自動運転の法的責任の所在 ルール途上
2021/09/02 コンプライアンス, 業法対応, 民法・商法, その他

はじめに
8月26日にトヨタ自動車の自動運転車が選手村でパラ柔道男子の日本代表選手と接触した事故が発生しており、自動運転車の事故による責任の所在の問題が日本でも現実問題として浮き彫りになってきております。
記事の概要
自動運転車が日本の一部で見られるようになってきましたが、自動運転車による事故に対する法整備が整っているのか、自動運転車を利用しようという企業からすると関心の強いことだと思われます。
今回は、現状における自動運転車に対する法の整備及び法的責任の所在について紹介したいと思います。
法整備について
日本国内において、交通ルールを定めている道路交通法と道路を走行するにあたっての保安基準などを定めた道路運送車両法が2020年4月に改正・施行された結果、公道でレベル3までによる走行が可能となりました。
レベル3とは、条件付自動運転のことをいい、渋滞などの特定の走行環境条件を満たす限定された場合において、自動運行装置が運転操作の全部を代替します。なお、システムの介入要求等に対してドライバーが適切に対応することが必要となります。
つまり、いつでもシステムと運転を代われる状況でなければなりません。
参考までに、レベル2は特定条件下での自動運転機能をいい、高速道路で遅い車がいれば自動で追越したり高速道路の分合流を自動で行ったりします。レベル4は地域の限定や高速道路に限るなどの特定条件下における完全自動運転を意味します。
レベル3以上は主にシステムによる運転が行われ、レベル2以下だとドライバーによる運転をシステムが補助するというイメージです。
法的責任の所在
国土交通省が開催した、自動運転における損害賠償責任に関する研究会において、レベル3及びレベル4の自動運転システム利用中の事故を中心に、自賠法に基づく損害賠償責任のあり方について検討されました。
当該研究会の報告書によると、レベル0~4までの自動車が混在する2025年までの過渡期においては、
①自動運転においても自動車の所有者、自動車運送事業者等に運行支配及び運行利益を認めることができ、運行供用に係る責任は変わらないこと
②迅速な被害者救済のため、運行供用者に責任を負担させる現在の制度の有効性は高いこと
等の理由から、従来の運行供用者責任を維持しつつ、保険会社等による自動車メーカー等に対する求償権行使の実効性確保のための仕組みを検討することが適当であると言及されています。
つまり、自動運転車を利用する事業者又は個人が自動運転車を利用し事故の加害者となったら当該事業者又は個人が責任を負いますが、自動運転車のシステム面に問題があった場合には、自動車メーカー等に対し責任追及できる仕組みづくりが急務であるということです。
その他にもシステムがハッキングされた場合には責任の所在をどうするか等、問題視されていることに関し国土交通省が指針を立てているので、興味のある方はHPをご参照ください。
なお、事故による紛争が裁判にまで発展したとしても、裁判所のジャッジが政府見解に則るとは限らないため、そこは注意していただきたいと思います(司法権の独立。憲法76条3項)。
コメント
自動運転車を活用することによって、人件費及び運搬業務に付き物であるヒューマンエラーによる損失を防げると思われます。そのため、企業にとっては自動運転車の導入は関心の強いことでしょう。企業法務従事者としては、自動運転車にいかなる法的リスクがつきまとうのかを把握した上で、事前に対応策を準備するとよいでしょう。
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