監査報告書に添付される意見の違いについて
2018/07/24 商事法務, 会社法

1 はじめに
2017年3月期、あらた監査法人は東芝の計算書類と有価証券報告書について「限定付き適正」という監査意見を出しました。2018年3月期では、計算書類については「無限定適正」の意見が出ましたが、有価証券報告書については再び「限定付き適正」の意見が出ました。そこで本稿では、監査意見について簡単に解説し、なぜこのような違いが出るのかを確認した後、今回の事件を受けて法務担当者が今後どのような対策を取っていくべきかを検討していきたいと思います。
2 監査意見とは
監査意見とは、会社が作成した財務諸表等を監査法人又は公認会計士が監査し、その内容について述べられた意見を言います。監査意見は、書類に含まれる虚偽の程度により「無限定適正」「限定付き適正」「意見不表明」「不適切意見」の4種類に分けられ、「意見不表明」と「不適切意見」の2つが付いた場合は、上場廃止の対象となります。「限定付き適正」の監査意見については、上場廃止の対象とはなりませんが、実務上は不適切な個所を直すよう指導が入り、「無限定適正」の状態にしてから金融庁に提出する運用となっているようです。
*コトバンクー監査意見
3 書類の根拠法令
監査意見の違いは、根拠法令の違いによるものであると思われます。
有価証券報告書は財務諸表等規則6条により、前の期との比較を作成しなければならないとされています。比較対象となる17年3月期の決算に限定付き適正意見が付されており、比較対象の全てが適切な状態ではないということで、18年3月期の決算も「限定付き適正」となったようです。
計算書類は会社計算規則59条により、当該事業年度に係る会計帳簿に基づき作成されることとなっているため、作成の際に参照されるのは1期分の決算のみです。
財務諸表等規則は金商法の委任によるものであり、金融庁が所管となっています。一方、会社計算規則は会社法の委任によるものであり、法務省が所管となっています。金融庁と法務省は両書類の文言の共通化に着手しているようですが、この問題はそれほど大きなテーマとして扱われていないようです。今回のように、2つの開示書類について監査意見が異なると、書類を参考にして次の手立てを考える投資家に不信感をを与えることとなります。投資家達からの信用度が下がれば株も売れなくなり、企業の資金調達も難しくなるため、この問題の解決は先延ばしにすべきではないでしょう。
4 今後の実務に向けて
投資家にとっては企業の情報が必要ですが、有報と計算書類に情報が分散していることによるメリットはありません。現状は情報が分散しており、根拠法令の違いによって片方にのみ限定付き適正が出るという事態も発生するようになっています。限定付き適正が出ること自体が異常事態であり、そのような事態にならないよう、普段から透明性を確保した会計を心掛けることはもちろんですが、万が一そうなってしまった際、投資家たちにどのように説明するかを考えておくことは必要です。投資家たちに限定付き適正となってしまった理由を説明するとともに、片方だけが限定付き適正となってしまった法的理由も合わせて説明できれば、少しでも企業のイメージダウンを抑えることができると思われます。
【参考サイト】
東洋経済ONLINEー東芝、限定付き適正意見は「ありえないこと」
【企業法務ナビ内関連記事】
法務ニュースー東芝決算発表「監査意見なし」へ、会計監査意見とは
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