リフォーム業者が虚偽報告で逮捕、特定商取引法の規制について
2021/03/17   消費者取引関連法務, 特定商取引法, その他

はじめに

リフォーム業者「メノガイア」(神戸市)の代表取締役と社員が消費者庁に虚偽の報告をしていたとして、特定商取引法違反の疑いで逮捕されていたことがわかりました。同社は昨年、同法違反により業務禁止命令を受けておりました。今回は特定商取引法の規制を見直していきます。

事案の概要

 消費者庁の発表などによりますと、メノガイアは給湯器の点検などと称して消費者宅を訪問し、床下や水道管などに実際には無い割れやヒビがあり耐震性の問題があるなどと告げて不要なリフォーム工事を行ったり、既に行った補強工事を通常必要とされる回数を超えて過剰に繰り返すといった行為等を行っていたとされます。これを受け消費者庁は同社に勧誘の際の音声データの提出等を求めていたところ、該当するデータを消去して嘘の報告をした疑いが持たれているとのことです。消費者庁は昨年同社に対し業務禁止命令を出しておりました。

特定商取引法による規制

 特定商取引法では訪問販売、通信販売、訪問購入、電話勧誘販売、連鎖販売取引、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引について、書面の交付義務や不実告知、威迫や迷惑行為などが禁止されており、一定の場合には消費者庁による行政処分や罰則が規定されております。消費者庁の発表では令和元年の特定商取引法違反による処分件数は176件で、都道府県別では東京都が37件で最多となっており、ついで大阪府の12件となっております。処分件数は2010年をピークに減少傾向でしたが近年また増加傾向にあります。以下訪問販売について見ていきます。

訪問販売規制

 事業者が訪問販売を行う際には、勧誘に先立って事業者の氏名(名称)、勧誘目的、商品(役務)の種類を告げなくてはなりません(3条)。また勧誘に先立って消費者に勧誘を受ける意思があるかを確認することに努める必要があり、意思が無いことを示した場合には勧誘の継続やその後改めて勧誘することはできません(3条の2)。契約をした際にはその内容やクーリングオフ、隠れた瑕疵に関する事項などを記載した書面の交付が義務付けられます(4条、5条)。そして勧誘に際しては不実の告知や故意に事実を告げないこと、相手方を威迫して困惑させること、目的を告げないで公衆の出入りしない場所に誘引し勧誘することが禁止されております(6条)。

行政処分と罰則

 消費者庁は上記規制に違反しているかを判断するため必要があると認めるときは業者に対し期間を定めて、消費者に告げた事実が不実ではないことを示す資料の提出を求めることができます(6条の2)。違反している場合には消費者庁は必要な措置をとるべきことを指示することができ(7条)、業務停止命令(8条)や業務禁止命令も出すことができます(8条の2)。罰則として3年以下の懲役、300万円以下の罰金またはこれらの併科も規定されております。また必要と認める際には販売業者等に対し立入検査や帳簿、書類の検査、従業員への質問、報告や資料の提出を命じることができます(66条)。これに反して虚偽の報告をしたり拒否した場合には罰則として6月以下の懲役、100万円以下の罰金またはこれらの併科となっております。

コメント

 本件でメノガイアの代表取締役と社員は消費者庁から、消費者を勧誘する際の音声データの提出を求められたところ、そのデータを消去して虚偽の報告を行ったとされます。上記のとおり消費者庁の検査や報告命令を妨害したり虚偽の報告をした場合には罰則が規定されており、同容疑で逮捕されております。また既に同社の社員9人は詐欺などの容疑で逮捕されており、昨年の業務禁止命令後も別会社を名乗って勧誘していた疑いもあると見られております。以上のように訪問販売や電話勧誘、訪問購入などについては消費者保護の観点から特商法によりかなり厳格な規定が置かれております。また消費者庁の捜査の妨害にも罰則が設けられております。これらの事業を行っている場合には、今一度違反は無いか見直しておくことが重要と言えるでしょう。

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