二重価格表示に関する消費者庁の動き
2020/05/27 広告法務, 景品表示法

はじめに
消費者庁は22日、将来の販売価格を比較対象とした二重価格表示についての意見交換会を開いていたことがわかりました。今年夏頃を目処に対応方針を取りまとめるとのことです。今回は二重価格表示と景表法について見ていきます。
事案の概要
消費者庁によりますと、不当景品及び不当表示防止法(景表法)が規定する有利誤認表示に関して、価格表示についての考え方である「価格表示ガイドライン」が平成12年6月30日に策定されました。どのような場合に景表法上問題となるかを事例とともに示したものです。しかし近年、当時と比較して大幅にインターネットが普及し、同時に価格表示の方法等が多様化してきておりガイドライン策定時には見られなかった事例が生じてきているとされます。それを受け消費者庁では将来の販売価格を比較対象とした二重価格表示についての対応方針を整理し策定する運びとなっているとのことです。
有利誤認表示とは
景表法5条2号によりますと、事業者が自己の供給する商品・サービスの取引において、①実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの、②競争事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に後にされるものであって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある表示が禁止されております。実際にはそれほど安いわけではないのに、あたかも著しく安いように誤認するような表示などです。違反した場合には措置命令(7条1項)や課徴金納付命令(8条)が出される場合があり、措置命令に違反した場合には2年以下の懲役または300万円以下の罰金となっております(36条1項、2項)。
二重価格表示とは
二重価格表示とは、たとえば「紳士スーツ 当店通常価格58,000円の品 40,000円」「※印は当店通常価格 マーガリン※498円
298円」といった表示を言います。この「58,000円」や「498円」が実際に販売されていた通常価格であればなんら問題はありません。しかし実際にはそのような価格で販売されたことが無い場合には有利誤認表示になる可能性があります。ガイドラインでは「最近相当期間にわたって販売されていた価格」と表現されており、その価格で販売されていた時期、期間、一般的価格変動の状況、その店舗での販売形態等を考慮して個々の事案ごとに検討されるとしています。一般的には過去8週間について検討されるとのことです。これらの価格で実際に販売されていたとしても、ごく短期間である場合や相当過去であり場合は該当しないということです。
近年の事例
消費者庁の資料では近年の次のような事例が挙げられております。まず新聞広告で「高級シルクメンズパジャマ 2,800円
締切日以降は8,400円になります」と表示されていたものや、テレビショッピングで32型テレビについて「明日以降 ¥192,240
¥97,800」と表示していたというものです。シルクパジャマについては締切日以降も実際にその価格で販売された実績はなく、テレビについては実際に販売された期間はわずか3日間であったとされます。販売の実態が無いか、または販売実績のためのアリバイ作りに過ぎないということです。いずれの事例にも措置命令が出されております。
コメント
以上のように近年インターネットの普及などに伴い、有利誤認表示の態様も多種多様なものが現れております。平成12年に策定された現在の価格表示ガイドラインでは対応しにくくなってきているとされております。二重価格表示についても上記のように過去の販売価格を並べるのではなく、将来の価格を並べるといった例が多くなっております。将来価格の表示についても今年中にはガイドラインが策定され、公表されることとなると予想されます。いずれにしても実際に相当期間販売されなければ違法となるものと言えます。二重価格表示は顧客の購買意欲を促進するために有効な方法と言えますが、活用する際には上記の要件を踏まえ、消費者に誤認させないよう留意して行うことが重要と言えるでしょう。
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