アルプス電気が経営方針発表、自己株式取得について
2018/11/28   商事法務, 会社法

はじめに

 アルプス電気は26日、子会社であるアルパインとの統合後の経営方針について発表しました。持続的な成長に向けた投資や健全な財政基盤の確保とともに400億円相当の自己株式取得を実施するとのことです。今回は自己株式の取得手続について見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、アルプス電気は国内格付けAを維持し、またアルパインとの統合後3年間で2000億円の投資を行うこと、自己資本利益率10%以上を維持し株主へのリターン向上を図ることなどを発表しました。さらに統合後の2019年1月から6月28までの間に400億円相当の自己株式取得を実施するとしました。資本効率を上げ、株主への総還元性向50%を目指すとしています。

自己株式取得とは

 株式会社が自社の発行した株式を自ら取得することを自己株式取得と言います。自己株式を取得することになる場面とは、譲渡制限株式の譲渡を承認しない場合や、取得請求権付株式、取得条項付株式の取得、他社からの事業譲渡、合併や分割などがあります(会社法155条)。そんななかで会社が能動的に取得していくのが株主との合意による取得です(156条1項)。その手続を以下具体的に見ていきます。

自己株式取得の手続き

 自己株式取得を実行するのは取締役または取締役会ですが、その前提として株主総会による授権決議が必要となります(156条)。取得する株式の数と種類、買い取る総額、取得を行う期間を決定します。全ての株主を対象として買い取る場合は普通決議で決定しますが、特定の株主からのみ買い取る場合は特別決議を要します。市場取引・公開買付による場合は普通決議となります。特定の株主から買い取る場合は、他の株主は自己からも買い取るよう請求することができます(売主追加請求160条3項)。しかしこの権利は市場価格のある株式を市場価格以下で買い取る場合や、子会社の保有する自己株式の買取、相続人からの買取の場合は行使できません。また定款で排除することもできます。そして授権決議に基づき取締役または取締役会がその都度、取得数、対価、対価総額、申込み期日を決定して実行します(157条2項、348条1項)。

自己株式取得と財源規制

 自己株式の取得は実質株主に対する払い戻しとなることから、会社財産を減少させ会社債権者を害する可能性があります。そこで自己株式取得の対価の総額は分配可能額を超えてはならないとされております(461条1項2号、3号)。自己株式を取得する際は原則としてこの財源規制が存在しますが、単元未満株式を買取る場合や吸収合併、吸収分割による取得の場合等では財源規制はありません。これは株主の投下資本回収確保の必要性や、承継財産から自己株式だけを除外することの困難性からそのように定められているからです。

コメント

 本件でアルプス電気は株式交換に伴う株式増加で希薄化する株式の価値を還元するため、半年で400億円規模の自己株式取得を市場買付けの方法により取得していく方針です。以後臨時株主総会での普通決議を経て実行されていくものと考えられます。自己株式の取得は新たに株式を発行せずに割り当てる株式を確保することができることから既存の株主の持ち株比率の低下を回避することができます。市場にあふれ株価が低迷している場合には市場から回収して株価の回復を図ることができます。また市場にあふれた株式はライバル会社から狙われやすいことから、敵対的買収を防止するためにも自己株式取得を行うことも考えられます。以上のように自己株式取得は株式価値の管理や機動的な経営再建など多彩な目的で利用できます。会社の様々な場面で積極的に検討していくことが重要と言えるでしょう。

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