産経新聞に立入検査、景表法の景品規制について
2019/02/15   広告法務, 景品表示法

はじめに

 産経新聞の販売店が長期契約の勧誘のために高額な景品をつけていた疑いがあるとして、大阪府消費生活センターが立入検査を行っていたことがわかりました。大阪府などに苦情が寄せられていたとのことです。今回は景表法の景品規制について見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、大阪府内の複数の産経新聞販売店は一人暮らしの高齢者などを対象として、高額景品を引き換えに長期契約の勧誘を行っていたとされます。景品は電動アシスト自転車などもあり、契約者が解約を申し出ても高額な違約金などを要求するなどして応じずトラブルに発展していたとのことです。大阪府や各消費者センターに苦情が寄せられ、大阪府消費生活センターが産経新聞に販売店への指導を求めていたが改善されず立入検査に踏み切ったとされております。

景品表示法の景品規制

 景表法4条によりますと、「内閣総理大臣は、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を確保するために必要があると認めるときは、景品類の価額の最高額若しくは総額、種類若しくは提供の方法を…制限し、又は景品類の提供を禁止することができる」としています。つまり消費者の判断を歪めるような不当に過大な景品などを制限しているということです。違反した場合には措置命令が出され(7条)、それに従わなかった場合には2年以下の懲役、300万円以下の罰金またはこれらの併科となります(36条1項、2項)。

景品とは

 景表法の対象となる「景品」とは、①顧客を誘引するための手段として、②事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する、③物品、金銭その他の経済上の利益を言うとされております(2条3号)。消費者庁のガイドラインによりますと、金券やサービス券、映画やスポーツなどのチケット、株券や優待券から物品や不動産、便益や労務などあらゆる経済上の利益が含まれます。ただし正常な商慣習に照らして認められる値引きやアフターサービスは該当しません。また取引の本来の内容や同一の商品そのものも該当しません。コーヒーに付随する砂糖や牛丼5杯で1杯無料サービスといったものです。

対象となる行為

 規制の対象となる行為としては、①一般懸賞、②共同懸賞、③総付景品が挙げられます。一般懸賞とは抽選やクイズなどによって景品を提供する場合を言います。取引価額が5000円までの場合はその20倍まで、5000円以上の場合は10万円までが景品の限度額となります。共同懸賞は複数の事業者が共同して行う場合です。限度額は30万円となります。それら懸賞によらずに購入者や来店者にもれなく提供する場合を総付景品と言います。この場合、取引価額が1000円未満の場合は200円、1000円以上の場合はその20%までが限度額となります。また新聞や雑誌、不動産業、医薬品、医療機器などの分野では別途業種別景品規制が設けられております。

コメント

 本件で産経新聞の販売店は電動アシスト自転車などを景品として長期契約の勧誘をしていた疑いがもたれております。新聞販売の場合には特別の規制が設けられており、景品の限度額は取引価額の8%かまたは6ヶ月分の購読料金の8%のいずれか低い方が限度額となります。電動アシスト自転車の場合は限度額を超える可能性が高いと言えます。一般的に景表法の規制と言うと有利誤認や優良誤認といった表示規制を思い浮かべますが、景品についてもガイドラインでは詳細に規定されております。表示規制と違い課徴金の対象とはなっておりませんが、措置命令が出され従わなかった場合には罰則が適用されることも有りえます。販促や顧客拡大に景品を非常に有効であり一般的に行われていると言えますが以上のような限度が設けられております。景品を添付する際には規制の対象となるのか、その限度額はいくらかをその都度確認することが重要と言えるでしょう。

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