セブンイレブンが代金請求取りやめ、優越的地位の濫用事例について
2022/12/23   コンプライアンス, 独禁法対応, 独占禁止法

はじめに
公取委は22日、コンビニ大手セブンイレブンジャパンが取引先に商品案内作成代を請求する行為を取りやめたと発表しました。優越的地位の濫用に当たる可能性があるとして調査されていたとのことです。今回は優越的地位の濫用を事例から見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、セブンイレブンジャパンの卸売業者の1つである株式会社エスアイシステム(新宿区)は、セブンイレブンより、セブンイレブンのプライベートブランドの商品案内作成代を徴収されており、その分の金額を、自身の下請事業者に支払うべき下請代金から減額していたとされます。公取委は今年9月に下請法に違反するとして、エスアイシステムに減額をしないよう勧告を行っていたとのことです。その調査の過程でエスアイシステムに対するセブンイレブンの徴収行為が発覚し、公取委は同社に対して優越的地位の濫用の観点から事実確認を行っていたとされます。これによりセブンイレブンはプライベートブランドの商品案内作成代の徴収を取りやめ、これまで徴収していた取引先にもその旨通知したと報告を受けたとのことです。
優越的地位の濫用とは
独禁法2条9項5号によりますと、自己の取引上の地位が相手より優越していることを利用して、正常な商慣習に照らし不当に取引以外の商品を購入させたり、金銭その他の経済上の利益を提供させたりする行為を優越的地位の濫用と言います。取引の相手方に対して代金の支払いを遅らせたり、一方的に減額するといった場合もこれに該当します。違反した場合には排除措置命令の対象となり(20条)、継続して行った場合には課徴金納付命令が出されることになります(20条の6)。また排除措置命令に違反した場合には罰則として50万円以下の過料が規定されております。
優越的地位の濫用の要件
独禁法2条9項5号に言う「自己の取引上の地位が相手方に優越している」とは具体的にはどのような場合を言うのでしょうか。公取委のガイドラインによりますと、市場支配的な地位またはそれに準ずる絶対的に優越した地位である必要はなく、取引の相手方との関係で相対的に優越していれば足りるとされております。その判断に当っては、両者の取引依存度や以上における地位、取引先変更の可能性、その他取引することの必要性を示す事実などを総合的に考慮するとされます。相手方の取引依存度が高い場合は、自己と取引できなくなることによって相手方の事業経営上大きな支障を来すとされます。自己の市場でのシェアが大きいほどそれは顕著になります。相手方が自己と取引するに当たり多額の投資をしているといった場合もより大きな支障を来すことになります。それ以外にも自己の商品に高いブランド力がある場合、また自己と取引することが相手方の信用の拡大につながる場合も同様です。そして「正常な商慣習」とは公正な競争秩序の維持・促進の立場から是認されるものとされ、現にそのような慣習があってもそれだけで正当化されるものではないとされます。
優越的地位の濫用と判断された具体例
優越的地位の濫用と判断された事例として、コンビニ大手ローソンが、主要納入業者60社に対し仕入割戻契約を名目に、特段の算出根拠の無い金銭の提供を要請し、また一定数を無償(会計処理の便宜上1円)で納入するよう要請していた例が挙げられます。公取委は自己の取引上の地位が納入業者に優越していることを利用して不当に経済上の利益を提供させたとして優越的地位の濫用に該当するとし、排除措置命令を出しました(平成10年7月30日勧告審決)。また三井住友銀行は融資先事業者から新規の融資または既存の融資の更新の申込を受けた際に、融資取引とは関係が無い、かねてより積極的に売り込んでいた金利スワップの購入を勧め、購入しなければ融資条件が不利になるなどと明示し購入を余儀なくされた例があります。こちらでも取引上の地位が自己よりも劣っている融資先事業者に不当な購入させたとして排除措置命令を出しております(平成17年12月26日勧告審決)。
コメント
本件でセブンイレブンは取引先卸売業者であるエスアイシステムからプライベートブランドの「商品案内作成代」を徴収していたとされます。上記ローソン事件と同様に大手コンビニ事業者はその納入業者や卸売業者よりも優越した地位にあると言え、それを利用した合理的理由のない金品の要求は違法となる可能性が高いと言えます。今回はその取引相手事業者が更に下請業者にその原資を回収しようと下請代金減額を行ったことから発覚しました。上位事業者が下位事業者に強いた不利益はさらに下位の事業者に向くことがあり得るという例と言えます。当該市場では古くからそのような慣習がある場合でも公正な競争秩序に反している場合は違法とされます。自社との取引先とこのような行為が行われていないか、今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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