東京湾の人工島の帰属が確定、境界確定訴訟とは
2019/10/09   訴訟対応, 民事訴訟法

はじめに

東京湾の人工島「中央防波堤」の帰属を巡って大田区と江東区が境界確定を求めていた訴訟で東京地裁は約8割を江東区、約2割を大田区とする判決を出しました。

両区はともに控訴しない方針とのことです。
今回は土地の境界がわからなくなった場合の境界確定訴訟について見ていきます。

事案の概要

報道などによりますと、来年の東京五輪・パラリンピックのボート・カヌー会場となる東京湾の人工島「中央防波堤」の帰属をめぐり、東京都大田区と江東区の間で紛争が生じておりました。

同防波堤は面積約500ヘクタールの人工島で1970年頃からゴミの埋立地とされていたとのことです。
2017年に東京都から調停案が出されていたものの大田区側が拒否し境界確定訴訟に発展したとされます。

境界確定訴訟とは

土地の境目がわからなくなったなど、土地の境界に関して争いが生じた場合に裁判所の判決で境界線を確定する手続きを境界確定訴訟と言います。

戦前の裁判所構成法には規定されておりましたが現行の裁判所法には規定がなく、判例上認められている制度と言えます。

土地の境界は個人の財産の範囲を画するものであると同時に行政区画など公共的な性質も合わせもつものであることから純粋な民事訴訟と比べかなり特殊な扱いを受けております。

境界確定訴訟の特殊性

境界確定訴訟は通常の民事訴訟と異なり、訴えの際に具体的な境界線を主張する必要はないとされております。
また裁判所は当事者双方の境界の主張に拘束されず、当事者の合意だけで境界を定めることもできないと言われております(最判昭和31年12月28日)。

上記のように土地の境界の公共的性格から様々な事情を考慮して裁判所の裁量で境界が確定されることになります。
そのため通常の民事訴訟では認められる自白や和解、請求の認諾などの規定も適用が除外され、証拠などに基づいて審理しても境界が特定できないといった場合でも裁判所は請求棄却することはできず必ず境界は確定されるとされております。

さらに控訴審で通常適用される不利益変更禁止の原則も適用されないと言われております。

筆界特定制度

境界を確定する類似の制度として筆界特定制度というものが存在します。
これは不動産登記法の平成17年改正で導入された登記官による境界確定制度です。

土地の登記名義人からの申請により開始され、筆界調査委員によって現地調査や測量などが行われ、当事者の意見陳述や資料提出などを経て筆界特定登記官が境界を特定することになります(143条)。

境界確定訴訟よりも簡易迅速で利便性の高い制度と言えますが法的に境界を確定する形成力はなく、最終的に境界を確定する必要がある場合にはやはり境界確定訴訟によることとなります。

コメント

本件で東京地裁は人工島の「79.3%を江東区、20.7%を大田区」とする判決を出しました。

大田区側はかつて多くの区民が海苔の養殖を行っていたなどと主張していました。
東京都から提示されていた調停案よりも面積割合が増えたことから司法判断を仰いだ意義があったとしています。

以上のように土地の境界はその公共性からその確定もかなり特殊な扱いを受けます。
境界確定訴訟では当事者間で和解することも合意で境界線を決めることもできないと言われております。
また現在では登記所に申し立てることにより登記官によって境界を特定してもらえる制度も用意されております。

土地の境界に関して争いがある場合にはこれらの点を踏まえて対応を検討していくことが重要と言えるでしょう。

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