消費者庁がジャパネットに課徴金納付命令、二重価格表示について
2020/12/28 消費者取引関連法務, 景品表示法, 小売
はじめに
消費者庁は23日、エアコンのチラシなどで不当な二重価格表示を行っていたとして、「ジャパネットたかた」(佐世保市)に対し課徴金5180万円の納付命令を出していたことがわかりました。実際に販売したことがない価格を通常価格としていたとのことです。今回は二重価格表示の問題点について見ていきます。
事案の概要
消費者庁の発表によりますと、ジャパネットたかたは2017年5月19日から6月14日にかけて新聞折込チラシなどでエアコン4種類について、「ジャパネット通常税抜価格79,800円」「2万円値引き」「さらに!会員様限定2,000円値引き」「値引き後価格
会員様特価57,800円」などと記載していたとされます。しかしこの通常税抜価格については最近相当期間にわたって販売された実績がないものであり、中にはその価格で販売された事実が確認できないものもあったとのことです。消費者庁は2018年10月に再発防止を求める措置命令を出しておりました。
景表法の有利誤認表示
景表法5条2号によりますと、商品・サービスの取引条件について、実際のもの、または競業事業者のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認させる表示は不当表示の一種として禁止されております。消費者庁では「今なら半額!」などと表示したが、実際には50%割引になっていない場合や、外貨預金の受け取り利息を手数料抜きで表示したが実質的な受取額は表示の3分の1以下になってしまう場合などが例示されております。違反した場合には内閣総理大臣(消費者庁長官に委任、33条)により再発防止や当該行為の差止を求める措置命令が出され(7条)、また課徴金納付命令が出される場合もあります(8条)。
有利誤認表示の課徴金
有利誤認表示および優良誤認表示における課徴金額は対象商品または役務の売上額に3%を乗じたものとなっております(8条)。対象となる期間は3年間を上限とし、算定額が150万円に満たない場合は課徴金は課されないこととなります。事業者が不当表示であることにつき善意でありかつ相当な注意を怠っていなかったと認められる場合も課徴金は課されないこととなります。また独禁法と同様にリーニエンシー制度が設けられており、違反事実を消費者庁に報告した場合には50%減額されることがあります(9条)。さらに事業者が所定の手続きにしたがって消費者に返金措置を実施した場合も課徴金が免除されることがあります(10条、11条)。
二重価格表示に関する取り扱い
消費者庁のガイドラインによりますと、二重価格表示を行う場合、「通常価格」は最低でも2週間の販売実績が必要とされます。また「通常価格」が将来の販売価格である場合は、その価格で販売することが確実である場合以外は原則として有利誤認となるおそれが高く、そのような表示は行うべきではないとの執行方針を執る予定としております。その際の考慮事項として実際にその価格で販売された場合は合理的かつ確実な販売計画に基づいていたと推測され合法となり、特段の事情が内にもかかわらず実際に販売されなかった場合はそのような計画はなかったと推測され有利誤認となるとされております。また実際に販売されたとしても、ごく短期間であった場合もやはり有利誤認と判断されます。このごく短期間とは2週間以上とされております。
コメント
本件でジャパネットたかたはエアコン4種につき通常価格から2万円ないし2万2000円の値引きを表示しておりましたが、実際には通常価格で販売した期間が2週間に満たないものやまったく販売期間が確認できないものがあったとされます。消費者庁は有利誤認表示に当たるとして、エアコン4種8製品、平成29年5月19日から9月27日までの売上などに3%を乗じた計5180万円の課徴金納付を命じました。以上のように二重価格表示の場合は最低でも2週間の販売実績が必要とされます。また将来価格を表示する場合はより厳格に判断される執行方針が予定されております。二重価格表示は小売店やスーパー、インターネット通販などで非常に多く使用されている宣伝方法と言えます。しかし実際に販売されたことのない価格である場合は違法となります。今一度自社の広告を確認しなおしておくことが重要と言えるでしょう。
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