NTTがNTTドコモを完全子会社化へ、TOBの手続について
2020/10/01 商事法務, 戦略法務, 会社法, その他
はじめに
NTTは29日、子会社であるNTTドコモを株式公開買付け(TOB)により完全子会社化すると発表しました。同日開催された取締役会で決定したとのことです。今回は株式公開買付けの手続きについて見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、NTTは次世代通信規格である「5G」の活用や次の世代の通信技術開発、またリモート社会への対応のため垣根を超えて取り組む必要があり、子会社であるドコモを完全子会社化して意思決定の迅速化を図るとしております。NTTの発表では買付け期間は9月30日(水)~11月16日(月)で買付け価格は1株あたり3900円。買付け予定数は約11億株となっております。買取総額は4兆2545億円でNTTが保有するドコモ株は現在66.21%です。
株式公開買付けとは
株式公開買付け(TOB)とは、経営権の掌握などを目的として市場外で対象会社の株式を買い取る公告をして取得することを言います。M&Aの手法の一種と言えますが、主に対象会社を完全子会社化し上場廃止するMBOの手段として利用されております。海外でも米国やイギリス、ドイツ、フランスなどで採用されておりますが、日本では1971年から導入され金融商品取引法に規定が置かれており、一定の場合にはTOBが強制されることがあります。以下TOBの手続きを具体的に見ていきます。
株式公開買付けの手続き
TOBの手続の流れは大まかに次のようになります。まず①買付けを行う者は公開買付公告を行います(金商法27条の3)。公告は通常新聞で行いますがネット上で行うことも可能です。次に②買付け条件などを記載した公開買付届出書を内閣総理大臣に提出します。③買付け対象となる会社は公開買付公告がなされた日から10営業日以内にTOBに同意するか否かの意見表明報告書を内閣総理大臣に提出します(27条の10)。これにより敵対的TOBか否かなど、そのTOBの性質が判明することになります。④公開買付けの期間は公告日から起算して20日以上60日以内でなければなりません(金商法施行令8条)。⑤公開買付が終了したら公開買付報告書を提出して終了となります。なお公開買付は公告した後は原則として撤回することはできませんが、対象会社に組織再編が生じたなどTOBに重大な支障が生じる場合、また買付者が破産したといった場合には例外的に撤回できます(27条の11)。
TOB後の流れ
完全子会社化を目的としたTOBがなされた場合、通常その後に残存株主の処理が行われることとなります。その手法として①株式併合、②全部取得条項付種類株式、③株式交換、④売渡請求が挙げられます。株式併合は公開買付を行った自己以外の株主の株式が1未満になる割合で併合するというものです。全部取得条項付種類株式の利用の場合はまず定款変更により発行済株式を全部取得条項付種類株式に変更して取得してしまうという方法です。株式交換は組織再編行為の一種ですが、対象会社の株式を強制的に全て株式交換完全親会社に取得させ、代わりに親会社株を交付するというものです。そしてTOBで90%以上取得できた場合には残存株主に売り渡し請求をすることもできます。これは平成26年改正によって導入された制度で、取締役会決議だけ行える簡易な方法です。
コメント
NTTの公開買付けでの買取価格は1株あたり3900円となっております。NTTドコモの株価は2770円前後で推移しておりましたが、NTTによるTOBの発表後高騰し現在株価は3880円に急騰しております。買取予定数11億株、買取総額4兆2545億円と非常に大規模なものとなっております。NTTは完全子会社化を達成した後はNTTコミュニケーションズやNTTコムウェアをドコモに移管するなどグループ再編を行う予定としております。以上のようにグループ内での意思決定の迅速化を図るため近年TOBを利用した完全子会社化は増加傾向にあります。5GなどIT関連の革新や新型コロナウイルスの影響によるリモート化により今後もこの流れは継続するものと予想されます。組織再編の手法や手続については常に把握して準備しておくことが重要と言えるでしょう。
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