サツドラHDが移行決定、監査等委員会設置会社について
2020/09/18 商事法務, 会社法, 小売

はじめに
北海道で小売業を展開するサツドラHDが8月の定時株主総会で監査等委員会設置会社への移行を決定していたことがわかりました。ツルハHDやアークスも機関設計の変更を検討しているとのことです。今回は近年急速に増加している監査等委員会設置会社について見直していきます。
事案の概要
日経新聞によりますと、北海道で小売業を展開してきたサツドラHD、アークス、ツルハHDが昨今企業統治を巡る改革を進めているとされます。これらはいずれも長年創業者が大きな影響力を持っており、経営の透明性や海外投資家からの投資の対象となりえる企業統治スタイルの確立を目指すとのことです。サツドラHDは取締役会の監督機能がより強化された監査等委員会設置会社への移行を決定しております。ツルハHDは社外取締役を4人選任し、指名委員会等設置会社への移行を検討、アークスもより民主的な後継者選びの仕組みを模索し、指名委員会等設置会社への移行を検討しているとされております。
監査等委員会設置会社とは
監査等委員会設置会社とは、会社法の平成26年改正によって導入された機関設計で、より取締役会に監査・監督機能を充実させ、かつ指名委員会等設置会社よりもライトな、いわば監査役会設置会社と指名委員会等設置会社の中間的制度設計となっております。平成14年改正時に導入された委員会設置会社を採用する会社が伸び悩み、ガバナンスの強化を確保しつつより多くの会社で採用しやすい制度設計が模索された結果誕生した機関設計と言えます。以下監査等委員会設置会社について具体的に見ていきます。
監査等委員会設置会社の機関設計
監査等委員会は3人以上の取締役で構成され、その過半数は社外取締役となっております(会社法331条4項)。監査等委員である取締役は通常の取締役とは別枠として選任されますが、取締役であることに変わりはなく当然に取締役会の構成員となります。監査等委員である取締役は業務執行取締役や支配人を兼任することはできず(331条3項)、代表取締役になることもできません。そのため監査等委員である取締役3人と業務執行を行う取締役1人で、最低でも4人の取締役が必要となります。また会計監査人の設置も必須となります(327条5項)。任期は監査等委員である取締役が2年でそれ以外の取締役は1年となっております(332条1項、3項)。
指名委員会等設置会社
監査等委員会設置会社との比較のために指名委員会等設置会社についても簡単に触れておきます。指名委員会等設置会社は取締役会、指名委員会、監査委員会、報酬委員会で構成される機関設計です(404条)。監査等委員会設置会社と同様に会計監査人も必須となります。各委員会は最低3人の委員で構成され、その過半数は社外取締役となります(400条1項、3項)。監査委員である取締役は執行役を兼任することができません(400条4項)。しかし各委員会の委員は兼任することができるため会社法上は監査等委員会設置会社と同様に3人の取締役(内2人は社外取締役)と1人の執行役の計4人に会計監査人を加えて5人で成立することとなります。取締役の任期は1年となっております。
コメント
本件でツルハHDやアークス、サツドラは北海道でも伝統的な小売業者で、長年創業家が経営を担ってきました。しかし近年より透明性のあるガバナンス体制の確立と海外からの投資の呼び込みを模索しております。日本は明治時代に制定された旧商法により長年株主総会、取締役会、監査役会といった機関設計が採用されてきました。しかしこれは日本独自のもので欧米の投資家からはあまり理解を得られておりませんでした。そこで米国の制度である委員会設置会社の制度を導入するも、その制度設計の負担の大きさにほとんどの会社は採用を見送ってきました。そこで両者の中間的な機関設計として監査等委員会設置会社の制度が導入されております。ガバナンスの強化と、機動的な意思決定が行え、指名委員会等設置会社よりもライトな体制となっております。自社の業態や規模、株主の数などを考慮して最も適切な機関設計を選択していくことが重要と言えるでしょう。
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