ENEOSなどが再生エネファンドを設立、合同会社について
2020/08/03 商事法務, 会社設立, 会社法, その他

はじめに
石油元売り大手のENEOSなど4社が先月30日、再生可能エネルギーに投資するファンドを共同で設立していたことがわかりました。ファンド名は「合同会社長期安定電源ファンド」とのことです。今回は合同会社についてみていきます。
事案の概要
報道などによりますと、ENEOS他4社は太陽光発電など再生エネルギー事業に投資することを目的としたファンドを共同で設立し、近年急伸している再生エネルギー市場を事業に取り込むとしています。5年以内に4000億円の資産を取得することが目的とされ、ENEOSの他にリニューアブル・ジャパン(港区)、東急不動産、関西電力が参加し各1億円ずつ出資したとのことです。事務局はリニューアブル・ジャパンの子会社に設置されております。
合同会社とは
合同会社とは日本における会社形態の1つで、会社法上の持分会社の1つです。アメリカのLLCをモデルに平成17年改正で導入されました。出資者が経営に当たる点は他の持分会社である合名会社や合資会社と同じですが、有限責任社員のみで構成されるところが大きな特徴です。また設立費用も株式会社に比べて低く抑えられ、近年設立数は増加傾向にあります。以下株式会社との違いなどを見ていきます。
株式会社との異同
合同会社は上でも述べたように株式会社と同じく有限責任社員のみで構成されます。そのため出資者は出資の範囲でしか会社の債務を背負うことはありません。その点が合名会社や合資会社との一番の違いとなっており、それらの会社に比して会社財産確保の要請が強いことから出資自体は厳格に求められ、また資本金の額も株式会社と同じく登記事項となります。一方株式会社は所有と経営が完全に分離しているのに対し(会社法295条、331条)、合同会社は完全に一致しております(590条1項、591条)。出資者の名称も株式会社は株主と呼ばれるのに対し、合同会社は社員と呼ばれます。株式会社の取締役には2年(非公開会社では10年まで伸長可能)の任期がありますが、合同会社の社員には任期はありません(332条、607条)。合同会社は決算公告も必要とされず、また設立に際しての原始定款への公証人の認証も不要とされております。
合名会社・合資会社との異同
合同会社は前述のとおり無限責任を負う社員が存在しません。そのため資本金の登記が求められ、設立に際しては出資が完全に履行されていることが求められます。また社員に出資額を払い戻す場合には、株式会社と同様に財源規制があり配当可能額の範囲内に制限されます(635条1項)。これに対し合名会社と合資会社には無限責任社員が存在することから会社財産確保の要請は合同会社よりも低く、出資時期も制限はなく、資本金の額も登記事項とはされておりません。
コメント
本件でENEOSなど4社が共同で設立したファンドは合同会社の形態をとっております。出資額は各社1億円ずつとなっております。合同会社は株式会社と異なり定款の認証が不要など設立しやすい形態と言えます。また出資者の責任も出資額の1億円の範囲でしか負わず、株式会社の簡易版とも言えます。しかし反面デメリットもあり、株式会社と違って株式というものが存在せず新株発行による資金調達はできません。株式会社と違ってまだ新しい会社形態であることから知名度が低く信用度の点でも株式会社に劣ると言われております。また社員の加入や退社にはその都度全社員の同意による定款変更を要するなど、内部で対立した際に柔軟な対応が困難といった欠点もあります。会社形態の選択の際にはそれぞれの特徴やメリット・デメリットを正確に把握して行うことが重要と言えるでしょう。
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登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
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