の中には育児などで一旦中断していた脱毛の施術を再開しようとしていた人や、契約したばかりの新規利用者もいて、突然の全店閉店に対し、SNS上では不満や戸惑いの声が相次いで投稿されました。
銀座カラーの料金は、回数限定の全身脱毛でおよそ6万円、通い放題で有効期限なしのコースで40万円ほどに設定されていたということです。
報道などによりますと、会社の負債額は現時点でおよそ58億円にのぼっており、債権者は10万人を超える見込みだということです。また、現状、返済の見込みは立っていないといいます。
銀座カラーは、わかりやすい料金プランや短めの施術時間が特徴で、吉沢亮さんや川栄李奈さん・山本舞香さん・小関裕太さんなどの有名タレントを広告塔に使用しながら、多くの会員を集めていました。2020年4月期には、50店舗以上に拡大し、年収入高はおよそ125億6100万円にのぼったということです。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で一時全店舗が休業したほか、休業後も時短営業となったことで収入が減少。会社側は、キャンペーン実施や店舗統廃合などで経営の立て直しを図りましたが、エステティシャンの退職が相次いだことなども影響し、店舗運営が難しくなっていったといいます。
一方、銀座カラーからの返金措置や他店へのサービス引き継ぎがない中、サロンの経営者らが主体となり設立された「一般社団法人日本エステティック経営者会」は被害者救済に向けた呼びかけを実施。その結果、協会員ら5社が被害者に対する優遇措置の提供を申し出たということです。優遇措置の具体的な内容は会社によって異なりますが、主に割引などで支援するとしています。
一般社団法人日本エステティック経営者会(銀座カラーへ通われていた皆様へ)
破産手続開始決定及びこれに伴う会員の皆様へのサービス提供等の停止に関するお知らせ(株式会社エム・シーネットワークスジャパン)
エステティックサービス契約と破産後の対応
一般的に、脱毛サロンと会員とは、エステティックサービス契約を締結しています。多くの場合、会員側が代金を先払いし、一定期間にわたって施術を受ける内容となっています。
今回のように、契約の途中で全店舗が閉店となった場合、会員側は、未施術分の代金の返還を請求する権利を持つことになります。そのため、破産手続において、会員も債権者として取り扱われることになります。
しかし、破産手続は、会社の資産の整理・処分を行い、債権者に対して配当する手続ではありますが、配当には債権の種類に応じた優先順位があり、税金や従業員の賃金などが優先されます。会員の代金返還請求権は「その他の一般的な債権」と同様に扱われるため、税金などの優先される債権への配当後の残額に対し、債権額に応じて配当されることになります。
コメント
多くの会員に混乱と不満をもたらした銀座カラーの全店営業停止。脱毛サロンをめぐっては、女性向け脱毛サロン「シースリー」の運営会社である株式会社ビューティースリーの倒産をはじめ、2023年1月~9月の期間で判明しているだけでも9件の倒産が確認されています(帝国データバンク調べ)。
脱毛サロンのように、長期の施術提供を前提としたサービスでは、今回のような倒産による履行不能のほか、中途解約時の違約金・返金トラブルなどのトラブルに発展したケースも多く見られます。
特に、“通い放題”をうたったサービスを契約する際には、倒産によりサービスを受けられなくなるリスクがあることを念頭に置きつつ、慎重に契約内容を確認したうえで契約を結ぶ必要がありそうです。
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