自民党安倍派の政治資金パーティー問題で法改正の動き
2023/12/15   コンプライアンス, 会社法

はじめに


先月から大きく報じられている、自民党の最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)の政治資金パーティー収入をめぐる問題。12月14日には、岸田総理大臣が安倍派の4人の閣僚を交代させるなど波紋が広がっています。
こうした中、日本共産党国会議員団が「企業・団体献金全面禁止法案」を参院に提出するなど、企業等によるパーティー券購入を規制する動きが出ています。

 

還流された裏金は総額5億円にのぼるか


岸田総理大臣は12月14日、安倍派に所属する4人の閣僚の交代を決定しました。官房長官、経済産業大臣、総務大臣、農林水産大臣という重要ポストに就く4人で、後任には、安倍派以外の閣僚経験者が起用される予定です。

報道などによりますと、安倍派では政治資金パーティー券の販売について、所属議員の当選回数や役職などによってノルマが設定されており、販売ノルマの超過分に応じて、議員側にキックバックされていたといいます。

還流した現金は、派閥や議員側の収支報告書に支出・収入として記載されずに裏金化したほか、一部の議員の関連団体の支払いなどに充てられていたとみられています。

さらに、キックバックする方法とは別に、議員側がノルマ超過分の収入を派閥を介さずに裏金としてプールしていた疑いもあるなど、派閥が直近5年間で、所属議員に還流した総額は約5億円にのぼるとされています

各議員の受取額は、数百万円から5000万円単位といわれており、松野博一官房長官、高木毅国対委員長、世耕弘成参院幹事長、元五輪担当相の橋本聖子参院議員側もそれぞれ1000万円以上との報道があります。

なお、収支報告書の不記載・虚偽記載は、政治資金規正法で規制されており、違反すれば5年以下の禁錮または100万円以下の罰金が科されます(政治資金規正法第25条)。

 

企業によるパーティー券購入と寄付


政治資金規正法では、政治家が個人から寄付を受けることは認められている一方、企業・団体から政治献金を受けることが禁止されています。

そんな中、政治資金パーティーは、企業や団体などにパーティー券を購入してもらうことで、政治献金・寄付の代わりにお金を集める方法とも言われています。

このように、政治資金パーティーの開催は、政治家にとって、パーティ―の収益を自身の政治活動費に充てられるうまみがありますが、このパーティーでうまみを得るのは、政治家だけではありません。パーティー券の購入という体で政治家に恩を売ることで、政治に影響力を行使しようとする企業・団体もいます。

かつて、パーティー券購入の支出を問題視した株主と企業がトラブルとなった事例もあります。
代表的な事例が「第一生命保険株主代表訴訟事件」です。第一生命保険株式会社が他の大手生命保険会社と共に、政治資金パーティーのパーティー券を購入していたというものです。

株主の男性の主張では、会社はパーティー券を購入することで、特定の議員らと良好な関係を構築し、議員らを通じて国会で生命保険会社を擁護する発言してもらおうという意図があったとしています。
株主の男性は、「出席しないのにパーティー券を購入したことは、企業から政治家個人または資金管理団体に対する違法な 寄付にあたる」として、第一生命保険を相手取り、458万円の損害賠償を求めて訴訟を提起しました。

この裁判で争点の一つとなったのが、パーティー券の購入枚数です。政治資金パーティーに出席していたのは、実際には1〜2人だったにも関わらず、常に5枚以上のパーティー券が購入されていたといいます。

しかし、東京地方裁判所は、株主の男性の請求を棄却。「パーティー券の購入枚数や金額が特に不自然、不相応とは言えず、購入は合理的な範囲内だった」として、寄付には当たらないと結論付けました。

この判決に対し、一部の有識者からは、実際に参加しなかった分のパーティ券の購入代金の返金を求めていなかったことなどから、裁判所は「違法な寄付」と判断すべきだったという意見が出るなど、当時、大きな波紋を呼びました。

 

パーティー券規制の動き


安倍派の政治資金パーティー収入をめぐる問題が拡大する中、日本共産党国会議員団は12月5日、「企業・団体献金全面禁止法案」を参院に提出しました。内容は多岐にわたりますが、政治資金パーティー関連では、以下が提案されています。

(1)企業・団体による寄付の禁止
(2)政治資金パーティー収入も寄付とみなす
(3)寄付とみなされることで、企業・団体によるパーティー券購入も全面的に禁止。さらに、パーティー券購入の公開基準が現行の20万円超から、寄付の公開基準の5万円超に変更。

発議者の井上哲士参院幹事長は、パーティー券購入は「形を変えた企業・団体献金に他ならない」と批判し、全面的な禁止を訴えています。さらに、他党にも法案成立への協力を求めるとしています。

 

コメント


国会閉会を契機に、捜査の進展が期待される、今回の政治資金パーティー問題。政治資金規正法等の法改正が行われた場合、企業にも多大な影響を及ぼす可能性があります。今後の法案審議の動向にも要注目です。

 

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