竹富町発注工事でJFE元社員に有罪判決、官製談合について
2022/09/01 コンプライアンス, 行政対応, 刑事法

はじめに
沖縄県竹富町発注の工事を巡る官製談合事件で、工事の最低制限価格の教示を受け受注したとして官製談合防止法違反の罪に問われていたJFEエンジニアリング元社員に有罪判決が出ていたことがわかりました。控訴はしない方針とのことです。今回は官製談合について見直していきます。
事件の概要
報道などによりますと、2017年5月に行われた竹富町発注工事の指名競争入札で、JFEエンジニアリングの沖縄支店長代理であった被告と元営業担当であった被告らは、当時町長であった西大舛高旬被告らと共謀し、最低制限価格の教示を受けてJFE社に落札させたとされます。また2020年5月の指名競争入札でも同様に最低制限価格が記載された書面を受け、同社に落札させていたとのことです。那覇地裁は19日、JFE元社員に対し懲役10月、進行猶予3年の有罪判決を出しました。なお元町長については官製談合防止法と公競売入札妨害ならびに加重収賄で懲役3年6月、追徴金1700万円の判決が出ております。
官製談合とは
官製談合防止法によりますと、国や地方公共団体、特定法人の職員や役員等が「入札談合等関与行為」を行うことを禁止しております。入札談合等関与行為とは、(1)事業者等に入札談合等を行わせること、(2)受注者を指名または受注を希望する事業者名を教示すること、(3)受注者に有利になる秘密情報の漏洩、(4)特定の談合の幇助となっております(2条5項1号~4号)。受注者に有利になる秘密情報とは、本来公開していない予定価格や、指名業者の名称、参加業者の技術評価点などとされます。特定の談合の幇助とは、事業者の依頼を受けて入札参加者として指名したり、落札予定者に関する割付表を承認すること、また分割発注の実施や発注基準の引き下げなどを行って入札談合を行いやすくすることとされます。
違反に対する措置
入札談合等関与行為がなされた場合には、公取委から各省庁の長に対して必要な措置を要求することができ、当該要求を受けた各省庁の長による調査の実施や必要な措置の検討、調査結果等の公表などが規定されております(3条)。また当該行為を行った職員に対しては、各省庁の長等は損害賠償請求、また懲戒事由の調査についても規定されております(4条、5条)。また談合の唆しや予定価格等の教示など、入札の公正を害する行為を行った職員に対しては、罰則として5年以下の懲役または250万円以下の罰金が規定されております(8条)。またこれら以外にも入札談合等関与行為の防止に向けて、関係行政機関相互の連携・強力など自主的な努力への配慮などが規定されております(7条、9条、10条)。
摘発事例
これまでの同法による摘発事例として次のような例が挙げられます。まず日本道路公団の役員が鋼橋工事について同公団の退職者から割付表の提示を受けて承認し、また要請を受けて当初の一括発注の予定を変更して分割発注とし発注基準も15億円から10億円に引き下げた事例があります(平成17年9月29日措置要求)。また新潟市が発注する建設工事で、入札参加業者間で決定された者からの求めに応じて継続的に建設工事の設計金額等を教示していた例もあります(平成16年7月28日措置要求)。国交省の水門設備工事で発注前に事業者間の調整を円滑に行うために「世話役」と称する事業者に落札予定者の意向を示すなどしていた例もあります。
コメント
本件で竹富町の元町長は竹富町が発注する工事の指名競争入札に関して、JFE社の社員らと共謀して最低制限価格等が記載された書面を提供して同社に落札させた疑いが持たれております。奈良地裁は元社員に対して情報伝達に不可欠な窓口役を務めるなどした関与の度合いは軽視できないとして有罪判決を言い渡しました。以上のように官製談合防止法は公共入札に関して担当公務員等の不正行為を禁止しております。しかし上で触れた事例でもあるように、自治体等の関係職員OBでもある従業員が発注担当に働きかけるといった例や、事業者側の社員と共謀が認められる例が目立ちます。またこのような事例は基本的に独禁法の不当な取引制限にも該当することとなり、そちら側からの捜査で発覚することも多いと言えます。公共工事に関する事業を行う際には、担当職員への周知・啓発が重要と言えるでしょう。
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