旧村上ファンド系がコスモHDに取締役選任要求、株主提案について
2023/04/21   商事法務, 総会対応, 会社法

はじめに

 コスモエネルギーホールディングス(HD)は20日、大株主の旧村上ファンド系投資会社から、6月の定時株主総会で新たに社外取締役の選任を求める提案を受けたと発表しました。取締役候補は弁護士の渥美陽子氏とのことです。今回は会社法が規定する株主提案について見直していきます。

 

事案の概要

 報道などによりますと、コスモHDは19日、同社の株主であるシティインデックスイレブンスから今年6月に開催予定の第8回定時株主総会で、新たに社外取締役1名の選任する旨の提案を受けたとされます。提案によりますと、候補となっているのは、あつみ法律事務所代表弁護士である渥美陽子氏とされ、同氏の参加により再生エネルギー事業子会社の上場を推進していくことを提案しているとのことです。また同氏はコーポレートガバナンスに関する高い知見と経験を有しており、取締役会の意思決定の妥当性・適正性を確保するするための助言を行うことができるとされております。

 

株主提案とは

 近年海外投資ファンド等、活発に株主提案などを行う、いわゆるアクティビストと呼ばれる株主が増加しております。積極的に取締役の選任や解任を提案し、委任状勧誘や株主総会招集請求などを行っている例も見ることができます。この株主による提案は会社法上、(1)議題提案権、(2)議案提案権、(3)議案要領通知請求権の3つに分けられます。まず議題提案権は、株主が一定の事項を株主総会の目的(議題)とすることを請求する権利です(303条1項、325条)。取締役1名選任の件、定款一部変更の件といったものです。このような議題に対して、A氏を取締役に選任する、定款第○条を✕✕と変更するといった具体的な議案を提案する権利を議案提案件と言います。そして議案要領通知請求権は、このような提案した議案の要領を招集通知に記載・記録することを請求する権利を言います(305条1項、325条)。

 

株主提案の手続き

 株主提案を行うことができるのは、総株主の1%以上の議決権または300個以上の議決権を6ヶ月以上保有(公開会社)している株主となっております(303条1項、2項)。そしてこの提案は株主総会の8週間前までに行う必要があり、しかもその内容が(1)法令・定款に違反する場合や、(2)過去に10%以上の賛成が得られず、3年を経過していないものである場合は不可となっております(305条6項)。議案の要領通知請求も同じ要件となっております。適法な提案を受けた会社は株主総会の2周間前までに要領を記載・記録した招集通知を発送することとなります。なお上記議決権の保有割合については議決権を行使することができない株主の分は算入しないとされます(305条3項)。

 

令和元年改正

 この株主提案に関しては令和元年に法改正がなされており、2021年3月1日から施行されております。その内容は、取締役会設置会社の株主が議案要領通知請求を行う場合、その提案する議案の数が10を超えるときは会社はその超過分については拒絶することができるというものです(305条4項)。そして10を超えるとして拒絶することができる超過分は株主が優先順位を定めている場合を除き、原則として取締役が決めることができます(同5項)。この改正は、不当に多数の提案を行い、会社の株主総会運営を妨害することを目的とした株主提案を防止することが狙いです。なお改正案では不適切な提案自体を会社が拒絶することができる規定が盛り込まれておりましたが、会社の恣意的な運用を懸念する意見もありその部分は見送られました。

 

コメント

 コスモエネルギーHDによりますと、今回株主提案を行ったシティインデックスイレブンスは同社の株式を9.43%保有しており議決権要件は満たしていると言えます。また今年の定時株主総会の具体的な日時は不明ですが、8週間前要件も満たしているものと考えられます。以上のように一定の議決権を保有する株主は会社に対して積極的に議題や議案を提案することができ、また議案の要領を招集通知に記載するよう請求することができます。一方、濫用的な提案を抑止するため、10を超える部分については会社が拒絶することができるようになりました。今年も定時株主総会の季節が近づいてきております。株主総会の招集手続きや総会運営の流れなどと合わせて、株主提案への対応についても準備しておくことが重要と言えるでしょう。

 

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