ドワンゴ、FC2等に対する特許権侵害訴訟の控訴審で勝訴
2022/08/04   知財・ライセンス, 特許法

はじめに


株式会社ドワンゴは、同社が保有するコメント表示機能に関する特許権を侵害されたとして、FC2, INC.及び株式会社ホームページシステムを共同被告として特許権侵害訴訟の控訴審を進めていました。その結果、2022年7月20日、知的財産高等裁判所が、FC2等による特許権侵害を認める判決を下しています。そこで今回は、本件訴訟の背景と控訴審の内容について見ていきましょう。

 

今回の訴訟の経緯


株式会社ドワンゴは、有名動画配信サービス「ニコニコ動画」を運営するIT企業です。ニコニコ動画では、動画を視聴中のユーザーによるコメントがリアルタイムに画面上を流れていくのが特徴で、2011年にこの機能の実装上の仕組みを特許登録しています。

こうした中、動画配信サービス「FC2動画」「ひまわり動画」などで、ドワンゴのコメント表示機能に関する特許権が侵害されているとし、2016年11月15日、FC2とホームページシステムに対し、コメント表示用プログラムの譲渡・生産・使用等の差止め及び損害賠償等を求める訴訟を提起しました。その後、2018年には東京地方裁判所がドワンゴの請求を全て棄却しましたが(「FC2のコメント表示機能のプログラム構成がドワンゴの持つ特許権の技術的範囲に属さない」と判断されたと言われています)、ドワンゴ側はこれを不服として控訴します。

そして、今回の知財高裁での控訴審では、東京地裁の判決から一転してドワンゴ側の主張が認められ、FC2をはじめとする被告側に対して①1億円の損害賠償請求と、②FC2動画におけるコメント表示用プログラムの譲渡等の差止請求、③各サービスにおけるコメント表示用プログラムの抹消請求を認める判決を下しています。

 

サーバーが海外にあるケースにおける特許権の効力


今回のコメント表示用プログラムについては、FC2が国外のサーバーからこれを配信していたことから、当初は、「日本の法律で損害賠償請求を行うのは難しいのでは(仮に侵害行為が認められたとしても、日本の特許権の効力が及ばないのでは)」との見方もありました。

しかし、控訴審で知的財産高等裁判所は、

『数多くの有用なネットワーク関連発明が存在する現在のデジタル社会で、サーバ等の一部の設備を国外に移転するなどして容易に特許権侵害の責任を免れることを許容するのは著しく正義に反する』としたうえで、

特許発明の実施行為につき、表面上その全ての要素が日本国の領域内で完結するものでなかったとしても、実質的かつ全体的に見ればそれが日本国の領域内で行われたと評価し得るものであるならば、日本の特許権の効力を及ぼし得る

と判示し、ドワンゴ側の請求を認容しました。本判決は、サーバーが海外にあっても日本の特許権の効力が及ぶとの判断を下した画期的なものと言えます。

 

コメント


今回の特許を巡る訴訟に関しては、ドワンゴが運営するニコニコ動画のリアルタイムコメント機能が当時話題を呼んでいただけに、訴訟そのものにも大きな注目が集まっていました。もともと、ドワンゴとFC2は、FC2動画上にある違法動画(ニコニコ動画上で公式配信されているアニメ動画等)の削除を巡って争っており、さらに、“ブロマガ”という商標を巡り互いを提訴し合うなど、対立関係にありました。その背景には、「国境を超えたインターネット上では、海外でどんな違法行為が行われても、日本の法律では取り締まれない」という現状に対する、ドワンゴ側の危機感・問題意識があったとされています。
その意味で、今回の判決が、「インターネットサービスにおける海外での脱法行為取り締まり」への楔となるかもしれません。
 

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