三菱電機 検査不正会見
2021/07/07 コンプライアンス, 会社法, その他

はじめに
三菱電機は7月3日に、同月2日に開いた鉄道車両向け機器の検査不正に関する記者会見での同社社長の発言を訂正すると発表しました。同社社長は6月29日の株主総会で不正の報告を見送った判断について「前日に取締役会の皆さんにも諮った」と説明していたものの、取締役会は開かれておらず、協議はしていないと改めました。
事案の概要
三菱電機が鉄道車両向け空調機器の製造過程で、長年にわたり出荷前に必要な検査を怠ったり架空のデータを記入したりしていたことが判明しました。不正な検査は35年以上前から繰り返されていたとみられています。
そして、かかる事実は6月14日の段階で社内において判明していたにもかかわらず、6月29日の株主総会で一切説明しませんでした。同社社長は株主総会で不正の報告を見送るか否かにつき取締役会を開き意思決定したと一度述べましたが、後日に同社により取締役会開催の事実はないと訂正されました。
ガバナンスの重要性
ガバナンス(コーポレート・ガバナンス)とは企業統治を意味し、企業に潜む粉飾決算や横領などの法律違反が発生するリスクが現実化しないよう厳格な管理体制を設けて従業員や経営者の行動・思考などを管理する機能を有し、利害関係人に適切な情報を開示することをも含みます。厳格な管理体制のみならず健全に機能しているか確認しなければ、せっかく立派な管理体制を設けても水泡に帰してしまうため、管理体制の運用をチェックしなければなりません。
似た言葉にコンプライアンス(法令順守)がありますが、これを維持・改善するためにガバナンスが存在します。また、大きな企業であるほど不正が発覚しづらくなる傾向にあるため、ガバナンスの重要性は高まります。
ガバナンス強化の具体的施策
ガバナンスを強化するには、社外取締役や社外監査役の設置、判断基準を明確にした企業の行動規範や倫理憲章の作成、業務の責任と権限の明確化といった方法があります。企業の透明性を確保すべく、第三者がかかわる環境を設けることが重要となります。
経済産業省から発行されている「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」において詳細なガバナンス強化方法が記載されているのでご参照ください。
コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)を改訂しました(経産省HP)
コメント
昨今、ものづくり大国日本の重要な役割を担う大企業の不正検査のニュースが目につきます。ただでさえ優秀な技術者が海外に流出することが問題視されているところ、不正検査のニュースを度々目にすると国際競争力に不安を感じずにはいられません。
会見を開いた同社社長が「自分たちの技術力を絶対視するようなおごった考え方が根っこにあった」と述べたように、過去の栄光にしがみついてしまうことで不正を行った後の対応を誤り、傷口を広げてしまっている印象を受けます。隠蔽体質から抜け出すための施策が急務となるでしょう。この一件からガバナンスの重要性をひしひしと感じます。企業法務従事者は、ガバナンスの見直し及び健全に機能しているかを今一度確認するとよいでしょう。
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