本当に効果あり!?ダイエット食品の表示上の注意点
2017/10/16   広告法務, 景品表示法

はじめに

 ダイエット食品は、痩身効果を広告で謳うことが多いものです。しかし、その広告の内容があまりに現実とかけ離れたものになってしまうと景品表示法違反になってしまいます。実際に、最近ではティーライフが販売する食品「ダイエットプーアール茶」と称する食品の商品の表示について景品表示法違反を理由として措置命令を受けています。消費者にとっては実際に当該商品の痩身効果の有無が重要な関心事ですが、どこまで表示してよいか企業にとっては非常に悩ましい問題です。そこで、実際の事例をもとに表示の注意点について概観していきます。

最近の事例

【ティーライフの事案 2017年9月】
ティーライフが販売する食品「ダイエットプーアール茶」と称する食品の商品の表示について、景品表示法違反に問われた事案。
「しらないうちにスタイルアップに導くまったく新しいダイエット茶」「苦しむことなくラクラクダイエットサポート!」など、通常の食生活を摂取する飲料を同商品に替えることだけで、痩身効果・促進作用が得られるかのような表示をしていたことが理由。

【メロディアンの事案 2017年3月】
メロディアンが販売する「水素たっぷりのおいしい水」と称する水素水についての表示について景品表示法違反に問われた事案。
水素水が痩身効果があるといって、水素水を飲むことでその効果が得られるかのような表示したことが理由。

【プライム・ワンの事案 2014年7月】
プライム・ワンが販売する食品「トリプルバーナー」の雑誌広告が景品表示法違反に問われた事案。
「飲むだけ簡単!脂肪燃焼専用サプリ」「3大脂肪 中性脂肪 内臓脂肪 皮下脂肪 を3種の脂肪燃焼専用サプリで徹底燃焼」「余分な脂肪は1gだって残さない!」「このサプリで失敗した人は1000人中、たった1人だけ!」などと記載していたことが理由。

各事例の景品表示法違反の根拠

 上記の各事例では、いずれも商品に関する記載が「優良誤認表示」に該当し、景品表示法5条1号に違反すると判断されました。
 「優良誤認表示」とは、商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、(ア)「実際のものよりも著しく優良であると示す」もの、(イ)「事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す」表示をいいます。
 上記3件の事案では、いずれも当該食品についてそのような効果が証明されていないにもかかわらず、そのような効果があると謳っていることが問題視されました。

景品表示法第5条1号に該当における判断のポイント

 では、どうすれば優良誤認表示に該当するかを見ていきましょう。
 まず、表示が「著しく」優良であることとの判断基準は、社会通念上限度を超える誇張を意味します。通常消費者は広告に通常程度の誇張があることは予想しているため、社会通念上限度を超える誇張とは、その広告がなかったら買わなかったであろうということを意味します。そのため、表示が社会通念上限度を超えているかどうかは一般消費者の認識が基準となります(更正会社(株)カンキョー管財人大澤誠による審決取消請求事件判決(抄)(東京高等裁判所平成13年(行ケ)第454号))。商品の性質、知識水準・取引実態・販売地域等の事情を総合的に考慮して判断されるため単純に判断できるものではありません。一般消費者を基準に判断されるため、表示主体である事業者の故意・過失は判断の上で問題となりません((株)ベイクルーズによる審決取消請求事件判決(抄)(東京高等裁判所平成19年(行ケ)第5号))。
 次に、一般消費者の「誤認」とは、実際の表示と消費者の印象に差異があることをいう、現実に誤認が生じたことは必要ではなく表示から誤認が生じるおそれがあれば足りる点に注意が必要です。

優良誤認表示であるとされた場合

 優良誤認表示であると判断された場合には、優良誤認表示を行っていると認められた場合は、消費者庁長官は当該事業者に対し、措置命令を行うことになります(第7条第1項)。措置命令とは、具体的には当該行為を行っている事業者に対し、不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除、再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずるものです。その際に、優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合には、消費者庁長官は期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、事業者が求められた資料を期間内に提出しない場合や、提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合には、当該表示は、措置命令との関係では不当表示とみなされます(第7条第2項)。

 さらに、優良誤認表示であると判断されれば、課徴金納付命令の対象にもなります(第8条)。この場合にも、消費者庁長官は期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、事業者が求められた資料を期間内に提出しない場合や、提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合には、不当表示と推定されます(第8条第3項)。課徴金納付命令は平成28年4月1日の景品表示法改正法によって新設された制度です。優良誤認表示をした事業者に経済的不利益を化すことを目的としており、より優良誤認表示に対する規制が強化されたといえます。

コメント

 ダイエット食品販売に限らず、事業者と消費者の間には商品知識や情報についての格差が存在します。そのため、事業者が誤った表示を提供しないことが、事業者に対する消費者の信頼を高めることにもつながります。その信頼を確保するために景品表示法が定められていることを意識して商品の表示に細心の注意を払っていただけたらと思います。具体的には、社内で決定した表示内容を最終的に社内で法務部門が最終確認をすることで優良誤認表示に該当することを避けることができます。優良誤認表示の判断は多くの事情を総合考慮しなければならないので、微妙な判断を迫られることになりがちです。そこで社内だけで判断するのではなく外部の景品表示法の専門家に意見を求めて検討することも効果的な対策になります。

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