出光が合併に向けて増資発表、募集株式発行について
2017/07/04   商事法務, 会社法

はじめに

昭和シェル石油との合併を計画している出光興産は、合併に反対する創業家に対抗するため第三者割当増資を行う旨発表しました。これにより創業家の持株比率は26%にまで減少する見通しです。今回は募集株式発行の手続と差止請求について見ていきます。

事案の概要

報道等によりますと、出光興産は昭和シェル石油との合併を目指してきましたが、昨年6月29日に大株主である出光興産の創業家が合併に反対する意向を示しました。創業家は出光興産が昭和シェル石油の筆頭株主である英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルからの株式の買取を阻止するために市場から40万株の買い増しを行うなどの対抗策を講じてきました。これに対して出光経営側は創業家の持株比率を低下させるために第三者割当増資を行うことを発表しました。創業家の現在の持株比率は33.92%でそれ以外の株主はほぼ全てが昭和シェルとの合併に賛成の意向を示しているとのことです。創業家側は3日、これに対抗するために募集株式発行差止の仮処分申立を行う旨発表しました。

募集株式発行の手続き

募集株式を発行するには、まず募集事項の決定を行います(会社法199条2項、201条)。決定機関は公開会社か非公開会社で異なります。公開会社の場合は有利発行となる場合を除いて取締役会が、非公開会社では株主総会(特別決議)が決定することになります。非公開会社でも株主割当の場合は定款で定めることにより取締役、取締役会を決定機関とすることができます(202条3項)。公開会社は決定後、払込期日の2週間前までに株主への通知・公告が必要となります(201条3項、4項)。これは差止の機会を与えるためです。有価証券報告書を提出している会社は不要です。その後引受申し込みを行おうとする者への募集事項等の通知、申込みを経て割当を行います。どの申込者に何株割り当てるかは会社側の自由となります。割当がなされた申し込み者は会社が決定した払込期間または期日に出資の履行を行います(208条1項)。期間を定めた時は出資時に、期日を定めた時はその期日に株主となります。

支配株主の異動を伴う場合

平成26年改正で一定の場合には公開会社でも株主総会決議を要することになりました(206条の2)。簡単に説明しますと、募集株式の発行によって総株主の議決権の過半数を有する株主が生じる場合には取締役会決議だけでは足りず、株主にその旨の通知・公告が必要になってきます。そして総株主の議決権の10%以上の反対があった場合には株主総会決議を要することになります。

発行差止請求

会社法210条では株主は一定の場合に募集株式発行の差止を請求することができます。具体的には①株式の発行が法令・定款に違反する場合です。手続に法令違反があったり、定款で定めた発行可能株式総数を超える場合などです。そして②株式発行が著しく不公正である場合です。どのような場合に著しく不公正に当たるかについて裁判例は「特定の株主の持株比率を低下させ現経営陣の支配権を維持することを主要な目的としてされた」場合には該当するとしています(主要目的ルール、東京地判平成元年7月25日)。仮に主要な目的でないとしても、特定の株主の持株比率が低下することを認識しつつなされる場合は、それ相応の合理的な理由が必要となります。

コメント

本件で出光興産の現経営陣は昭和シェル石油との合併を達成させることを目的として第三者割当増資を行います。合併を行うには株主総会における特別決議による承認決議を必要とします。特別決議は出席株主の議決権の3分の2の賛成を必要とします。現在創業家は33.92%と3分の1を超える株式を保有していることから、その持株比率を低下させない限り特別決議による可決を得ることはできません。今回の募集株式発行の目的は会社支配権維持ではないにしても、特定の株主の持株比率の低下が目的であることは明らかなため、相当の合理的理由がない限り「著しく不公正」であると認定される可能性があります。出光興産の収益を回復させるために合併が必要不可欠であることをどの程度説得的に立証できるかが焦点となるのではないでしょうか。募集株式の発行は公開・非公開、株主・第三者割当など、その区分に応じて手続が異なり、また差止や発行無効訴訟なども規定されております。必要な要件・手続を正確に把握して履践することが重要と言えるでしょう。

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