株式会社サイトビジット、電子契約サービスに係るグレーゾーン解消制度の回答を公表
2022/06/17   契約法務, リーガルテック

はじめに


株式会社サイトビジットは2022年5月、グレーゾーン解消制度を利用し、法務省から、電子契約サービス「freeeサイン」に関する回答があったことをホームページ上で公表しました。グレーゾーン解消制度は企業の個々の事業内容に即して規制改革を進めていくことを狙いとして創設された制度で、新規事業における規制の解釈・適用の有無を確認したい場合に企業が活用できるものです。今回は、サイトビジットが受領した回答や、グレーゾーン解消制度の詳細を解説するとともに、文書の内容を詳しく見ていくことにします。

 

グレーゾーン解消制度とは


企業が新規事業を進めるにあたり、現行の規制の適用範囲が不明確な場合には、事業をこのまま進めて良いのかの判断に困ることがあります。そこで、事業者が安心して新事業活動を行うことができるよう、具体的な事業計画に即して、あらかじめ規制の適用の有無を確認できるのがグレーゾーン解消制度です。本制度では、規制を所管する管轄省庁に確認し、回答を得ることが可能です。制度を利用するには、照会者が照会書を作成し、事業所管省庁から規制所管省庁に照会書を送付してもらい、事業所管省庁を経由して規制所管省庁からの回答が得られるという流れになります。本制度を活用することで、規制の有無に関する公的な見解を得ることができ、また、顧客やステークホルダーに対しても自社の事業が適法であるとアピールすることで、信頼を得ることができます。なお、法律上の根拠は産業競争力強化法第7条第1項によるものです。
 


<産業競争力強化法第7条第1項>
●新技術等実証又は新事業活動を実施しようとする者は、主務省令で定めるところにより、主務大臣に対し、その実施しようとする新技術等実証又は新事業活動及びこれに関連する事業活動(以下この項及び第十四条において「新事業活動等」という。)に関する規制について規定する法律及び法律に基づく命令(告示を含む。以下この節及び第百四十七条第一項において同じ。)の規定の解釈並びに当該新技術等実証又は新事業活動等に対するこれらの規定の適用の有無について、その確認を求めることができる。


 

実際の運用と制度活用事例


制度を利用した企業は、原則として企業名が公表され、また、企業からの照会文、規制管轄省庁からの回答文がホームページ上で公表されることになります。ただし、文書の内容によっては、一部黒塗りが施されるなど、個人情報や公表が望ましくない内容は伏せられています。

現状、デジタル庁における「グレーゾーン解消制度に基づく回答」では、すでに多くの制度が利用され、内容が公表されています。弁護士ドットコム株式会社の電子契約サービス「クラウドサイン」や株式会社アドビが提供する電子契約サービス「Adobe Sign」、GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社「電子印鑑GMOサイン」などがそれぞれ規制の対象かどうか検討されています。

 

株式会社サイトビジットが受領した回答


サイトビジットは、経済産業省のグレーゾーン解消制度を活用し、デジタル庁・法務省・財務省から記名押印に代わる有効な電子署名として、契約書等の作成に代わる電磁的記録の作成サービスとして適法性を有する官公庁や自治体で利用される水準のサービスであることを確認した旨文書を公表しています。デジタル庁・法務省・財務省からの回答としては、「電子署名法第2条1項に規定する「電子署名」の要件を充足し、これを引用する契約事務取扱規則第28条3項に基づき、国が当事者となる契約書についても利用可能である」、「freeeの仕組みは、契約事務取扱規則第28条第2項に規定する方法による「電磁的記録の作成」に該当し、契約書等の作成に代わる電磁的記録の作成として利用可能である」などとされています。サイトビジットは今後の取り組みとして、freeeの提供する統合型クラウドERPサービスと会計・ワークフロー・人事労務と契約を一体で効率的に管理できる仕組みを構築するとしています。
 

コメント


サイトビジットは、今回のグレーゾーン解消制度の回答により、より確信を持って事業展開を行うことができそうです。その意味で、グレーゾーン解消制度は、新規事業を行う企業の背中を押す制度と言えます。一方で、2022年6月6日に経済産業省が公表したグレーゾーン解消制度の活用事例の中では、「AIによる契約書等審査サービスの提供が弁護士法第72条本文に違反すると評価される可能性があると考えられる。」との回答が紹介され、AI契約審査領域において既に一定の市場を形成している既存のリーガルテック企業に少なからず影響を与えています。各社ともに、当初から弁護士法を強く意識しながらシステム開発やサービスを設計しており、法的な整理は為されていると思いますが、投資家対応や資金調達、上場審査などの局面で、より緻密な法的理論武装が必要になりそうです。
【外部リンク】経済産業省/新事業活動に関する確認の求めに対する回答の内容の公表

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