消費者庁がスクエニに措置命令、スマホゲームと景表法について
2021/07/06 広告法務, 消費者取引関連法務, 景品表示法, その他
はじめに
スマホゲームの「ガチャ」で公正な抽選をしていなかったとして消費者庁は29日、ゲーム大手「スクウェア・エニックス(スクエニ)」(新宿区)と「gumi」(新宿区)に対し措置命令を出していたことがわかりました。景表法の優良誤認表示に該当するとのことです。
今回はスマホアプリゲームと景表法の規制について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、スクエニ社が運営しているスマホ用ゲームアプリ「WAR OF THE VISIONS ファイナルファンタジーブレイブヴァイス幻影戦争(FF幻影戦争)」の1周年記念で実施されたゲーム内ガチャで実際には64通り程度しか排出パターンがなかったにもかかわらず、毎回抽選され1千兆を超える組み合わせがあるかのように表示していたとされます。
これにより1セット10回のガチャでレアリティの高いキャラは最大でも2回までしか排出されないようになっていたとのことです。多くのユーザーでまったく同じパターンの排出がなされているとの指摘から発覚し、一部のユーザーから消費者庁に通報されていたとされます。
景表法による規制
これまでも取り上げてきましたが、景表法5条では各種不当表示が規定されており、その中に優良誤認表示(同1号)と有利誤認表示(同2号)が存在します。
優良誤認表示とは商品、サービスの品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し実際のものよりも著しく優良であるとする表示、または事実に反して競業事業者の製品よりも著しく優良であるとする表示を言います。
有利誤認表示とは、商品、サービスの価格その他の取引条件について、実際のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認させる表示、または競業事業者の製品に関するものよりも著しく有利であると誤認させる表示をいいます。
実際よりも性能が優れていたり、また実際よりも安い、またはお買い得であると消費者に誤認させる表示ということです。
違反に対する措置
これら不当表示が行われた場合には、消費者庁からその行為の差止、再発防止、それらの実施に関する公示など必要な措置を命じる措置命令が出されることがあり(7条)、また課徴金として売上に3%を乗じた額の納付命令が出されることとなります(8条)。その額が150万円に満たない場合は免除となります。
なお措置命令に違反した場合は2年以下の懲役、300万円以下の罰金となり、法人に対しては3億円以下の罰金が規定されております(36条、38条1項1号)。消費者庁は優良誤認に該当するかを判断する必要がある場合は、期間を定めて事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、それがない場合は不当表示とみなされることとなります(7条2項、8条3項)。
景表法違反とされた事例
これまでスマホ用ゲームアプリに関して景表法違反とされた事例としては、2018年のパズドラ事件と同年のKOF事件が挙げられます。「パズル&ドラゴンズ」を運営するガンホー・オンライン・エンターテイメントは5周年記念でのYoutube、ニコニコ動画での発表の際に、ガチャで入手できるキャラクター13体すべてについてさらに強くなる「究極進化」の対象であると宣伝しましたが、実際にはそのうちの2体のみが対象であったというものです。消費者庁は優良誤認表示に当たるとし措置命令を出しております。
そして中国のアワ・パームカンパニーが運営する「KOF98」ではゲーム内ガチャで排出されるとされた特定のキャラクターの出現率が実際には0.333%であるにも関わらず3%と表示していたとされます。消費者庁は有利誤認に当たるとして措置命令および課徴金納付命令を出しております。
コメント
本件でスクエニ社のFF幻影戦争のゲーム内ガチャではあたかも1回1回抽選されるように表示されておりましたが、実際には予め用意されたパターンに沿って排出されていたとされます。これにより10回1セットのガチャを引いても当たりのチャンスが10回あるわけではなく、最大でも2回しか当たらないようになっていたとのことです。消費者庁は優良誤認表示に当たると判断しました。以上のようにスマホのゲームアプリに関しては景表法の有利誤認表示、優良誤認表示のいずれにも該当する可能性があると言えます。
ゲーム内ガチャの抽選システムに不正や不当表示があっても外部からは見えず無法地帯との指摘もあり、近年各国では規制が強化されております。またこれまで調査に消極的と言われてきた日本の行政でも調査を強化している傾向が見られます。今一度自社での表示等を見直しておくことが重要と言えるでしょう。
関連コンテンツ
新着情報
- 業務効率化
- LAWGUE公式資料ダウンロード
- ニュース
- 職種限定合意の職員に対する「同意なき配置転換」は違法 ―最高裁2024.5.1
- NEW
- 職種限定合意がある場合に、使用者において、労働者の同意なしに配置転換を命じる権限はないとする初...
- 弁護士
- 中島 星弁護士
- 弁護士法人かなめ
- 〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4丁目1−15 西天満内藤ビル 602号
- セミナー
- 平岩 諒介弁護士
- 片山 優弁護士
- 【リアル】売買契約(下請法)-契約審査 徹底演習シリーズ-
- NEW
- 2024/08/22
- 15:30~17:00
- 解説動画
- 奥村友宏 氏(LegalOn Technologies 執行役員、法務開発責任者、弁護士)
- 登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
- 潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
- [アーカイブ]”法務キャリア”の明暗を分ける!5年後に向けて必要なスキル・マインド・経験
- 終了
- 視聴時間1時間27分
- 弁護士
- 石田 雅大弁護士
- 弁護士法人かなめ
- 〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4丁目1−15 西天満内藤ビル 602号
- まとめ
- 株主総会の手続き まとめ2024.4.18
- どの企業でも毎年事業年度終了後の一定期間内に定時株主総会を招集することが求められております。...
- 解説動画
- 大東 泰雄弁護士
- 【無料】優越的地位の濫用・下請法の最新トピック一挙解説 ~コスト上昇下での価格交渉・インボイス制度対応の留意点~
- 終了
- 視聴時間1時間
- 業務効率化
- LegalForce公式資料ダウンロード