大幸薬品がクレベリンへの措置命令で反発、優良誤認と不服申立てについて
2022/01/26   広告法務, 景品表示法

はじめに

消費者庁は20日、大幸薬品の「クレベリン」シリーズ4商品が景表法に違反しているとして再発防止を求める措置命令を出していたことがわかりました。合理的根拠を示すものがないとのことです。今回は景表法の優良誤認と不服申立について見直していきます。

 

事案の概要

消費者庁の発表などによりますと、大幸薬品は「クレベリン」シリーズ4商品パッケージなどに「空間に浮遊するウイルス・菌を除去」「身の回りの空間のウイルス・菌を除去するスティックタイプです。」などと表示し、これらの商品から発生する二酸化塩素の作用により、身の回りの空間に浮遊するウイルス等が除去される効果があるように表示していたとされます。消費者庁は同社に対し表示の裏付けとなる資料の提出を求め、同社により資料が提出されたものの合理的な根拠を示すものではなかったとして再発防止を求める措置命令を出しました。同社は昨年12月に措置命令の差し止めを求め提訴していた経緯があり、今後も法的措置を講じる構えです。

 

景表法による規制

景表法5条では不当な表示として、優良誤認表示、有利誤認表示、商品・サービスの取引に関する事項について一般消費者に呉人されるおそれがあると認められる内閣総理大臣が指定する表示などが禁止されております。内閣総理大臣の指定する表示は、無果汁の清涼飲料水等についての表示、原産国に関する表示、消費者信用の融資費用に関する表示、不動産のおとり広告に関する表示、おとり広告に関する表示、有料老人ホームに関する表示となっております。一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示となっており、故意に表示した場合だけでなく、過失で表示していた場合も規制の対象となります。
違反に対しては、違反行為の差し止めや再発防止を求める措置命令(7条)、また課徴金納付命令が出されることがあります(8条)。課徴金の額は売上額の3%となっており、善意かつ相当な注意を怠っていなかった場合、またはその額が150万円未満の場合は免除となります(1項但し書き)。なお措置命令に従わない場合は2年以下の懲役、300万円以下の罰金またはこれらの併科となり(36条1項、2項)、法人には3億円以下の罰金となります(38条)。

 

優良誤認の要件

優良誤認表示となる要件は、事業者が自己の供給する商品・サービスの取引において、その品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものより著しく優良であると示すもの、または事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すものであって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるものとされております(5条1号)。具体例としては、実際には10万km以上走行している中古車の走行距離を3万kmと表示、国産のブランド牛ではない牛肉を有名ブランド牛と表示、入院後に診断が確定した日からの給付金しか支払われないにも関わらず、入院1日目から入院給付金を支払うと表示、人造ダイヤのアクセサリーを天然ダイヤ使用と表示などが挙げられております。

 

資料の提出と不服申立て

消費者庁は上記不当表示のおそれがある場合に、その判断をするため必要があると認めるときは事業者に対して期間を定めて表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができます(7条2項)。事業者が資料を提出しない場合は不当表示があったものとみなされることとなります。措置命令などの行政処分がなされた場合は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3ヶ月以内に書面で消費者庁長官に審査請求をすることができます(行政不服審査法2条、4条、18条1項)。また処分があったことを知った日の翌日から起算して6ヶ月以内に取消訴訟を提訴することもできます(行政事件訴訟法11条1項、14条1項)。この場合には同時に執行停止の申立を行うこととなります(同25条1項)。また措置命令が出される前の段階では差し止めを求めることも考えられます(同37条の4)。

 

コメント

本件で大幸薬品の「クレベリン」に表示されていた二酸化塩素の作用によるウイルス・菌の除去効果について消費者庁が合理的な根拠を示す資料の提供を求めていたものの、表示の裏付けとなる資料とは認められなかったとされます。同庁は再発防止を求める措置命令を出しました。同社は今後法的措置で対応していく構えとのことです。

以上のように優良誤認表示のおそれがある場合、消費者庁は根拠を示す資料の提出を求めます。ガイドラインによりますと、「合理的な根拠」とは、客観的に実証されたものであり、表示された効果に適切に対応した資料である必要があるとされます。具体的には関連分野や専門家の多数が認める方法や規格での試験、学術研究に基づく論文、中立な研究機関での試験などとされます。
自社の製品の表示について合理的な根拠を示すことができるのかを、今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。

 

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